Pixelbook GoはChromebookの存在意義を拡張する

Chromebookが、K-8(幼稚園から中2まで)カテゴリを完全に支配すると予想した人は、ほとんどいなかった。もちろん後から考えれば、なぜChromebookがそんなに成功したのか、容易に分かるような気もする。価格も安く、大規模なソフトウェアの展開や利用制限も容易なので、教室で使うにはぴったりだっというわけだ。2018年だけで1500万台のChromebookが売れたが、その主な推進役となったのは、やはり学校だった。

しかしChromebookのメーカーは、このカテゴリーの製品の将来性を、教室の外に見出そうとしている。Google(グーグル)は、Microsoft(マイクロソフト)がサポートする激安PCとの競争の激化に直面している。また、すでにこのシステムを導入した学校には、まだ更新の時期が来ていない。そのためもあり、メーカーの多くが、学校外の一般的な用途をターゲットにするにつれて、Chromebookの平均価格の上昇が予想されているのも当然だろう。

一方、教室の外でChromebookを販売するのも、楽な仕事ではない。今や2019年なのだから、手頃な価格で処理能力も高いPCはいくらでもある。それも、オリジナルのPixelbookを異質な存在にした理由の1つだ。999ドル(約11万円)という価格は、そのデバイスを高級ラップトップのカテゴリに分類するものだった。そしてChrome OSが、過去数年間で大幅に進化してきたのは確かだとしても、その製品が、いったい誰をターゲットにしたものなのか、ずっと明確になっていなかった。

まったく同じことが、Pixel Slateにも言える。どちらも、十分に優れたハードウェアであり、高級ラップトップのカテゴリにもChrome OSが通用する領域があることを主張できるものだった。Googleは、実際に製品が多く売れることを期待していたのかどうか、疑問にさえ思えてくる。それよりも、Pixelシリーズを生み出すことになった一種のリファレンスデザインを確立することに固執していたのではないか。

Googleの最近のハードウェアイベントは、Chromebookに関する国民投票のようなものだったのかもしれない。オリジナルのPixelbookは、まだ現行製品だが、発売から2年が経過しても、一度もアップデートされていない。それを言い出せば、問題の多いPixel Budsにさえ、後継機が発表されても、なお執行猶予が与えられ、生き延びている。一方、Pixelbookには、Goが登場した。

この新モデルは、少なくともオリジナルのPixelbookの後継機ではない。今年はじめに大幅な値引きを実施していたことからも分かるように、GoogleはオリジナルのPixelbookの在庫を売り切ろうとしている。むしろGoの登場は、Googleが最初の2回では、ちょっと上を狙いすぎたことを、暗に認めているようなものだろう。

Goの649ドル(約7万1000円)からという価格は、人がこのカテゴリーに期待するものと、だいたい一致している。私が以前の記事で、前任機と比較してGoは「低予算」で買える製品だと表現したことについて、反感を買ったことは認める。確かに、低価格と言えるかどうかの基準は、Chromebookと、その他のカテゴリとでは大きく異なるだろう。Googleとしては、そうした概念を無視したいところだろうが、常に価格が、購入を決定する際の重要な要素となっているのは確かだ。

Chromebookでは、製品の価格が200ドル(約2万2000円)を下回ることも珍しくないので、Pixelbook Goは、それでもハイエンドに近い領域のものとなる。そして、あれこれオプションを選択していくと、価格は、そこからどんどん跳ね上がる。実際、現在のGoogleのサイトでは、最高のオプションを指定すると、1399ドル(約15万2000円)にもなる。これは、ほとんどのユーザーにとって、高級ラップトップの領域に踏み込むものだろう。これは、正直なところ、Googleのスマホの戦略とは、まったく合致していない。スマホでは、Samsung(サムスン)やApple(アップル)のようなフラグシップ専門のメーカーに対して、相変わらず低い価格で差別化を図っている。

それはともかくとして、価格だけを比べても、Pixelbook Goは、オリジナルのPixelbookよりも訴求力のある製品だ。しかし、このカテゴリーで何をすべきか確信している会社に、何らかのメッセージを送るようなデバイスではない。Acer(エイサー)のような企業が、教室の外に活路を見出そうとしている中、せいぜいGoは、そうした中間クラスのデバイスにも未来があるという、Googleの自信を誇示するものに過ぎない。

