ポストコロナに向けて、分散型ワークの実現に向けPatchはコワーキングスペースを英国の小さな町や郊外に広める

パンデミックは働く環境に多大な影響を与えたといえるが、他の変化がすでに進行している中での出来事でもあった。電子商取引の拡大による街頭での買い物の減少は、さらに拍車がかかっているし、リモートワークへの移行も急速に進んでいる。人々はもはや8時から6時までの通勤を望んでいない。しかし、私たちは、在宅勤務が評判ほどいいものではないことに気づきもした。その上、もし地域に似たサービスがあれば簡単にいけるのに、WeWorkのようなところで共同作業をするためだけに大都市に通勤することに意味を見いだすこともできない。問題は、特に郊外や小さな町に、地域のコワーキングスペースがほとんどないということだ。

自宅で仕事をするのではなく、家の近くで仕事をすることができれば、よりバランスのとれたライフスタイルを手に入れることができるだけでなく、多くの人(特に家族)が望んでいる仕事と家庭の分離も実現することができるのではないだろうか。

今回、英国のスタートアップが「Decentralized workspace(分散型ワークスペース)」のアイデアを発表し、英国全土での展開を計画している。

Patchは、従来の通勤者を対象とした「Work Near Home(家の近くで働く)」という提案とともに、地元の大通りの空き店舗を「共同文化スペース」に変える。英国には600万人の知識労働者がいると推定されており、Patchはこの会員からの月額利用料で運営される。

現在、Patchは110万ドル(約1億2000万円)の創業資金を複数のエンジェル投資家から調達している。例えば、LocalGlobeの共同創業者Robin Klein(ロビン・クライン)氏、Entrepreneur Firstの共同創業者Matt Clifford(マット・クリフォード)氏、Charlie Songhurst(チャーリー・ソンハースト)氏、Episode 1のSimon Murdoch(サイモン・マードック)氏、元Jack WillsのCEOでGreat Portland EstatesのNEDであるWendy Becker(ウェンディ・ベッカー)氏、サステナブル投資家Eka Venturesの創業パートナーのCamilla Dolan(カミラ・ドラン)氏、米国投資会社SequoiaのタレントディレクターであるZoe Jervier(ゾーイ・ジャービア)氏、Grabyoの創業者でアーリーステージの投資家Will Neale(ウィル・ニール)氏などだ。

「家の近くで働く」というアイデアは、ポストコロナの「ハイブリッドワーキング」の動きに対応したもので、Patchは「起業家精神、テクノロジー、文化的なプログラムに焦点を当てた」公共の場を作ることを計画している。

Patchの各拠点では、プライベートオフィス、コワーキングスタジオ「利用しやすい低コストのオプション」、無料の学問のための場所などを提供する。

Patchの最初の拠点は、11月初旬にエセックス州チェルムスフォードにオープンする予定で、2022年にはさらに複数の拠点が計画されている。また、チェスター、セント・オールバンズ、ウィカム、シュルーズベリー、ヨービル、ベリー、キングストン・アポン・テムズの人々からも要望が寄せられているという。

Patchの創始者であるFreddie Fforde(フレディ・ファード)氏は次のように語った。「働く場所と住む場所は、伝統的に異なる環境と見なされてきた。そのため、平日の大通りは空洞化し、オフィス街も同様に廃れてしまった。私たちは、人々が家の近くで仕事をすることを可能にし、仕事、市民、文化の交流が混在する新しい環境を作り出せるテクノロジーがこの状況を根本的に変えると考えている」。

ファード氏は、Entrepreneur Firstの元創設者であり、ロンドンやサンフランシスコのアーリーステージのテック企業でさまざまな役割を担ってきた社員でもある。プロダクト部門の責任者には、2015年にターナー賞を受賞したデザインスタジオAssembleの元共同設立者であるPaloma Strelitz(パロマ・ストレリッツ)氏が就任する。

Entrepreneur FirstおよびCode First Girlsのクリフォード氏は、次のようにコメントしている。「テクノロジーは、私たちが組織化し、ともに働く方法を常に変えてきた。Patchは、住んでいる場所に制約されることなく、才能のある人たちが自分自身の能力に基づいて働く機会を解放するだろう。私たちは、高スキルの仕事がどこでもできる国にいたいと思っており、Patchはその環境の実現ための重要な部分を担っている」。

Patchは、主要都市の中心部ではなく、町や小都市の住宅地をターゲットにしており、町の中心部にある利用されていないランドマーク的な建物を探すとしている。例えば、チェルムスフォードでは、ビクトリア朝の醸造所を最初のスペースとして利用する予定だ。

Grays Yard

経済開発・中小企業担当の副内閣メンバーであり、BID委員会の代表でもあるチェルムスフォード市のSimon Goldman(サイモン・ゴールドマン)評議員は、次のように述べている。「グレイズヤードに新しいコワーキングスペースが導入されることは、この街にとって本当にポジティブな計画だ。住民に地元で働く選択肢を提供することで、通勤時間が短縮され、ワーク・ライフ・バランスの向上につながることが期待される。家の近くで働くことは、個人やその家族だけでなく、環境や地域経済にも多くのメリットをもたらす」。

また、Patchはイベントスペースのピーク時の20%を、地元や全国の「公益に役立っている」コミュニティサービスの提供者に寄付する「ギビングバック」モデルも実施するとしている。初期の国内パートナーには、技術サービスを提供するCode First Girlsや、Raspberry Pi Foundationが運営するCoder Dojoなどがある。

画像クレジット:Patch workspace

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(文:Mike Butcher、翻訳:Yuta Kaminishi)