デジタルガレージ、カカクコム、ネットプライスが手がけるシードアクセラレータープログラムOpen Network Lab第7期に参加したスタートアップ5社が本日デモデーに登場した。すでにTechCrunch Japanではおなじみかもしれないが、今回もデモデーでプレゼンテーションを行った全5社を紹介しよう。
今期はEdTech、サブスクリプション型EC、SNS、クラウドソーシングといったトレンディなスタートアップ達が採択されている。
Shakring — シェイカー株式会社
Shakringは世界中の人々が色々な”モノ”をレビューし、情報交換するためのアプリだ。「今さらレビューアプリか」と思われたかもしれないが、Shakringは既存のレビューサイトとは少し違ったアプローチをしている。
このアプリではレビューされたモノは「国籍」、「友達」、「宗教」とタブが分けて表示される。なぜこのような形にしているのかというと、シェイカー代表の金亨喆氏の体験が元になっているそうだ。
彼が数年前に都内のドラッグストアで買物をしている時に咳をしながら、風邪薬選びに困っているインド人の青年を見かけた。最初は日本語が話せない、読めないために薬が選べないのだと思い日本でポピュラーな薬(パブロン)を教えてあげたのだが、それでもこの薬を「どのような薬かわからなくて怖い」と言い、買うのを躊躇したという。
つまりは、異国で1人で薬なんかを選ぶ時には情報が少なくて困っている人が多いということだ。たしかに言われてみれば、旅行時に風邪を引いて薬を買おうとしても何を買っていいのか不安かもしれない。だから、自分の友達や同じ国籍、宗教(イスラム教徒は豚肉が食べれないなどがあるため)といったセグメントで分けた商品レビューが必要なのだと金氏は語る。
2012年の世界の旅行者は10億人も居るから、こういった悩みを抱えている人は多いとのこと。すでに提供予定のiPhoneアプリには日本語の商品が約20万件、英語では5万件が用意されている。
Eコマース市場は年々急成長している。この背景にはインターネット接続デバイスの普及、流通の効率化、ストア運営コストの低価格化などの要因が挙げられるだろう。この他にも、その要因の1つとして「ビジターの解析の高度化」もある、とLocarise CEOのFabian Dubois氏はいう。
今ではアクセス解析ツールは色々とあるし、無料でGoogle Analyticsのように豊富な機能が備えられているものも存在する。このおかげでビジターがどのような行動をしているかを分析し、最適化することで売上を伸ばすことができる。
それでも小売市場全体のうち未だに約90%をオフラインの実店舗の売上が占める。しかしながら、オフライン側で来店客の行動を分析するツールはまだあまり活用されていない。そこで、Locariseは実店舗向けのGoogle Analyticsを提供する。
来店客や店のウィンドウを見ている顧客の行動を分析し、ウィンドウを見ていた人が店に入るコンバージョン率はどのくらいか、彼らが店内に滞在時間した時間や購入までのプロセスはどうなっているのかといった情報をダッシュボードで確認できる。
Locariseは店舗にセンサーを設置して、ユーザーが持っている端末のWiFi信号を定期的に受信する。この信号を処理して、彼らの行動をウォッチするのだそうだ。だから、ユーザー側にアプリをインストールする必要はない。このサービスはすでに約15店舗がしているようだ。
Style with — 株式会社スタンドアローン
Style withはメンズ向け定期販売型のファッションECサービスだ。ユーザーが登録時に好みの服やブランドなどを指定すると、毎月、5つほどコーディネートを提案してくれる。このコーディネートは気に入ったらそのまま買うこともできるし、シャツだけ単品で購入することもできる。もちろん、全て買わないという選択もアリだ。
Style withと似たようなサービスでは昨年の500 Startupsのプログラムに参加していた「BOMBFELL」や、昨年後半にmixiが「Petite jete」(こちらは半年で終了)がある。Style withが特徴的なのは月額費をユーザーから取らない点だろう。
毎月のコーディネートの提案は無料で、実際に買物をする時に収益を得ることがこのサービスのビジネスモデルとなっている。スタンドアローンの黒濱達也氏によると、メンズファッションのEC市場は2015年に2,000億円規模になり、このうち日本でStyel withのモデルにあてはまる「テイストグラフ型」の市場規模は150億円になる見通しだそうだ。
Ednity — 株式会社Ednity
National Training Laboratoriesが提唱する学習定着率の「ラーニング・ピラミッド」によれば、一番記憶に残る学習方法は順に「人に教える」、「自ら体験する」、「グループディスカッションをする」のだそうだ。このような学習を可能にするのがチーム学習であるとEdnity CEOの佐藤見竜氏はいう。
Ednityはチームで学習できるように学校のクラス用SNSを提供している。FacebookやLINEでもグループ機能は使えるが、よりクローズドで安全な場を提供するためにこのサービスはあるという。
まず先生がクラスを作成するとパスワードが発行されるので、それを生徒や保護者に教える。クラスには先生からのクイズ、アンケートなどが投稿されたり、Q&Aフォーラムで生徒同士でやり取りもできる。先生の画面にはクイズの成績表なんかも用意されているから、宿題の提出・採点にも使えるそうだ。この他にも手書きのホワイトボードも用意されているから、複雑な数式もリアルタイムに共有することができる。
Onlabに以前採択されて、本誌でも紹介したLanguage Cloudは英会話教室と大学の語学講義向けに提供されていたが、Ednityはこれを全てのカテゴリに応用したようなイメージだ。
Viibar — 株式会社viibar
Viibarは映像制作に特化したクラウドソーシングサービスだ。元々映像の制作をしていたという同社代表取締役の上坂優太氏によれば、この業界はどこに発注すればよいのかもわかりにくいし、多くの行程があるが、どの行程でいくら費用がかかっているのかもわかりにくいのだという。
映像制作には編集、制作、サウンド、Web加工、配信測定、シナリオ制作…などの行程が存在するが、Viibarではこれらの行程ごとに各クリエイターが担当して1つの映像を完成させる。すでに約500名弱のクリエイターのネットワークを構築しており、高品質でスピーディーな納品ができているそうだ。
クラウドソーシングは比較的1対1のやり取りが多い気がするが、発注側に対して複数人のクリエイターがタスクを分けて担当するという点が映像制作では重要なようだ。
世界的にビデオ制作の市場は伸びており、オンラインだけでも3年後には日本で2,000億円になると予想されているという。今後はクリエイターを独自の審査基準でクオリティー、コミュニティの質を担保しながらサービスを拡大予定だ。
以上がOnlab第7期採択チームだ。Onlabはこれまでに35社を輩出し、その中にはY Combinatorに参加したAnypark、500 Startupsに参加したLanguage Cloud、AppSocially、WHILLなどが含まれる。このうち18社がファイナンスを実施しており、今年3月には映画オンデマンドの「ドリパス」を運営するブルームがヤフーに買収されるなど、徐々にイグジットするスタートアップもでてきている。
今後はよりグローバルに展開するために来月にはデジタルガレージのサンフランシスコセンターが完成する予定らしく、着々と準備を進めているようだ。なお、Onlab第8期プログラムはすでに募集が開始されており、11月8日までとなっている。