Googleがどこで手を抜いたかは、一目瞭然だ。この製品には、オリジナルが醸し出していたようなプレミアム感が欠如している。オリジナルのPixelbookについても、言いたいことはいろいろある、という人がいるだろう。しかし、それは見栄えのするデバイスだった。しかしGoは、少なくともぱっと見には、他社のChromebookとそれほど違うようには感じられない。高級感のあるガラスとアルミニウムは姿を消し、代わりにつや消しのマグネシウム合金が使われている。仕上げは、かなりプラスチックっぽく見える。

本体の色としては、Googleが独自に名付けた2色が用意されている。「Just Black」と「Not Pink」だ。Googleはレビュー用に前者の色を送ってきた。言ってみれば、ただの黒だ。正直なところ、蓋の角の部分にある白い小さな「G」というロゴによって、多少は救われている感がある。サーモンのような「Not Pink」なら、もうちょっとポップな感じだろう。Googleも、昔のiBookを見習って、もっと多くの色を取り揃えるべきだったのではないかと思う。

このマシンは、たしかにポータブルだ。重量は、フルHDモデルで2.3ポンド(約1kg)、4KウルトラHDモデルで2.4ポンド(約1.1kg)となっていて、オリジナルより少し軽い。その反面、厚さは13.4mmで、オリジナルの10.3mmよりだいぶ厚くなった。数日間、バックパックに入れて持ち歩いてみたが、普段入れている15インチのMacBook Proよりは、背中もずっと楽だった。立体的なストライプのような底面の感触もいい。片手で楽に持ち運ぶことができる。

見た目の問題はさておき、低価格を実現するために、他にも削らなければならなかった部分がある。中でも、もっとも大きなものは、360度ヒンジがなくなったこと。これはかなりコストがかかるものであることが明らかになった。オリジナルのPixelbookの価格を押し上げていた、大きな要因の1つでもある。私自身の用途では、正直なところ、これは大きな損失ではない。オリジナルのPixelbookをテストした際にも、標準的なラップトップとしての使い方以外は、ほとんど出番はなかった。

ただし、クリエイティブなアプリのためにChromebookを購入しようと考えている人は、ペン入力機能の省略と合わせて、この360度ヒンジがなくなったことで不自由を感じるかもしれない。もう少し目立たない省略は、パームレストの前端から後端までカバーしていたトラックパッドが、ベゼルのある普通のトラックパッドになったこと。これにも、製造コストがかかっていたようだ。キーボードは、私から見れば改善されている。宣伝通り、確かに静かだ。キータッチは、かなり柔らかめ。特にMacBook Proなどと比べると、遥かにソフトに感じられる。ストロークも、ラップトップとしては深めで良好だ。

画面サイズは、オリジナルのPixelbookよりも大きくなり、ちょうど1インチ増えて13.3インチとなった。ただし、デフォルトの解像度は、1920×1080(166ppi)となっていて、オリジナルの2400×1600(235ppi)よりも荒くなっている。とはいえ、1399ドル(約15万2000円)出せば、3840×2160(331ppi)の4Kディスプレイのモデルが入手できる。繰り返しになるが、それだけの価格のマシンが、いったい誰を対象としたものなのかは謎だ。

Goも、相変わらず2つのUSB-Cポートを装備する。これは、オリジナルのPixelbookでも批判の的となった部分だったが、Googleはこれについては主張を改めていない。おそらく私は、このマシンの主なターゲット層からは外れるのだろうが、ポートは4つくらいあってもいいと思っている。特に、仕事用に外部モニターや、その他の周辺機器をつないで使いたいと考えているような人にとっては、そうだろう。

プロセッサは、第7世代から第8世代のIntel Coreにアップグレードされた。オリジナルから2年が経過しているのだから当然だろう。ただし、ベースレベルのシステムが採用するのは、i5ではなくm3だ。オプションで、i5、またはi7が選べる。他のすべてのものと同様、アップグレードが用意されている。RAMについても同様。8GBまたは16GBのどちらかを選ぶ。ストレージは、ベースレベルでは、オリジナルの128GBから64GBに縮小されている。最大は256GBだ。クラウドストレージを多用している人にとっては、ストレージ容量の数字はあまり意味がないかもしれない。

Chrome OSには、まだ制約が多い。レビューするたびに、それを前提としなくても済む日が来るのを楽しみにしているが、残念ながら、まだそうなってはいない。教育用としては困ることもないのだろうが、WindowsやmacOSから乗り換えるのは、多くの人にとって茨の道だ。Google Playが利用可能となったことで、使えるアプリはかなり増えた。しかし、スマホ用の画面サイズに限定されずに動くアプリは、まだわずかしかない。

しかも、Chromebook用が存在しないアプリもある。私は、今度の中国への旅に、これを持っていこうかと検討してきた。セキュリティ機能と、12時間持続するバッテリー寿命は、その旅に申し分ない。しかし、Audacityの代わりになるアプリが見つからない。私はいつも飛行機の中で、ポッドキャストを編集しているのだ。これについては、もしお勧めがあれば、読者に提案していただきたいと考えている。

オリジナルのPixelbookがそうだったように、このGoも、自らの存在意義を探求しているデバイスのように思われる。価格が300ドル下がったのは、正しい方向への第1歩だが、Googleははるかに安いサードパーティの製品と競合することになる。私自身、教室の外でChromebookを使うことを推奨する理由を思いつくのに苦労している。手頃な価格のWindowsマシンが、ごろごろしているからだ。おそらく、出張用のセカンドマシンには適しているかもしれない。ただ、そうだとしても、Chromebook特有のユースケースを必要とする人が、どれくらいいるのだろう。

明らかにGoは、教室の外にChromebookの活路を見つけようとしているメーカーを、Googleがリードしようという試みだ。ハードウェア的には魅力的な部分もあるが、Chrome OSが本当に必要としている革命や啓示をもたらすものではなさそうだ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

Pixelbook Goは教育市場を狙わない、Google純正の低価格版Chromebook

Chromebookは、Googleにとってヒット商品となっている。少なくとも、Googleのハードウェアパートナーにとってはそうだ。低価格のデバイスが市場に溢れ、教育市場については、ほぼ完全に支配している。その一方で、Googleの純正マシンは、そうしたサードパーティの製品とは異なる、独自の路線を歩んできた。

これまでのPixelbookやPixel Slateといった製品には、1000ドルを超える価格が付けられていた。これはGoogleが、Chrome OSの高級路線での可能性を実証しようとしたものだった。それに対してPixelbook Goでは、クラウドベースのOSの長所を、これまでよりもずっと手軽な価格で引き出そうとしている。

関連記事:Googleから約7.5万円のChromebook最新版Pixelbook Goが登場

Goの価格は、649ドル(約7万500円)からで、Chrome OSの基本に立ち返ったような価格設定となっている。ただし、もっとも贅沢なオプションを選択すれば1400ドル(約15万2000円)にもなる。それはともかくGoは、Chromebookのユーザーが、もっと手軽な価格帯の製品を求めていることに目を向けた製品だ。ともあれ、Chromebookの存在意義は、最初からずっとそこにあったのではないだろうか。

もちろん、手頃な価格には妥協はつきものだ。デザインの観点からすれば、オリジナルのPixelbookを非常に興味深いものにしていた、いくつかの特徴を失うことを意味する。もっとも顕著なのは、ラップトップとしても、タブレットとしても使える、コンバーチブルなディスプレイ部分だ。もっと安価なシステムに採用された例もあるものの、なにしろ、360度開くヒンジは、かなりコストがかかる。そうしたヒンジを廃止したため、ペン入力機能は省略された。ただし、タッチ式のスクリーンは維持している。

オリジナルのPixelbookと同様、GoもUSB-Cポートは左右側面に1つずつ、2つしか装備しない。これによって、拡張性はかなり制限される。価格上の制約もあって、これ以上のポートは追加しないことを選択した。Googleから直接聞いたところによれば、Chromebookのコアユーザーのほとんどが、USB-Cポートは2つあれば十分だと言っているという。たぶん、大多数のユーザーにとっては、そうなのだろう。

それ以外の点では、デザインはなかなか凝っている。特に底面は、カラフルで、一面にリブが施されている。デバイスを片手で持ちやすいよう、考慮した設計だ。本体の軽量化もありがたい。気軽にバッグに入れて持ち運べるラップトップとなっている。

キーボードも改善されている。発表イベントの説明でも強調されていたように、音も静かだ。実際には、私はまだかなりうるさい環境でしか使っていないので、どれくらい静かなのかはよく分からない。キーのタッチは比較的ソフトだ。特に、タイルでも叩いているように硬いMacBookに比べれば、違いは大きく、なかなか良い感触を実現している。少なくともその点に関しては、これを自分のメインコンピューターにすることに、何の抵抗もない。

Chrome OS自体も、初期の頃から比べれば、大幅に進化している。特に、Androidアプリが使えるようになっているのが大きい。ただし、より専門的な作業には制限がある。低価格のGoは、その弱点を浮かび上がらせることになる。私の体験では、たとえばオーディオ編集をしようとした際に、問題に突き当たることがあった。

低価格帯を実現するために、エントリーモデルのスペックは低めに設定されている。プロセッサーはCore m3、RAMは8GBだ。CPUは、Core i5や同i7も選択でき、RAMも16GBまで実装できる。もちろん、その分価格は高くなる。そうこうしているうちに、オリジナルのPixelbookの価格帯に重なってしまうことになる。

ところで、オリジナルのモデルの販売も継続されている。2年も前の製品なのに、スペックは変更されていない。とはいえ、新製品も発表された今、いかにも賞味期限切れの感があるのは否めないだろう。

価格だけを考えても、Googleは、オリジナルのPixelbookより、かなり多くのGoを販売しようと考えているのは間違いないだろう。そこは、市場のおいしい部分であり、低価格帯の製品を求めている消費者を引き寄せる領域だ。Goは、すでにChromebookとして成功を収めている、教育市場に的を絞った製品というわけではないだろう。Googleによれば、この価格でも、K-8(幼稚園から中2)の生徒には高過ぎるという。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

Googleから約7.5万円のChromebook最新版Pixelbook Goが登場

Googleは、毎年恒例のハードウェアイベントで、米国時間10月15日、純正Chromebookシリーズの最新版、Pixelbook Goを発売すると発表した。価格は649ドル(約7万500円)から。昨年の180度開くヒンジを備えたPixelbookや、2in1のPixel Slateの後を受けたモデルは、ノーマルなラップトップ型に戻った。

Goは、16:9で13.3インチのタッチスクリーンを備え、HDまたは4Kのいずれかの解像度のディスプレイを搭載するモデルを用意する。USB-Cポートを2つ備え、Titan-Cのセキュリティチップも内蔵する。メモリは最大16GBのRAMと、最大256GBのストレージを実装可能。CPUは、インテルのCoreシリーズで、ローエンドがm3、ハイエンドがi7を搭載する。本体の色は黒と「非ピンク」の2種類。予約注文はすでに始まっているが、今のところ選べるのは、黒だけとなっている。「非ピンク」も、近々入手可能となる予定。

底面は波打つような仕上げで握りやすい。従来のPixelbookシリーズよりも静かだとされる「Hush Keys」と呼ばれるキーボードを備える。音について言えば、Goは「オーケーGoogle」に応えるための遠距離用マイクを内蔵している。

「私たちは、薄くて軽くて、しかもけっこう速く、バッテリーも1日中持つようなラップトップを作りたいと思っていました。それはもちろん、見ても触っても美しいものでなければなりません」と、Googleのアイビー・ロス(Ivy Ross)氏は、イベントの発表で述べた。ロス氏はまた、Pixelbook Goは大容量のバッテリーを内蔵するにも関わらず、ボディをマグネシウム製にすることで、軽量化できたと強調した。

MicrosoftのSurfaceシリーズとは異なり、これまでのGoogle製のラップトップは、常にChromebookシリーズのハイエンドを定義する、野心的なデバイスのように思えるものだった。しかし649ドルのPixelbook Goは、この分野におけるこれまでの同社の取り組みとは異なり、明らかに手頃な価格の路線を狙ったもの。やはり、もう少し売れるものにしたいと考えているようだ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)