ゴーストキッチンの動きを探るソフトバンク・ビジョン・ファンド2がOrdermarkに約125億円を投入

「私たちは分散型のゴーストキッチンを構築します」という一文には、無数の投資家を呼び寄せるものがある。Ordermark(オーダーマーク)を支える最高経営責任者Alex Canter(アレックス・キャンター)氏も、そこをよくわかっていた。

29歳のこのCEOは、実際に分散型ゴーストキッチンを作った。そして、ソフトバンクの最新のビジョン・ファンドの説得に成功し、1億2000万ドル(約125億円)の投資を調達したことを米国時間10月27日に発表した。

「私たちは、Nextbite(ネクストバイト)というこのサービスを通じて、さらに多くの注文がレストランに入る機会を公開しました」とキャンター氏。「Nextbiteは、UberEats(ウーバーイーツ)、 DoorDash(ドアダッシュ)、Postmates(ポストメイツ)にのみ存在するデリバリー専門レストランブランドのポートフォリオです」。

Nextbiteの話を聞いた直後のソフトバンクは、あまり乗り気ではなかった。

最新のビジョン・ファンドの投資家たちが初めてキャンター氏と会ったのは、2019年、Ordermarkが前回の資金調達を発表した後だった。キャンター氏がちょうどNextbiteの実験を開始した時期だったのだが、いまではその事業は同社に大きな収益をもたらすまでになり、2021年には同社の事業の柱になると期待されている。

Ordermarkの先進的な技術プラットフォームと革新的な仮想コンセプトレストランが、レストラン業界を変革すると私たちは信じています」と、SoftBank Investment Advisers(ソフトバンク・インベストメント・アドバイザー)の業務執行社員Jeff Housenbold(ジェフ・ハウゼンボルド)氏は声明の中で述べている。「アレックスとOrdermarkのスタッフは、独立系レストランが直面している問題を深く理解しています。独立系レストランのオンラインでの注文受け付けを最適化し、空いているキッチンで収益を倍増させるという彼らのミッションを支援できることに、私たちは胸を躍らせています」。

これは興味深い方向転換だった。なぜなら同社はGrubHub、PostmatesUber Eatsといったさまざまな配達サービスにオンラインで入ってくるデリバリーの注文を、レストランに代わって一括管理する集中型ハブとしてスタートしているからだ。

キャンター氏は、レストラン事業の新参者ではない。彼の家族は、ロサンゼルスで最も有名なデリカテッセンの1つであり、家族の名前を冠したCanters(キャンターズ)のオーナーだ。そしてOrdermarkは、多種多様なデリバリーの注文で大混乱に陥っているレストランの裏方を助けて管理する企業としてスタートしている。

現在キャンター氏は、1つのレストランブランドの所有者ではなく、15のブランドを運営している。Cloud Kitchens(クラウド・キッチンズ)、Kitchen United(キッチン・ユナイテッド)、Reef(リーフ)などと違い、Ordermarkは新しいキッチンの建設や運営は行わない。その代わりに、準フランチャイズとして機能するよう厳選したレストランの使われずに遊んでいるキッチンスペースを利用している。

Ordermarkの一部のデリバリー専用コンセプトレストランのロゴ(画像クレジット:Ordermark

レストランのコンセプトはほとんどが内部で開発されているが、Ordermarkはセレブのスポンサーも受け入れていることもある。同社のNextbiteサービスは、ラッパーのWiz Khalifa(ウィズ・カリファ)が経営する「大麻でラリった人のためのスナック」が売りのデリバリー専門レストランHotBox by Wiz(ホットボックス・バイ・ウィズ)と提携している。

キャンター氏が立ち上げた最初のブランドは、The Grilled Cheese Society(ザ・グリルド・チーズ・ソサエティー)だ。ロサンゼルスのナイトクラブや、東海岸の個人経営のレストランの空いているキッチンを利用して足場を築き、現在では米国内に100カ所を数えるまでになった。

Nextbiteがどのような成長をもたらすのか、それを示してくれたのは、おそらくHotBoxの成長だろう。キャンター氏によればこのブランドは、10月初めに立ち上げられ、同月末には50の都市に拠点を築くまでに大きくなったという。

Nextbiteは、Ordermarkのデリバリー集約技術がなければ存在し得なかったともいえる。「Ordermarkの技術は、オンラインの注文をデバイスで集約するだけでなく、いくつものブランドもデバイスに集約できるようデザインされています」。

キャンター氏によれば、Nextbiteブランドとしてフルフィルメントパートナーの契約を結んだレストランは、追加の初期費用はほとんどかからず、相応の利益が得られるという。レストランは、Ordermarkのブランドとして受けた注文1つにつき30%のマージンを受け取ることができるとキャンター氏は話す。

Nextbiteのレストランネットワークに加わるには、Ordermarkによる事業の審査に通る必要がある。同社では、異なる地域でもうまくやっていけるレストランか、時々の流行に合わせたメニュー開発ができるか、といった点を参考にする。例えばNextbiteは先日、ホットチキンサンドのブランドを立ち上げたが、それがいくつものデジタルデリバリーサービスで人気上昇中の品目であることを事前に調査していた。

選ばれるのは、OrdermarkのNextbite事業が生み出すデリバリー専門ブランドのスタイルに即したメニューを提供できるレストランだ。

メニュー開発には、デンバーで活躍するシェフのGuy Simsiman(ガイ・シムシマン)が、新メニュー開発責任者として参加している。

「私たちは、拡大できるとわかったものを作っています。そして、適切なタイプのフルフィルメントパートナーを探すために、大量の事前審査を行っています」とキャンター氏。「フルフィルメントパートナーとしてレストランと契約するとき、私たちは彼らを審査し、彼らが行うべきことをトレーニングします。……コンセプトに合致したフルフィルメントパートナーになれるよう、彼らを導くのです。かなり大量のトレーニングを実施します。その後は、品質をモニターするための覆面調査やレビューの調査も行います」。

NextbiteはOrdermarkの事業の未来を担うことになるだろうが、健全性は全体に安定している。同社のシステムを通じて処理される注文の総額は、10億ドル(約1040億円)を超える勢いだ。

「現在は、私たちのレストランが新型コロナ禍を生き延びることにピンポイントで集中しています。そこで私たちにできる最良の方法が、Nextbite事業の収益増にすべてを賭けることなのです」とキャンター氏は、同社の重点は今後どこに置かれるのかとの質問に答えていった。

「Nextbiteは、長い時間をかけて開発してきました。2019年の新型コロナウイルスが流行る前に、私たちはこれを市場投入しています。米国中のすべてのレストランが、新型コロナの打撃を受け、高い創造性が求められるようになりました。客が店に歩いてこなくなった穴を埋める代替手段を、彼らは求めていました」と彼は話す。Nextbiteがその答となった。

カテゴリー:フードテック
タグ:OrdermarkフードデリバリーゴーストキッチンSoftBank Vision Fund資金調達

画像クレジット:Getty Images / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)