Mirantis、Docker Enterpriseの資産買収から2年間でランレート約115.6億円超えの大成功

2019年、DockerDocker Enterpriseを売却すると発表したときは誰もが驚いた。もっと大きな驚きは、買い手がMirantisだったことだろう。同社はそれまで、OpenStackプロジェクトの商用化で知られていた。

売却後のDockerは開発者を主対象とする企業へと方向性を変え、先週、5000万ドル(約57億8000万円)の年間経常収益を報告した。今週、MirantisのCEOであるAdrian Ionel(アドリアン・イオネル)氏がTechCrunchに、同社が前四半期に2800万ドル(約32億4000万円)の経常収益を得て、ランレートは1億ドル(約115億6000万円)をゆうに超えるだろうと語った。

イオネル氏によると、その売上はおよそ半分がDockerから得た資産、具体的にはDocker Enterprise Engine、Docker Trusted Registry、Docker Unified Control PlaneそしてDocker CLIなどとなる。そして残り半分が同社の買収前の本業だったKuberentes上のクラウドプラットフォームツールだ。なお、同社は2020年にKubernetes用のIDEであるLens買収しており、これも売上に貢献している。

しかし基本的にはDockerとMirantisはともに、買収の効果として年間経常収益5000万ドルのラインに達しており、Dockerの方はエンタープライズプロダクトを売却した後の経営努力として、そしてMirantisはDockerのエンタープライズアセットから、どちらも大きな売上を得ている。両者とも、買収から2年後にほぼ同額の取引効果を得ていることは極めて稀だが、しかしイオネル氏によると、当時はそれを知るすべもなかったという。

「信じられないほどすばらしい旅路でした。そのスタートは、2019年11月に契約に署名したことです。当時は、それが今後どうなるかを誰も知りませんでした」とイオネル氏はいう。何よりもまず、最初に作り出されたのは、この買収が同社の未来にとって何を意味するのかに関する顧客たちの混乱だ。しかしイオネル氏によると、同社のビジョンが複数のプロダクトの組み合わせとそれがもたらす効果にあることを、顧客はすぐに理解した。

「多くの人が、プロダクトのビジョンをとても早く、理解し共有してくれました。私たちがこれから新しい企業を作ろうとしていること、それが私の考える中心的なテーマであることをみんな理解しました。それは単に、MirantisがDocker Enterpriseを買収したという話ではありません。むしろ、両社のアセットを有効利用して新しい企業を作り、フレッシュでより強力な企業として立ち上がることでした」。

これらのアセットを買うメリットについては、取締役会も議論した。「買収前には取締役会で激しい議論がありました。ご想像どおり、うまくいかない買収の方が多いためです。しかしこれは、大成功でした。株主たちが持つ価値がものすごく増えました。私たちにとってはKubernetesとの旅路が加速され、未来につながったという意味で、すばらしい賭けでした」とイオネル氏はいう。

関連記事:Kubernetesの統合開発環境のLensをMirantisが買収

しかし買収が完了した後の航行は、楽なものではなかった。まず買収した企業の40%をレイオフしなければならなかった。イオネル氏は、当初は辛かったと認める。しかしエンジニアリングとビジネスファンクションを1つの傘の下にまとめることによって費用を節約し、その後の成功に導くことができた。

イオネル氏によると、Mirantisは過去2年間キャッシュフローがプラスで、その間に1900万ドル(約22億円)以上の現金を生み出しているという。Apple、Visa、Booking.comなど、合併時点で300の顧客との関係を拡大し、その過程で100の新規顧客を追加した。

イオネル氏自身も、Docker Enterpriseの買収がこれほどうまくいくとは考えなかった。「すばらしい旅路だったが、ときには難題もあった。それは主に、Docker Enterpriseの事業を再構築する過程だったが、決断力を重視して迅速にそれを行った。現状の好結果を見れば、成功だったといえるでしょう」。

画像クレジット:Suriyapong Thongsawang/Getty Images

原文へ

(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Mirantisがクラウドネイティブなデータセンター・アズ・ア・サービス・ソフトウェアを発表

