マイクロソフトがOKRソフトウェア企業のAllyを買収

Microsoft(マイクロソフト)は米国時間10月7日、OKR(objectives and key results「目標と主要な成果」の頭文字を取ったもので、経営者が個人や会社の進捗状況を測定する一般的な方法)ソフトウェアサービス企業のAlly.io(アライ・アイオー)を買収したことを発表した。両社は買収額を明らかにしていない。

マイクロソフトはAllyを、従業員エクスペリエンス・プラットフォームの「Microsoft Viva(マイクロソフト・ビバ)」ファミリーに組み込むことを計画している。同社によれば、VivaとAlly買収の背景には、会社の目標や目的を従業員に伝えるためのより透明性の高い方法を提供するという考えがあるという。

「従業員の仕事を会社の戦略的ミッションやコア・プライオリティと一致させることは、すべての組織にとって最重要課題です。そのためには、リーダーは企業の大きな選択に関する透明性を伝達するツールに投資し、組織のあるゆるレベルで意欲的な目標を達成して結果を報告するための方法を構築する必要があります」と、マイクロソフトのエクスペリエンス&デバイス担当チーフ・オペレーティング・オフィサー兼コーポレート・バイス・プレジデントであるKirk Koenigsbauer(カーク・ケーニグスバウアー)氏は、今回の買収を発表したブログ記事の中で書いている。

一方、Allyの方では、CEOで創業者のVetri Vellore(ヴェトリ・ヴェールール)氏は、これによって自社が単独で行うよりも、マイクロソフトの一員として製品をより早く成長させることができると語っている。

「Ally.ioは、Microsoft Vivaの一部として、リーダー、チーム、個人に、日々の仕事を会社の最も重要な目標に合わせて集中させる能力を、引き続き提供していきます。私たちは、Teams(チームズ)、Outlook(アウトルック)、Slack(スラック)、そしてあなたが毎日使っているそれ以外のシステムも含めて、チームが仕事をしているどんな環境にも、目標と目的をもたらすお手伝いをします」と、ヴェールール氏はAllyのウェブサイトに掲載されたブログ記事に書いている。

自分の仕事の目的を理解して、それが会社のより広範囲な目標とどのように合致するのかを理解することは、多くの人が自宅で仕事をするようになり、経営陣と直接対面する会議の機会がなくなった時代において、ますます重要になっている。これらの目標や可能性を明確にし、リモートで仕事をする社員が使うツールに組み込むことで、全員が同じ方向を向いて仕事を順調に進めていけるようになる。

マイクロソフトは今回の買収額を公表していないが、PitchBook(ピッチブック)のデータによると、Allyが最後に資金調達した時のポストマネー評価額は3億4500万ドル(約386億円)だった。この金額は、同社が2021年2月に調達した5000万ドル(約56億円)を含め、合計7600万ドル(約85億円)を調達した際に算出されたものだ。

Allyがマイクロソフトに売却されたことによって、OKRに特化したソフトウェア市場の統合が始まる可能性がある。この市場では、WorkBoard(ワークボード)、Koan(コーン)、Gtmhub(Gtmハブ)、Perdoo(パードゥー)、WeekDone(ウィークダン)など、多くの企業が首位を競っている。

これらのスタートアップ企業群は、ベンチャーキャピタルを惹き付けて、初期段階の収益を伸ばすという点において、驚異的な成果を上げてきた。そして今、Allyがエグジットを成し遂げたことで、これらの企業は、ベンチャー資金による成長アプローチをそのまま維持するか、それともメガテック企業へのエグジットの可能性をともなうデュアルトラックのプライベートラウンドにシフトするかを、選択しなければならなくなるだろう。

マイクロソフトが同じワシントン州に本社を置くAllyを買収したことを切っ掛けに、他の大手プラットフォーム企業が同じようなツールを買収して提供するようになるかもしれない。Salesforce(セールスフォース)、ServiceNow(サービスナウ)、SAPなど、買収に積極的な他の企業が同様の動きを検討し、これらの資産を市場から引き抜こうとするのではないかと想像することは難しくない。

しかし今のところ、市場を外れたのはAllyだけであり、この動きの結果から、市場の他の企業がどのように発展していくか、見守る必要がありそうだ。

画像クレジット:Chen Yuyu/VCG / Getty Images

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(文:Alex Wilhelm, Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Microsoftがリモートワークが当然になった時代の新しい社内イントラネット「Viva」を発表

