人材不足が加速するとともに働き方に対する価値観も多様化しつつある昨今、企業が自社に合った人材を採用するためには枠が発生してから候補者を募る「短期的なアプローチ」だけではなく、潜在的な転職者も含めてじっくりと関係性を構築していく「中長期的なアプローチ」が重要度を増してきている。
その流れを反映するように、国内でもタレントプールやタレントCRM(採用CRM)のようなコンセプトのプロダクト・取り組みの話をよく耳にするようになった。
TechCrunch Japanでも過去に「LAPRAS SCOUT」や「Refcome Teams」といった関連するプロダクトを紹介してきたけれど、本日11月6日に公開された「Meety」もまさに企業が候補者と中長期的に関係性を築く際に役立つものだ。
Meetyは大きく2つのサービスから構成される採用マーケティングSaaSだ。1つが少人数に特化したミートアップ(イベント)の企画・管理を簡単にするプラットフォーム。もう1つがミートアップで接点を持った候補者や社員から紹介された人材などとの繋がりを可視化するCRMサービス。これらによって候補者とのカジュアルな接点作りから、採用に至るまでの工程を管理できる仕組みを提供する。
まずは本日より先行してミートアッププラットフォームが公開されていて、2020年にはそこにCRMも追加される予定だ。
Meetyにおけるミートアップ機能は、わかりやすく言えば「Wantedly」のイベント版に近い(ちなみに同サービスにもミートアップを掲載する機能がある)。1対1で会話ができる「トーク」と参加者10人以下の座談会「グループトーク」という2つのフォーマットが用意されているほか、集客や当日の運営を効率化するツール・マニュアルが整備されているので、企業はそれに沿ってミートアップを企画し、Meety上に掲載する。
ゆくゆくはCRMもセットで月額定額制モデルで提供する計画だが、当面は無料の予定。完全なCGM形式ではなく審査制にして、厳選されたイベントのみを扱っていくという。
Meety代表取締役の中村拓哉氏はITベンチャーのSpeeeでマーケティングや人事を担当していた人物。自身でもエンジニア採用のためにミートアップを企画した経験があり、そこで感じた苦労などがこの領域で事業を立ち上げることにも繋がった。
「ミートアップは資料やケータリングの準備などが大変。またイベントを企画・管理できるサービスはすでにあるが採用用途に最適化されているわけではないので、アンケートはGoogleフォームなどで別途管理したり、情報をATSに手入力したりなどの負担もある。(CRMやMAツールを始め)マーケティング領域ではこういった業務を楽にするツールがあるのに、なぜ人事にはないのか。両方の現場の経験を掛け合わせたプロダクトがあればニーズがあるのではと考えた」(中村氏)
中村氏によると2019年5月の創業後は数社のミートアップをサポートしてきたそう。その中で少人数限定のミートアップであれば、ピッチ用の資料やケータリングなどの準備が不要で負担が少ないことに加え、数十人規模のイベントに比べて密にコミュニケーションを取れるので双方にとって効果的であることが結果にも表れてきた。
「近年は求職者の方がパワーバランスが上だということもあってか、“本当の意味でカジュアルすぎる1on1面談”に疲労している人事担当者が多いと感じる。(大人数向けのイベントに比べて)小規模のミートアップはいい意味でハードルも上がりものすごくゆるい感じで参加する人が少なく、参加者側にも満足してもらう設計がしやすい。最初の接点作りだけでなく、社内の雰囲気を深く知ってもらうために面接と面接の間に実施するような企業もある」(中村氏)
それらの結果も踏まえて、Meetyでは10人以下でのミートアップに特化。通常のイベントプラットフォームのようにエントリーしたメンバーが誰でも参加できるわけではなく、企業側が会いたいと思った人にだけ連絡する仕様にした。
またフォーマットやツールだけでなく、企業向けの勉強会なども含めて効果的なミートアップの開催を支援。ユーザー視点ではMeetyは様々な企業のミートアップ情報を集めたメディアとしての性質も持つので、特集ページなどを通じて集客にも繋げていきたいという。
MeetyにはすでにDMM.comやマネーフォワード、ユーザベース、エウレカなどIT系のベンチャー企業やスタートアップ31社がローンチパートナーとして参画していて、まずはミートアップ文化のあるネット業界を中心に顧客を広げる計画だ。
なお同社では本日サービスのローンチと合わせてXTech Venturesを引受先とした数千万円規模の資金調達を実施したことも発表した。今回調達した資金を活用しながら組織基盤を強化し、採用マーケティングSaaS化の実現を目指す。