8種のツールを小型本サイズに収めたLiquid Instrumentsの「Moku:Go」はエンジニアや学生の必需品になる

エンジニアになるためには、電圧計やスペクトラムアナライザーなどのツールを理解することが大切だ。しかし、1つで十分なのに2つ、いや8つも使う必要はない。Moku:Goは、一般的に使用される複数のツールを1つのコンパクトなパッケージにまとめ、作業台や教室のスペースを節約すると同時に、ソフトウェアで設定可能な最新のインターフェイスを提供してくれる。米国時間5月19日、その開発元であるLiquid Instrumentsは、このガジェットを世界中の学生やエンジニアたちに広めるために1370万ドル(約15億円)を調達した。

画像クレジット:Liquid Instruments

Moku:Goのコンセプトは、同社の前製品であるMoku:Labとほぼ同じだ。標準的な入力ポートを使用するこのFPGA製のツールセットは、さらに大型の計器やアナログデバイスと同じように、電気信号の分類や分析を行う。しかしデジタルであるため、これまでのアナログ製品のように大きなではない。

Moku:GoはLabよりもさらに小型で、同じ仕事を半分の重さでできるだけでなく、教育用や、技術者の狭い作業スペースで使うことを考慮した新機能も搭載されている。作業台がデスクだったり、ファイルキャビネットだったりするスペースでは、1台に8つのツールが収まっていると、とても便利だ。

8つのツールは以下のとおりとなる。

  • 波形ジェネレーター
  • 任意波形ジェネレーター
  • 周波数応答アナライザ-
  • ロジックアナライザー / パターンジェネレーター
  • オシロスコープ / 電圧計
  • PID制御器
  • スペクトラムアナライザー
  • データロガー

これらを8つと数えるか、もっと多くあるいは少なく数えるか、そのあたりは難しいが、ハードカバーの書籍1冊の大きさに収める量としては間違いなく多いだ。

これらのアクセスと構成は、大量のノブやダイヤルではなく、ソフトウェアとそのインターフェイスを用いる。どちらの方式にも良し悪しはあるが、デジタルの時代に生まれた若者に教えるのであれば、マウスでポイント&クリックするクリーンなインタフェイスがきっとベターだ。しかもUIはなかなか魅力的で、このページにあるツールをクリックすればそのサンプルを見ることができる。例えば、以下は波形ジェネレーターのサンプルとなる。

画像クレジット:Liquid Instruments

このパステル画のような淡いカラーがいい感じだ。

Moku:Goは現在、MacとWindowsで使えるが、モバイルアプリはまだない。PythonとMATLABとLabVIEWを統合している。データはWi-Fiで送信される。

Moku:Labと比べるとやや違いがある。USBはminiではなくUSB-Cのポートだ。磁石式の電源ポート、16チャネルのデジタルI/O、最大4チャネルまでのオプション電源、そしてもちろん、サイズと重量は半分だ。一方、犠牲にしたのはSDカードスロットと出力の帯域となる。また、もっと大きな測定範囲や高い精度をお望みなら、他にもいろいろなものが必要だ。

画像クレジット:Liquid Instruments

でも大型の本格的な多目的計器装置なら3500ドル(約38万2000円)はするところを、こちらは教科書並の500ドル(約5万5000円)だから、大きな節約になる。もちろん、個別に計器を買った場合よりもずっと安い。

Liquid Instrumentsのマーケティング担当副社長であるDoug Phillips(ダグ・フィリップス)氏は、次のように語っている。「Moku:Goはあくまでも大学での教育が対象です。教授は教室や個人を相手にこのデバイスを利用できます。学生や電気工作のホビイストたちは、自分の時間にこれで実験できます。発表が3月だったため、購入者で最も多かったのは、大学の指示で買う学生たちでした」。

秋の授業からこのデバイスを使うと予約している先生たちが約100名おり、同社は他にも世界中の大学と提携している。「4年間のすべてのカリキュラムに対応しているポータブルで柔軟性に富んだシステムには、相当な需要があって当然です」とフィリップス氏はいう。

生産は6月に始まるが、テスター向けの見本機はある。性能と価格が今回の投資家を惹きつけたのだろう。その1370万ドルは既存の投資家であるAnzu PartnersとANU Connect Ventures、そして新たな投資家のF1 Solutionsと、Moelis AustraliaのGrowth Capital Fundからのものだ。投資は転換社債で、フィリップス氏によると、2022年にはシリーズBの正規の投資になる予定だ。それは同社が最初に意図した額よりも大きく、社債という形も普通ではないが、でもハードウェア企業は2020年一貫して苦しかったから、変則的な部分があっても当然かもしれない。

間違いなくシリーズBの成否はMoku:Goの成功にかかっている。しかし、この将来性を感じさせるプロダクトは、これから2年後には、何千もの教室で当たり前の存在になってしまうかもしれない。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:Liquid Instrumentsエンジニア資金調達

画像クレジット:Liquid Instruments

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hiroshi Iwatani)