法人営業を効率化する企業情報DBのBaseconnectが18億円調達、導入企業は3万社を突破

法人営業を支援する企業情報データベース「Musubu」開発元のBaseconnectは2月4日、複数の投資家を引受先とした第三者割当増資と金融機関からの融資により、総額18億円を調達したことを明らかにした。

2018年4月にスタートしたMusubu(旧Baseconnect LIST)は現在までに3万社以上が活用。調達した資金を活用し、データベースの拡充とともに法人営業をワンストップで支援する新機能の開発や、マーケティングへの投資などを行っていく。

なお同社では2018年11月に実施したプレシリーズAラウンド(4.3億円調達)を含め、これまで4回に渡って累計で約6.4億円を調達済み。今回はそれに続くシリーズAラウンドの位置付けで、既存投資家でもあるYJキャピタルをリードインベスターとして複数の投資家から出資を受けている。

  • YJキャピタル(既存投資家)
  • イーストベンチャーズ(既存投資家)
  • みずほキャピタル(既存投資家)
  • ユーザベース(既存投資家)
  • キャナルベンチャーズ(既存投資家)
  • 京銀リース・キャピタル(既存投資家)
  • ジャフコ
  • オリエントコーポレーション
  • 京信イノベーションCファンド
  • 京都銀行・三井住友銀行・日本政策金融公庫 他(融資)

数百〜数千社もの営業リストをオンライン上でサクッと作成

Musubuは2018年4月にBaseconnect LISTとしてリリースされた企業情報データベースだ。

100万社を超えるデータの中から、売上や従業員数、設立年月など25以上の軸で企業を絞り込み、自社の要件に合ったリストを作ることが可能。従来は手作業で膨大な工数をかけて作成していた営業リストを「ぽちぽちクリックしてるだけで、簡単に何百社分も作れる」のが大きな特徴だ。

過去のアプローチ履歴や成約企業のデータなどを取り込んでおけば、成約の可能性が高い見込み顧客を人工知能が提案してくれる仕組みも搭載。2019年11月にはリストアップした企業への営業状況や進捗を管理できる営業管理機能も加わった。

Baseconnect代表取締役の國重侑輝氏の話では、ITや人材、コンサルなどを中心に幅広い業界で使われているそう。多くの企業には法人営業担当者が在籍しているため、彼ら彼女らの営業リスト作成や企業情報収集、市場調査を支援する「法人営業向けのホリゾンタルな検索エンジン」として拡大してきた。

「MAやSFAをゴリゴリ使いこなしている会社やインバウンドマーケティングが中心の会社というよりは、アウトバウンドな営業を軸としていて、そのやり方に課題や危機感を感じている企業に使ってもらっている。膨大な時間をかけて闇雲に営業先を探すのではなく、既存取引先のデータなども踏まえてしっかりとターゲットを定め、もっと効率的にアプローチできる手段へのニーズが高い」(國重氏)

データ拡充で導入企業は3万社超え

冒頭でも触れた通り、2020年1月にMusubuの累計導入企業数は3万社を突破した。2018年11月の取材時は5000社を突破した直後だったので、そこから1年強で2万5000社増えたことになる。

國重氏がその要因にあげるのがデータの拡充だ。前回はまず100万社まで企業データ数を拡大したいという話をしていたけれど、その目標は達成。今は次のステップとして事業所(支社、営業所、工場など)データや人物データの整備にも取り組み始めている。この事業所データが充実してきたことで「支社や営業所、工場などが存在する地方の顧客」にとっても使い勝手が良くなった。

Baseconnectのビジネスは人力とテクノロジーによる自動化を組み合わせて膨大な情報を整備し、それをデータベースという形で顧客に提供するモデル。國重氏は「質の高いデータを作って提供する」という意味で自社を製造業として捉えているそうで、「データマニュファクチュアリングカンパニー」という表現を使っていた。

当然今後のBaseconnectにおいても核となるのはデータの部分。継続的なデータ更新体制の構築やニュース性のあるデータ(社長交代を含む人事異動やオフィス移転、新規の求人、資金調達など)の拡充に力を入れるほか、店舗データや製品データなど構造化されていない情報の整備も進めていく予定だ。

「純粋なSaaSへの進化」へ、データ拡充と機能拡張に投資

Baseconnectのメンバー。ちなみに同社は京都発のスタートアップで現在も京都市内にオフィスを構えている

データ整備以外の領域では案件管理や取引先管理といった新機能をMusubuに搭載していく計画で、そこにも投資をする。

従来のMusubuはあくまでデータベースとしての色が強く、同サービスを使ってダウンロードした企業データを、営業管理ツールやマーケティングツールにインポートして活用していた企業も多かった。要はデータを有効活用するには複数のツールを行き来する必要があり、顧客からすれば面倒だったわけだ。

Musubuではすでにリリースしている営業管理機能に加えて、法人営業の業務プロセスを一貫して支援するために必要となる機能を順次投入することによって「やりたいことが一箇所で実現できるオールインワンサービス」を目指していく。

これはBaseconnectにとって「Musubuを純粋なSaaSへと進化させる挑戦」でもある。Musubuはデータベースという性質上、必ずしも継続的に使われる類のプロダクトではない。「数ヶ月契約して一旦解約し、また必要になったタイミングで再契約する」といった使い方をする企業もいて、お手本となるようなSaaSプロダクトに比べるとチャーン(解約率)も高いという。

結局のところ「現時点ではシンプルな企業情報のデータベースサービスになっている」(國重氏)ことがその理由であり、これを日々の業務で継続的に使ってもらえるSaaSへ変えていくことが今年から来年にかけての大きなテーマだ。

また少し先の話にはなるが、構築してきたデータの新たな活用方法としてパートナーシップ事業も強化する計画。すでに「SPEEDA」や「Sansan」、「 Eight」へのデータ提供を始めていて、今年はプラットフォーマーや大手企業との連携・提携にも力を入れていくという。