米国時間2月4日、Microsoft(マイクロソフト)は新しい「従業員エクスペリエンスプラットフォーム」、マーケティング用語を使わずにいうなら多くの大企業が従業員に提供しているイントラネットサイトの後継となるVivaを発表した。VivaはSharePointやYammerといったMicrosoftのツールの統合をベースに設計され、社内コミュニケーションへのアクセスなど標準的な機能を備えている。Vivaでチームの分析をしたり、LinkedInラーニングなどのトレーニングコンテンツプロバイダ(SAP SuccessFactorsのようなもの)と統合することもできる。MicrosoftがViva Topicsと名づけた、社内でナレッジを共有する機能もある。

企業が社内コミュニケーションやそのためのイントラネットの提供に多額の費用をかけていることをご存じだろう。そして従業員は実務をこなすためにそれをすぐに無視してしまう。しかしMicrosoftは時代が変わりつつあると主張する。多くの企業でリモートワークが継続され、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大が終息しても(そう願いたい)それは続くからだ。一部の従業員だけがリモートワークを続けたり出社とリモートのハイブリッドを選んだりするとしても、このような従業員が適切なツールにアクセスでき、自分が会社の一員であると感じられるようにする必要はある。

画像クレジット:Microsoft

MicrosoftのCEOであるSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏は事前に収録されたビデオの中で「我々は世界がこれまで見てきた中で最大規模のリモートワークの実験に参加し、従業員のエクスペリエンスに劇的な影響がありました。世界が元に戻っても、後戻りすることはありません。働く時間、場所、方法が柔軟であることが重要です」と語った。

ナデラ氏は、どんな組織にも社内のオンボーディングのプロセスから同僚との共同作業、教育の継続を通じて従業員をサポートする、統一された従業員エクスペリエンスプラットフォームが必要になると説明する。従業員がリモートで仕事をしているため、企業は社内文化を維持し従業員間のコミュニティを育むのに苦戦している。Vivaはこうした状況を改善することを目指している。

当然のことながら、VivaはMicrosoft 365やそれに付随するツールと連携し、主力コラボレーションサービスのMicrosoft Teamsや、2012年に買収しサポートが継続されている従業員コミュニケーションツールのYammerとも統合されている。

Vivaは複数のサービスから構成されている。Viva Connectionsは社内のお知らせやポリシー、福利厚生、社内コミュニティにアクセスするためのサービスで、Yammerを利用する。Viva Learningはその名のとおり学習リソースを利用するためのサービス、Viva Topicsは社内全体でナレッジを共有するサービスだ。いずれもモダンなイントラネットであれば、スタートアップが提供するものであってもJiveのような定評のある企業が提供するものであっても、標準で備えているサービスだ。

Viva Insightsは異質なもののように感じられる。少し前にMicrosoft Productivity Scoreが議論になったことを考えればなおさらだ。Viva Insightsはたとえば管理職が、チームが(個々のチームメンバーではなく)燃え尽き症候群の危機に瀕していないかといったことに関する洞察を得て、通知をオフにしたり日々の優先順位を設定したりするように促そうとするものだ(良いマネージャーなら分析がなくてもそのようにしてほしいが、2021年はこれが必要だ)。Viva Insightsは企業のリーダーが「組織の仕事のパターンと傾向に目を向けて、複雑な課題を解決し変化に対応する」のにも役立つように作られている。なるほど。

2021年のMicrosoftだけあって、今回の発表には従業員の健康に関する話も多い。大半の従業員にとって健康とは、会議が少なく、集中する時間が長く、仕事が終わったら通知をオフにすることだ。こうしたことを支援するテクニカルなツールはもちろんあり、これはまさに企業文化とマネジメントの問題だ。そのためにLinkedInのソリューションであるGlintと統合して分析する必要があるのかどうか筆者にはわからないが、こうしたこともできるようになった。

Microsoft 365のコーポレートバイスプレジデントであるJared Spataro(ジャレッド・スパタロウ)氏は次のように語った。「仕事を取り巻く世界が変化する中で、創造性とエンゲージメント、健康を重視することでイノベーションの次の展望が得られます。その結果、組織はレジリエンスと創意工夫の文化を築くことができます。我々のビジョンは、組織が積極的な従業員と成長を促すリーダーの協力で繁栄する文化を創造できるよう支援するための従業員エクスペリエンスプラットフォームを提供することです」。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:MicrosoftMicrosoft VIvaリモートワーク

画像クレジット:Microsoft

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Kaori Koyama)