高く舞い上がる宇宙開発ベンチャー

宇宙開発ベンチャーへの投資額は、近年成層圏にも届きそうな勢いで跳ね上がっている。しかも、この分野の投資家たちは、まだまだ高まるばかりだと踏んでいる。

資金調達額が急上昇した最新の例としては、衛星インターネットのスタートアップOneWebを挙げることができる。打ち上げの成功を受けて、銀河規模とも言える12億5000万ドル(約1375億円)のベンチャー資金ラウンドの調達成功を発表した。今回の資金調達には、気前の良さで知られるソフトバンクをはじめとする多くの投資家が名を連ねている。その結果、このバージニア州アーリントンにあるOneWebは、これまでの合計で巨額の34億ドル(約3740億円)の投資を獲得した。

しかし当然ながら、OneWebが最近の大規模な投資を引き出した唯一の宇宙開発関連企業というわけではない。この分野への大規模な投資をまとめたCrunchbase Newsは、ベンチャーキャピタルからの注目を集め、巨額の資金も引き出した企業のリストを掘り起こしている。その中には、2018年以降に5000万ドル(約55億円)以上の資金を確保した、五指に余る会社が含まれている。

魅力はどこにあるのか? しばしば繰り返される話だが、初期段階だった企業が成熟するにつれて、スタートアップ投資担当部門による査定額が上昇していることが大きく影響している。これは、投資家グループSpace AngelsのCEO、Chad Anderson氏の意見だ。

「参入に対する抵抗は、2009年に消えました。それはSpaceXが、低コストかつ透明な費用による打ち上げを何度も成功させたからです」と、Anderson氏は言う。「Planet(※以前のPlanet Labs)のような真に草分け的な企業が、2013年以降、新たな宇宙へのアクセスを活用できるようになったこともあります」。

今では、5〜6年前に立ち上げられた宇宙開発関連の企業は、スタートアップの基準からすれば中堅企業となり、より大きな、後半の投資ラウンドの時機が熟している。

近年、衛星の設計と打ち上げに関する費用の経済性が向上したことも、投資家に対する大きな説得力となっているのは確かだ。衛星は、設計、製造、打ち上げのための費用として、以前は数億(または数十億)ドル(数百億〜数千億円)もかかっていた。今日では、小型衛星なら数万ドル(数百万円)で製造し、数十万ドル(数千万円)で打ち上げることができるようになった、とAnderson氏は説明する。

ベンチャー投資家は、そうした計算を好むものだ。Space Angelsの見積もりによれば、ベンチャー投資家のファンドは、過去10年間で宇宙産業に約42億ドル(約4620億円)投資した。そのうちの70%は、ここ3年間に集中しているのだ。

そしてさらに多くの投資会社が、この分野に参入しつつある。Anderson氏の計算によれば、上位100社のベンチャーキャピタルのうち40%強の会社が、少なくとも1件以上の宇宙関連投資を行っていることになる。こうした投資は、2つの領域に集中している。衛星と打ち上げ技術だ。特に小型衛星をターゲットにしたものが多い。

資金がどこに向かっているのかを確認するため、昨年以降に大きな資金調達を達成した宇宙開発関連企業を、以下の表にまとめてみた。

宇宙開発企業が多大なベンチャー投資を生み出している一方で、それほど多くのスタートアップがエグジットを達成しているわけではない。それもまったく驚くに値することではないだろう。典型的なベンチャーのスタートアップからエグジットまでのタイムラインを当てはめて考えてみれば、それも納得できるはずだ。仮に、投資を受けたスタートアップが、2013年ごろに創立されたものとすれば、これから数年後には、いくつかエグジットが期待できるだろう。

しかし、ベンチャーキャピタルからの支援を受けた宇宙開発関連企業の中で、最も有名、かつ先駆的な役割を果たしているイーロン・マスク氏のSpaceXは、まだ株式を公開していない。これは注目に値する。もちろん、Spacexの知名度、業績を考えれば、ブロックバスター的なIPOを実現しても不思議ではない。

それでもAnderson氏は、それはありそうにないことだと主張している。この先だいぶ時間が経ってもだ。1つには、マスク氏が考える会社の究極の目標が、火星を植民地化すること、という事実がある。それは、株式を公開している一般的な会社の責務とはうまく合致しない。つまり、四半期ごとに会計の帳尻を合わせるといったことは難しい。さらにマスク氏が、テスラでのやり方に関して、すでに規制当局との関係をこじらせていることも、プラスには働かない。

それでもSpaceXは、その壮大な野心を追求する過程で、他の多くの宇宙開発起業家の発射台としても機能してきた。ここに、SpaceXの卒業生を創立者、またはコアメンバーに持つ9つのスタートアップをリストアップしてみた。

火星の植民地化というのは、リスクの高い賭けには違いないが、地球上で宇宙開発関連企業がエグジットを果たす可能性は、より高いものになってきている。

※PlanetとSpaceXは、Space Angelsのポートフォリオ会社

画像クレジット:John Devolle

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

「ハト」2羽を軌道に乗せたPlanet Labs、次は史上最大の人工衛星群を打上げ準備中

衛星画像のスタートアップ、Planet Labsが人工衛星2機を軌道に乗せることに成功した。しかし、同社最大の節目はこれからだ。低価格、低空飛行の人工衛星 “dove”[ハト]を製造する同社は、史上最大の地球撮影衛星群の打上げ準備に入っている。

Planet Labsは、製作、運用を超効率化し、衛星写真のコストを下げより良い画像をより頻繁に撮影できる人工衛星を製造している。同社の “dove” は、従来の衛星よりはるかに小さく、ずっと低く飛ぶ。軌道は従来の地上800~1200kmに対して、400~500kmだ。ただし、Planet Labsのハトたちは長く生きることはできず、寿命は従来の約3年に対して1年だ。

短命の商用衛星を作るもう一つの利点は、Planet Labsが高頻度で機器をアップグレードできることで、最新バージョンのハトには最新の技術を適用できる。寿命が来る前に故障することのないよう数年をかけて開発する伝統的衛星工場とは対照的だ。「ハト」たちは、事実上使い捨てを前提に作られている ― そしてそれは優れた考えだ。

これらの衛星は地球にずっと近いため、高解像度の画像を撮影することが可能で、森林破壊の監視や農場の改善、自然災害の追跡など様々な応用分野に利用できる。Planet Labsの共同ファウンダー・CEO、Will Marshallは、同社のデータに興味を持つパートナー数社と関わっていると言ったが、具体的な名前は明かさなかった。

すでにPlanet Labsは、Dove 1およびDove 2の衛星2機から画像を配信している。最近、ロシアのドニエプル・ロケットを使って新たにDove 3、Dove 4を打ち上げた。しかし、メインイベントは、12月に予定されているFlock 1衛星群の打ち上げだ。

同社初の衛星群はdove 28機からなり、バージニア州のNASAワロップス飛行施設からアンタレス・ロケットに乗って発射される。この衛星群は地球全体の画像を非常に短い時間隔で撮影することが可能なため、企業等に前例のない量のデータを提供するだろう。

Planet Labsは、元NASAの物理学者、Will Marshall、Robbie Schingler、およびChris Boshuizenの3人が設立した。同社は、Draper Fisher Jurvetson、Capricorn Investment Group、O’Reilly AlphaTech Ventures、Founders Fund Angel、Eric Schmidt’s Innovation Endeavors、Data Collective、およびFirst Round Capitalから1300万ドルの資金を調達した。

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(翻訳:Nob Takahashi)