【抄訳】
これからは、パソコンをアップグレードしてスピードもストレージも増やしたいとき、それを高価な新しいハードウェアを買わずにできる。Y Combinatorから巣立ったPaperspaceが、一台の完全なパーソナルコンピュータをクラウド上に作ってくれる。ユーザはそれに、Webブラウザからアクセスする。それはある意味では、VMWareやCitrix、Amazon Workspacesなどエンタプライズ向けのソリューションにも似ているが、Paperspaceがねらうのは一般消費者や、在宅の仕事人だ。
ローカル機(自機)はWebがふつうに閲覧できる程度のものでよいが、クラウド上の高性能リモートパーソナルコンピュータには、同社の専用通信デバイス(上図左下)を自機に接続してアクセスする。
この専用デバイスは文鎮に似ているので Paperweightと呼ばれ、Paperspaceのサーバ上にあるユーザのリモートマシンと対話する。そのリモートマシンは、必要とするコンピューティングパワーに応じて”basic”または”pro”を選ぶ。このデバイスは中に小さなマイクロプロセッサがあるだけで、計算処理はすべてクラウド上で行われるから、“ゼロクライアント”であると見なされる。
Amazon Web Services(AWS)などを初めとして、今日ではクラウド上のコンピューティングパワーを利用するソリューションはたくさんある。でもそれらのサービスはすべて、プロフェッショナルの技術者向けだ。しかしPaperspaceは、同じくリモートのクラウドコンピュータにアクセスするサービスでありながら、一般消費者が画面上のボタンなどをクリックするだけで簡単に使えるようになっている。しかもそのリモートマシンは、机上の自機よりずっと強力な高性能機なのだ。
協同ファウンダのDillon Thompson ErbとDan Kobranによると、彼らがPaperspaceを発想したのはミシガン大学在学中に、建築業界向けの技術的なアプリケーションを作ったときだ。
建築関連のシミュレーションなどを動かすためには、高価なハイエンド機を買う必要があるが、それでもシミュレーションのアプリケーションを数日間ぶっ続けで動かさなければならない。“でも、科学計算の分野ではクラウドコンピューティングが利用され始めていることに、ぼくたちは気づいていた”、とErbは説明する。“そこで、“クラウドコンピューティングのパワーをコンピュータが苦手な建築士などが簡単に使えるためには、どうしたらいいか、と考えるようになった。クラウドコンピューティングは今でも、コンピュータの専門技術者でないと扱えない”。
彼自身もKobranも、二人ともコンピュータの技術者だから、今のソリューションでも十分に使える。ときどきコマンドラインからアプリケーションを動かすこともある。でも、それは一般の人びとには無理だ。
【中略】
Paperspaceは最初のうちAWSを使ってその仮想化機能などを実現していたが、今では自前のサーバの上でクラウドオーケストレーションソフトのXenやNvidia GRIDなどを使っている。サーバを置くスペースとしては、某コロケーションサービスを利用しているが、いずれ自前でデータセンターを持ちたい、と考えている。
VNCや、MicrosoftのリモートデスクトッププロトコルRDPなど従来のリモートアクセスと違ってPaperspaceは、WebsocketやWebGL、asm.jsなど最新のWeb技術をクライアントサイドで利用することによって、クライアント上で完全なHDのコンテンツを動かせる。
Netflixの映画をストリーミングできる程度のローカル機であれば、Paperspaceを十分に利用できる、という。
このサービスの利用料金は月額10ドルが下限だが、完全な料金体系はまだ決まっていない。今はWindows 7と8、およびUbuntuに対応しているが、Mac OS Xなどそのほかのオペレーティングシステムも近くサポートする予定だ。いずれ料金体系が確定して、リモートマシンをより“高性能機”にアップグレードしたいとき、ユーザがすることは何もない。設定も構成もそのまま完全に引き継がれるから、すぐに使い始められる。そこが、Paperspace、クラウド上にある高性能パーソナルコンピュータの、大きなアドバンテージの一つだ。
Paperweightデバイスは当分のあいだ予約価格50ドルで売られるが、本誌の読者250名には5ドルの割引がある。コードTECHCRUNCHを入力すること。デバイスの発売は、今年の後半を予定している。
Paperspaceは現在、Y Combinatorからの支援を除いては自己資本のみ。7名のチームが各地に分散している。
[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)