ダンスミュージックオンリーで24/7, (人が選曲する)MOXで世界中がディスコになる

“10年前までは、ロックはダンス音楽だった。それは、親たちへの‘ファックユー!’だった”。

“ソファに背をもたれてインターネットをTV的に体験する。それが、テレビの未来だ”。

MOX.tvは上記の二つの哲学を抱えて今日ステルス(お忍びモード)で立ち上がったWeb TVのチャンネルだ。VJたちが24時間休みなくダンス音楽のビデオやコンサートとニュースを‘放送’する。MOX.tvを開くだけで、ただちにお楽しみが始まる。クリックは不要だ。

マウスを捨てよう

MOXの人気の源泉は、その単純さだ。今のインターネットは疲れる。しょっちゅう、次はどこへ行くかを決めなければならない。そのために、いわゆる“意思決定疲労”が生ずる。いろんなオプションを秤にかけて迷うのはもうたくさん。飽き飽きした。上の二つの哲学を述べたファウンダのCarter Larenは曰く、“必要なものや欲しいものが事前にはっきり分かっていれば今のインターネットは実にグッドだ。でも人間は、何を見たいのか聞きたいのか事前に分かっていないことの方が、多いのだ”。

MOXでは、選曲を人間がやるので、ユーザは完全におまかせでよい。単純に、彼または彼女のDJ、おっとVJを楽しめばよい。Webは、あなたが自主的に閲覧しなければならないが、MOXは完全に受け身の電子ダンス音楽(electronic dance music, EDM)のラジオだ。一つのビデオが終われば、すぐに次が始まる。試してみたい人はMOX.tvへ行くか、または下の短いサンプルを見てみよう:

しかしMOXは、テレビやFM放送にないインターネットの強み、対話性を忘れてはいない。ビデオのチャンネルを下へスクロールすると、今どこかで‘放送’中のアーチストやフェスティバルなどが分かる。放送をカスタマイズしたい人は、左のボタンを使って、VJによるニュースストリーム、Bass(dubstep…ベースとバスドラ強調)、Chill(スローテンポ)、Dance(アップテンポ)などから選ぶ。

要らないものを削り落としてMOXへ

LarenがMOXをやり始めたのは18か月前で、それまではCryptography Research、さらにその前はブルーレイの技術でささやかな出口を達成、またサンフランシスコのダンスクラブMonarchなど数社に投資もした。今はMOXの唯一の投資家だが、来月はシード資金のラウンドがある。またhttp://cull.tvを買収し、そのファウンダが今のMOXのCTOだ。

MOXは、最初の構想ではライブ専門だったが、1年前に音楽ビデオの24時間Webテレビに変わった。主なターゲットである16〜24歳の層でテストしたところ、彼らは24/7(1日24時間週に7日)のビデオストリームは大好きだが、構成オプションが多すぎるのはだめだ。最初は途中をスキップできるためのタイムラインがあったが、それをあえて捨てた。

MOXのダンス音楽への特化も、ガキどもに気に入られた。Vevoの”MTV for the Web”のような単なる音楽ビデオサイトは、つまらないらしい。Vevo.tvへ行くと、Nicki MinajやTaylorのような疲れたポップスが平気で登場するからね。電子ダンス音楽(EDM)専門は、意外と穴場だった。またMOXはビデオ専門で、Turntable.FMの協同ファウンダが作ったDJZみたいに、同じくダンスファンをねらっているけどテキストがやたら多いサイトとは違うので、その点も子どもたちに好まれた。

Larenによれば、MOXはまだまだベータで、9人のチームにはやるべきことがいっぱいある。“今のニュースはひどいね”、と彼は認める。DJのインタビューはいい加減だし、コンサート情報も充実していない。今後は、ユーザ自身がビデオストリームをホストできるためのツールを埋め込むことを、考えている。そして聞きたい曲をプレイするための検索ボックスも。

幸いにも、収益化をあせる必要はない。音楽ビデオは主にマーケティング用のメディアだから、レコード会社はロイヤリティなしで使わせてくれる。PandoraやSpotifyのように巨費を払う必要はない。

広告もすでにやっている。スウェーデンの音楽ビデオHouse Mafiaとの乗り合いでAbsolutのコマーシャルなど。Larenは、広告の内容をもっと凝ったものにしたい、と考えている。「コンテンツこそがマーケティングなり」で行きたい。ただし、ユーザに嫌がられない広告に徹したい。たとえば検索は、ユーザが結果に広告などが出ることを了解している。コンサートの有料ストリーミングも、将来の課題だ。

一つの世代にシンク(sync,同期化)

正直に言うと、ぼく自身がMOXをとても楽しんでいる。パッシブ(受け身)とアクティブ(能動的)のバランスが良く、ぼくのWeb閲覧パターンに合っている。サイトを開いて、少し見て、それから、仕事をしながらBGMとして聞く。ダンス音楽だけだから、ビートが終始安定している。「あれっ?これは誰?」と気になるのがあったら、そのときはMOXのウィンドウを最大化して画面を見る。MOXはラジオとしても、オンデマンドのストリーミングとしても、ブログとしても、Turntable.fm的としても、そしてそのほかのいろんな音楽体験としても楽しめる。

人間が選曲していること(その人間を想像する)、そして今同じものを多くの人が聞いて/見ているという意識、これがかすかにコミュニティの感覚を与える。そもそも、ダンス音楽が鳴る場は人がいっぱいである。たくさんの人たちが、全員、音にシンクしている。人の孤独が氷のように溶けて、より大きなものへの帰属意識が育つ。それが、ディスコという場だ。MOXが、そうやってわれわれをターンオンしてくれるのなら、一日中、部屋のステレオが鳴りっぱなしでもいいよね。

〔余計な訳注: “10年前までは”、ということはないと思う。Grace Potterの昨年夏のコンサート(完全収録)。〕

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))