医療情報サイト「メディカルノート」を運営するメディカルノートは7月20日、ジャフコを引受先とした2億5000万円の第三者割当増資を実施した。今後は人材を強化し、サービス開発およびコンテンツ制作大成を強化していく。
メディカルノートは病気の症状やその対策、治療法をはじめとした医療情報を掲載するサイト。記事は医師による寄稿のほか、医学生やライターによる取材記事が中心。それぞれの記事に対して、その分野に明るい医師がチェックを行うことで、信頼性の高い情報を提供するのが特徴だという。
サイトで公開されている記事数は現在約400件。寄稿や取材に協力する医師は100人以上だという。月間120件ほどの記事を掲載しているが、直近にも月間200件以上を公開できる体制を整えるとしている。
メディカルノートの設立は2014年10月。代表取締役の井上祥氏は横浜市立大学医学部を卒業し、同大学の大学院で医学教育学や消化器内科学を学んだ。そして在学中から医療書籍の編集・執筆に携わっていたが、オンラインで正しい医療情報を発信するべくメディカルノートを立ち上げた。井上氏は2015年春に大学院を卒業。そこからサービスを本格稼働させている。
「外来診療をやっているとカルテが文字通り山のように積み上がる。そうなると患者に対して1人1分の説明も難しくなることがあり、注意点を説明しても漏れてしまうということがある。またそもそも患者が知りたい情報があっても、(事前の)情報レベルが高くないと適切に質問できないということもある。そういう状況を変えたい」——井上氏は起業の経緯についてこう語る。
情報のスピードより品質を重視
先日資金調達を発表したメドレーのMEDLEYのほか、ディー・エヌ・エーのMedエッジ、サイバーバズのDoctors Me、Good Medicine JapanのcoFFee doctorsなど医療情報を提供する競合サービスは多い。これらに対してメディカルノートの強みは何なのか、井上氏は「記事と医師が結びついていること」だと説明する。
医療に関わる情報は、内容の誤りが文字通り命に関わる可能性だってあるため、正確さを求めるのは重要だ。メディカルノートでは、記事掲載のスピードを落としてでも医師によるチェックを徹底している。
ここまでなら競合サービスでも聞いた話なのだが(これすらできていない競合もあるようだが)、メディカルノートではチェックを行った医師の実名も記事に結び付けて掲載することで、記事の品質を高めようとしているという。現在は大学や病院のキーマンとなっている医師に協力を仰ぎ、より多様なコンテンツを発信できる体制作りを進めているという。
現状はマネタイズよりも「コンテンツ制作や協力者のネットワーク作りを優先する」(井上氏)という。具体的な話は聞けなかったが、井上氏は将来的な話として「今はどこにどんな症状の人がいるかも整理されておらず、患者も(症状を学ぶような)場所に困っている。患者に適切なソリューションをどう提供していくかは考えて行きたい」と語った。また資金調達を行う以上イグジット戦略も持っているが、「IPOは結局のところ手段でしかない。この事業を広げて社会に価値を出すことが重要」(井上氏)だという。
メディカルノートでは、今秋をめどに症状や地域に応じて医療機関を検索できる機能を提供する予定。「病気について検索してやってきた人が、最適な病院に行きつけるようなサービスにしたい」(井上氏)