Mirantis(ミランティス)はOpenStackのスタートアップとして始まったクラウドコンピューティングの古参だが、数年前にはコンテナやマイクロサービスやKubernetesといったクラウドネイティブの開発技術への方向転換を開始した。米国時間9月16日、同社が発表したMirantis Flowは、完全な管理をともなうオープンソースのサービス集合で、企業のクラウドネイティブなデータセンター環境の管理を助ける。そのインフラストラクチャはオンプレミスでも、あるいはパブリッククラウドでも、どちらでもよい。

MirantisのCEOで共同創業者のAdrian Ionel(アドリアン・イオネル)氏は「私たちの仕事は顧客に、データセンターやエッジにおけるパブリッククラウドとの相互運用性のある、クラウドツークラウドのエクスペリエンスをお届けすることです」という。

彼の指摘によると、FacebookやNetflix、Appleといった超大手は、ハイブリッドなクラウドネイティブ環境の管理のノウハウを自力で見つけているが、多くの企業はそんな大企業のリソースを欠いている。そこでMirantis Flowは、そういう超大手が持っているものと同じタイプの能力をほどほどの規模の企業に導入することを狙っている。

AmazonやMicrosoft、Googleなど、大きなインフラクラウドのベンダーたちも、まさに同じ問題の解決を目指しているが、しかしイオネル氏によると、それらはあまりオープンでなく、むしろプロプライエタリだ。したがってロックインが生じ、それを今日の大企業は懸命に避けようとしている。

イオネル氏は次のように主張する。「大手のインフラストラクチャベンダーは、ユーザーを彼らのスタックとAPIにロックインします。彼らのベースはオープンソースのスタンダードや技術ではないので、ユーザーは単一のソースにロックインされるが、一方で今日の大企業の多くがマルチクラウド方式で進もうとしています。つまり彼らが欲しいのは、インフラストラクチャの柔軟性です。そこで私たちのやり方では、完全にオープンで柔軟性に富み、ロックインがゼロのオルタナティブを、彼らと同じクラウド体験および同じイノベーションのペースで提供します」。

そのために同社は、オープンソースソリューションのフルスタックを単一のサービスで提供する。そしてイオネル氏は「同じファブリックの一部としてその上に仮想化の層を置く。また、ソフトウェア定義ネットワーキングとソフトウェア定義ストレージ、さらにその上にサービスとしてのDevOpsをともなうCI/CDの技術がある。これによって企業は、ソフトウェア開発のパイプラインの全体を自動化できる」という。

同社はこのサービスを、今日公開したブログ記事で説明している。その主要なサブシステムはMirantis Container CloudとMirantis OpenStack、およびMirantis Kubernetes Engineであり、元々が従来的な仮想マシンのワークロードであれ、あるいはコンテナ化されたワークロードであれ、それをクラウドネイティブのインフラストラクチャへ移行するためのワークロードを、今やすべて利用できる。

VMWareの仮想マシンからこのソリューションへの移行で悩む企業もあると思われるが、しかしIonel氏によると同社は初期の顧客に対して、そういうVMsからMirantisのソリューションへの移行を実装したことがある。彼によると「VMwareのスタンダードからオープンスタンダードへの仮想マシンの変換はものすごく簡単で、どんなアプリケーションやワークロードでも、このインフラストラクチャの上で動かない理由がない。非常に多くの顧客でそれを何度も繰り返し見てきました。今すぐにでも移行したいという人たちにとって、ボトルネックになるようなものは何もありません」。

なお、このソリューションにはハードウェアが含まれていない。それは、フィジカルでもサービスでも自分のハードウェアでよいし、あるいはEquinix(エクイニクス)のようなMirantisのパートナーを使ってもよい。このサービスは月額1万5000ドル(約165万円)もしくは年額18万ドル(約1979万円)で利用でき、Mirantisのソフトウェアスイートの全製品へのアクセスの1000コア/vCPU分のライセンスと、仮想マシンのマイグレーションまたはアプリケーションのオンボーディング20件、そして無制限の24/7サポートが提供される。コントロールプレーンと管理ソフトウェアのライセンスに関しては課金されない。

画像クレジット:Yuichiro Chino/Getty Images

原文へ

(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

MirantisがKubernetesのIDEであるLensに拡張API導入、新たなKubernetes配布系発表

この夏、Dockerのエンタープライズ事業のオーナーであるMirantisは、Kubernetesのクラスターを管理するためのIDEのようなデスクトップアプリケーションLensを買収した。その際、MirantisのCEOであるAdrian Ionel(アドリアン・イオネル)氏は、モダンなアプリケーションをすばやく作ることができるツールをエンタープライズに提供したい、と語っていた。米国時間11月12日、同社はその方向に新たな一歩を踏み出す、Lensの拡張APIを立ち上げた。これによりLensの能力が最初に比べて格段に向上する。

MirantisはLensのアップデートに加えて、k0sという新しいオープンソースプロジェクトも発表した。同社によると、それは「モダンで100%アップストリームの、特別な機能は何もないシンプルなKubernetesディストリビューションで、妥協のない設計とパッケージングが行われている」という。

k0sは、カーネル以外ではOSへの依存性もない最適化された単一のバイナリだ。アップストリームのKubernetesをベースとするk0sは、IntelとArmのアーキテクチャをサポートし、Linuxホストのすべて、またはWindows Server 2019のワーカーノードで動く。このような要求を元にチームは、k0sはローカルな開発クラスターやプライベートなデータセンター、通信事業者のクラスター、ハイブリッドクラウドのソリューションなど、 事実上どんなユースケースにも使うことができると主張している。

「Kubernetesが使われるさまざまなユースケースのための、モダンで堅牢で多芸なベースレイヤーを作りたかった。何も余計な部分のないアップストリームのKubernetesを利用して、典型的なクラウドベースのデプロイメントから多様なエッジやIoTのケースに至るまで、それらのさまざまなユースケースに十分対応できる多芸なシステムだ。私たちのこれまでの経験から、OSのディストリビューションが違うたびにメンテナンスとセットアップとパッケージングが違うというものにはしたくなかった。そこでパッケージングのモデルは単一のバイナリにして、debやrpmなどパッケージングのフレーバーの違いにわずらわされることなく、コアな問題に集中できるようにした」とMirantisの上級主席技術者でk0sを開発したJussi Nummelin(ユシ・ヌンメリン)氏は述べている。。

もちろんMirantisも、ディストリビューションのゲームにちょっと参戦したことがある。同社初期となる2013年には、初期のメジャーなOpenStackディストリビューションの1つを、結局開発してしまった。

画像クレジット:Mirantis

Lensといえば、その新しいAPIは来週、KubeConにタイミングを合わせたかのようにローンチし、開発者が自分のサービスを拡張して、Kubernetesを統合した他のコンポーネントやサービスをサポートできるようになる。

Lensのオープンソースプログラムを共同で創始し、いまではMirantisの技術長であるMiska Kaipiainen氏(ミスカ・カイピアイネン)は次のように語っている。「拡張APIはテクノロジーのベンダー間のコラボレーションを可能にし、Lensをクラウドネイティブな開発のための機能が完全に揃ったIDEにする。そしてそれをさらに、限りなく拡張強化できる。あなたがベンダーなら、Lensが何万人ものKubernetesデベロッパーに到達できる最良のチャンネルを提供し、製品のこれまで存在し得なかったような流通と配布が可能になる。それと同時にLensのユーザーは、高品質な機能と技術および統合を、前よりずっと容易に享受できる」。

同社はすでにCNCFの人気プロジェクトとクラウドネイティブのエコシステムの中のベンダーたちと協力して、それらとの統合を作っている。それにはKubernetesのセキュリティのベンダーAquaとCarbonetesや、APIのゲートウェイメーカーAmbassador LabsとAIOpsの企業Carbon Relayが含まれる。VenafiやnCipher、Tigera、Kong、そしてStackRoxなども、彼らの機能拡張に取り組んでいる。

「Lensへの拡張APIの導入はKubernetesのオペレーターとデベロッパーにとってゲームチェンジャーだ。なぜならそれは、クラウドネイティブツールのエコシステムを育て、ユーザーは超簡単にそれらを、Kubernetesのコントロールのフルパワーの中で使用できる。今後はKubeLinterをLensと統合して、よりシームレスなユーザー体験を実現したい」とStackRoxのソフトウェアエンジニアでKubeLinterを開発したViswajith Venugopal(ヴィスワジット・ヴェヌゴパール)氏はいう。

関連記事
Kubernetesの統合開発環境のLensをMirantisが買収
Kubernates利用のクラウドサービス、MirantisがDocker Enterpriseを買収

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:MirantisKubernetes

画像クレジット:anucha sirivisansuwan / Getty Images

原文へ

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa