スタンフォード大学エンジニアがミシュランシェフが作ったロボットレストラン、グレインボウルなどを提供

スタンフォード大学でエンジニアリングを専攻していたAlex Kolchinski(アレックス・コルチンスキー)氏、Alex Gruebele(アレックス・グルーベレ)氏、Max Perham(マックス・パーハム)氏の3人は、キャンパス内の食事の選択肢の少なさと高コストに対する不満で意見が一致した。

コルチンスキー氏はTechCrunchの取材に対し「補助金付きの食事プランでも、昼食は10ドル(約1140円)、夕食はそれ以上かかりました」と語った。「私は、昼食を2回食べるために、食堂で座って仕事をしていました。アレックス(グルーベレ)はChipotleに行って、そこで奨学金を使っていました」。

美味しい食事をより安い価格で提供するにはどうしたらいいかを考えているうちに、ロボット工学の博士号を取得していたコルチンスキー氏とグルーベレ氏は、食事の準備などの作業をロボットが手助けできるのではないかと考えるようになった。

コルチンスキー氏は「10ドルのブリトーボウルにかかる食費は3ドル(約340円)で、残りは人件費、諸経費、不動産などに使われていることがわかりました。もし私たちが自己完結型のレストランを作れば、本当においしい食べ物の価格を下げることができ、しかもそれが近くにあるのです」。

Mezliのボウルができ上がる過程のアニメーション(画像クレジット:Mezli)

3人は、ミシュランの星を獲得しているシェフ、Eric Minnich(エリック・ミニッヒ)氏の協力を仰ぎ、完全自律型のモジュール式レストランを建設する会社Mezli(メズリ)を立ち上げた。ミニッヒ氏はサンフランシスコのスペイン料理レストラン「The Commissary」の創業時の料理チームの一員で、エグゼクティブシェフでもある。会社設立の計画の大部分は2020年練られ、2021年1月にY Combinatorでスタートした。

Mezliが開発したロボットレストランのプロトタイプは、現在、サンマテオにある同社のKitchenTown店舗で稼働しており、顧客にサービスを提供している。マシーンは、10×20フィート(3×6メートル)のスペースを取り、自立型だ。手始めに、地中海スタイルのグレインボウル(穀物や豆、野菜などを使ったサラダ)、副菜、飲み物を提供している。

ボウルの価格は4.99ドル(約570円)からだ。客はレストランで直接注文することも、オンラインで注文してスマートロッカーで受け取ることもでき、あるいは配達してもらうこともできる。テスト店舗ではすでに有望な成果があがっており、ロボットレストランの料理を食べた客の44%がリピーターになっている、とコルチンスキー氏は話す。

同社は現在、2022年の一般提供に向けて、試作品の第3バージョンの開発を進めている。この勢いは、Metaplanet、ロボット工学者のPieter Abbeel(ピーター・アビール)氏、レストラン経営者のZaid Ayoub(ザイド・アユーブ)氏、Y Combinatorなどの投資家からの300万ドル(約3億4000万円)のシードラウンド資金によって支えられている。この新たな資金調達でMezliは人材、部品、食料、運営費をまかなうことができる。

会社の規模が大きくなれば、Mezliは何千ものモジュール式レストランを3Dプリントでき、従来のレストランが営業開始するまでにかかる時間と費用の何分の1かで展開できるようになる、とコルチンスキーは付け加えた。

また「私たちは、店舗を数カ所に増やした後、大量生産する予定です。大量生産により、他のレストランよりも早く1000店舗に到達すると見込んでいます」とも同氏は話した。

Mezliの出資者の1人であるピーター・アビール氏は、カリフォルニア大学バークレー校の教授であり、GradescopeとCovariantの創業チームに参加している起業家でもある。同氏は、創業チームのクラスメートからMezliのことを聞き、ぜひ関わりたいと考えた。

同氏は、健康的な食品をより手頃な価格で提供するという会社のビジョンにひかれた。また、自身、科学者として、ビジネスとエンジニアリングを駆使して、食べ物が人々の手に渡るまでや、食べ物の提供方法でのボトルネックを減らすという「第一原理」のアプローチにも好感を持った。

「これは、私の心に響くものでした。物理的なことは何でも思った以上に難しいものです。なので、第一原理で解決する方法を思いつかなければ、難しいのです。加えて、初日から料理が提供されたのは説得力があります」と同氏は述べた。

画像クレジット:Mezli

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi