ノートPCの性能はCPUやiGPU・dGPUが大きく左右するものの、操作性や使い勝手まで含めるとストレージとインターフェイスの影響も見逃せない。本稿は、最新GPUとCPUを活かす要素として、ストレージとインターフェイスについて取り上げる。
SSDを知るポイントは、ストレージ接続インターフェイスにある
まず、ノートPCのストレージは、ほぼ完全にHDDからSSDへ移行しているといえる状況だ。ただし、ストレージ接続インターフェイスによってアクセス速度の上限が異なっている点は、しっかりと押さえておきたいところだ。
現在、主なストレージ接続インターフェイスとしては、HDDと同じく転送速度6Gbps(実速度550MB/sec程度)の「SATA3(SATA 6Gb/s)」、また「PCI Express」(PCIe)がある。PCIeは、SSDに最適化された「NVMe」規格を通信プロコトルとして採用し、1000MB/secを超える読み書き性能を発揮するもので、2020年8月現在最も採用されている。
PCIe接続インターフェイスは、PCIeの世代やモードなどの仕様により定められた帯域幅によって転送速度が変わり、2020年8月現在、デスクトップ向けAMDプラットフォームで利用可能な「PCIe Gen4.0×4」の64Gbps(16Gbps×4)が最速となっている。PCIe Gen4.0×4は、対応SSDと組み合わせることで5000MB/sec前後のピーク性能を発揮する。
そしてノートPCを含め、PCIe接続インターフェイスの中でも主流の位置を占めるのが「PCIe Gen3.0×4」だ。これは、帯域幅32Gbps(8Gbps×4)で、ピーク性能は3000MB/secとなる。
このほか、転送速度16GbpsのPCIe Gen3.0×2も存在している。
M.2 NVMe SSDの「M.2」とは、何を指している?
ノートPC搭載SSDの性能にもよるため一概に言えないものの、ストレージ(SSD)のスペック欄に「PCIe」または「NVMe」といった記載がある場合は、1000MB/secを超える高速ストレージを搭載している可能性が大きくなる。
またストレージデバイスの形状としては、主にHDDで採用されている3.5インチ、モバイル向けHDD/SSD採用の2.5インチ、昨今主流になっているM.2形状の3種類がある。
SSDの主要メーカーのひとつ、SAMSUNGのNVMe SSD。ノートPC向けに開発されたM.2規格を採用している
M.2は、正確には端子形状の規格にあたり、接続インターフェイスとしてはSATA3(SATA 6Gb/s)またはAHCIと、NVMe(PCIeおよびNVMe)に対応している。ノートPCのスペック表などを見ると、「M.2 NVMe SSD」といった記載を見かけるはずだが、これは「M.2端子を採用した、(PCIe接続の)NVMe SSD」を意味している。
接続インターフェイスがSATA3なのか、あるいはNVMeなのかといった点は影響が大きく、ひと口にSSDといってもこの両者の性能は段違いだ。SATA3採用のM.2 SSDの場合、読み書き性能が550MB/sec程度になる点は注意しておこう。HDDより高速に読み書きできるものの、今後最新ノートPCを購入するのなら、何らかの意図がない限りSATA3採用SSDを積極的に選ぶ理由はないだろう。
PCIe Gen3.0×4、NVMe SSDのパフォーマンス例。外付けストレージを含め、SSDを一度体感するとHDDには戻れなくなる
Intelの次世代ストレージ技術「Optane Memory」
ノートPCの中には、ストレージに「Optane」と記載のあるモデルもある。これは、Intelの次世代ストレージ技術「Optane Memory」のことで、SSDに使われているNANDメモリーよりも高速・低遅延な「3D XPoint」メモリーをキャッシュとして活用している。
最新ノートPCでの採用例としては、低コストで大容量化しやすい3D QLC NANDメモリー採用SSDとOptane Memoryをひとつの基板に実装した、ハイブリッドSSD「Optane Memory H10」となっていることが多い。
Optane Memory H10のパフォーマンスは容量で異なり、1TBモデル(型番:HBRPEKNX0203A01)の公称ピーク値はリード2400MB/sec、ライト1800MB/secになる。
Intelの次世代ストレージ技術Optane Memoryを使ったOptane Memory H10
周辺機器の接続に利用するUSBも高速化
ストレージなど周辺機器を手軽に拡張できるインターフェイス「USB」も、ノートPCにおいて使い勝手に影響する要素のひとつだ。
USB規格はUSB4まで策定されており、最大転送速度が10GbpsのUSB 3.1 Gen2(USB 3.2 Gen2×1。2013年発表)の採用が広がりつつある。USB 3.×では規格名称が複数回変更となり、USB 3.0(転送速度5Gbps)→USB 3.1 Gen1→USB 3.2 Gen2となった。混乱しやすいが、覚えるしかないだろう。
また、年内にはモバイル向け第11世代Core i5/i7搭載ノートが登場予定で、これら製品のいくつかがUSB4を採用するとみられる。
IntelとAppleが規格化したデータ転送速度40GbpsのThunderbolt 3も普及が進み、標準でサポートするモバイル向け第10世代Coreプロセッサ搭載ノートPCでは多くが搭載している。さらにAMDプラットフォームにも、Intel公式認証のThunderbolt 3コントローラーが提供されており、Ryzen Mobile 4000シリーズ採用の最新モデルの多くがThunderbolt 3を搭載している。
USB 3.2/3.1とThunderbolt 3ともに言えることだが、USB Type-C=USB 3.2/3.1とThunderbolt 3ではなく、USB Type-Cはあくまでコネクター形状の名称にあたる。規格だけでなく、映像出力を可能にする「Alternate Mode(Alt Mode)」や、最大100Wまでの出力に対応する「USB PD(USB Power Delivery)」規格といった機能も、それぞれ対応している必要がある。
ケーブル不要で高速ネットワークを実現できるWi-Fi6
最後のキーワードが、Wi-Fi6ことIEEE 802.11axだ。規格上の最大値は9.6Gbpsで、実機ベースではPCにおいて2402Mbps、スマートフォンなどでも1201Mbpsという高速な通信速度を実現している。
Wi-Fi6対応ルーターを導入することで、有線LANの1000BASE-T(1Gbps)を超える2.4Gbpsでリンクされる
USB同様、最新ノートPCの多くはWi-Fi6を標準搭載しており、この高速通信を体感するには、Wi-Fi6対応の無線LANルーターが必須になる。追加投資は必要だが、2402Mbpsでリンクした際の実際のパフォーマンスは、1000Mbpsの有線LANと並ぶほどと、投資する価値は十分あるといえるだろう。
ネットワーク環境にもよるが、実際に有線LANを超える1.7Gbpsの実速度での通信を実現
環境で異なるが、ネットワークを経由したファイルコピーも、200MB/sec近い転送速度を発揮する
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