PlanetScaleがエンタープライズデータベースサービスを一般公開、シリーズCで約57億円を調達

YouTubeに技術提供するVitess(ヴィッテス)オープンソースプロジェクトの共同クリエイターにより設立されたサーバーレスデータベース企業PlanetScale(プラネットスケール)は、2021年11月中旬、Kleiner Perkins(クライナー・パーキンス)率いるシリーズCの資金調達ラウンドで5000万ドル(約57億円)を調達したことを公表した。既存の投資会社a16z(アンドリーセン・ホロウィッツ)、SignalFire(シグナルファイア)、Insight Partners(インサイト・パートナーズ)に加え、GitHub(ギットハブ)の前CEOで共同創設者のTom Preston-Werner(トム・プレストン=ワーナー)氏、Lattice(ラティス)のCEOで創設者の Jack Altman(ジャック・アルトマン)氏、Instacart(インスタカート)の共同設立者であるMax Mullen(マックス・マレン)氏もこのラウンドに参加した。これにより同社は2021年6月に発表したばかりのシリーズBの3000万ドル(約34億円)を含め、総額1億500万ドル(約120億円)を調達したことになる。

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さらに、同社はそのホスト型エンタープライズプラットフォームを一般公開したことも発表した。2021年3月の立ち上げからプライベートベータ版のみ利用できていたサービスだが、同社にはすでにYouTube(ユーチューブ)、GitHub、New Relic(ニューレリック)、Slack(巣ラック)、MyFitnessPal(マイフィットネスパル)、Square(スクエア)、Affirm(アファーム)などの顧客がいる。「私達には主要な上位4000のウェブサイトがあり、それがPlanetScaleに移行し、現在PlanetScaleによりベータ版でホスティングされています」と、PlanetScaleのCEOであるSam Lambert(サム・ランバート)氏はいう。「人を寄せ付けずにはいられません。ベータ版もそれを止めませんでした」。

GitHubのエンジニアリング部門の前VP、ランバート氏は、PlanetScaleのチーフプロダクティブオフィサーを9カ月務めた後、7月にCEOの職に就いた。彼は、共同創設者でありチーフストラテジーオフィサーとなって引き続き同社の理事会メンバーを務めるJiten Vaidya(ジテン・ヴァイジャ)氏の後を継いだ。

ランバート氏は、PlanetScaleが急速に拡大し、従業員数が過去6カ月で3倍に増加した。「特にNetlify(ネトリファイ)Vercel(ヴァ―セル)のようなプラットフォームを使用している場合、当社はデフォルトのサーバーレスデータベースとして話題に上っています。サーバーレスは産業の1つとして成長していますが、あまり複雑でない分野で成長していました。【略】サーバーレスの世界でデータベースを組み立てた人が数人いました。しかし私達が現れて、完全に新しい物を持ち込んだのです。地球上で2番目に大きなウェブサイト、YouTube.comのバックエンドとなるデータベースを、サーバーレスの世界にもたらしました」と、ランバート氏は述べた。

Kleiner Perkins(クライナー・パーキンス)のパートナー、Bucky Moore(バッキー・ムーア)氏によると、PlanetScaleのようなトランザクションデータベースは「すべてのインフラストラクチャの中で特別な市場機会」だいう。大手のクラウドプロバイダはこれらのサービスにより何十億ドル(何千億円)も生み出しているが、投資家達は慎重な姿勢を崩さない。「多くの投資家が、率直にいって、この軸のクラウドプロバイダと競争することを躊躇してきました。それが彼らの心と戦略にとって身近で重要なビジネスだからです」とムーア氏はいう。「しかし、それに対する私の考え方はまったく違います。ウェブスケールでソフトウェアを世界のユーザー基盤に提供するにはこの2つのメガトレンドが必要で、もちろんパブリッククラウドがもっと簡単にします。しかし同時に、このデータベースの部分の解決方法についてはそれほど革新が行われていません。そしてもちろん、だからこそヴィッテスがそのような興味深いテクノロジーであり、大変多くの大企業が大規模にそれを運営しているのです」。

その一方で、ランバート氏が議論するのは、サーバーレスがついにクラウドの元の多くの約束を果たすポイントに到達していることである。「クラウドは最終的に、『もうサーバーの電源を差すことはない』段階に移行しました。しかし、企業には人々のチーム、AWSを管理する何百もの従業員がいて、『私達が行くべきところまで行かなかった』。私は、サーバーレスはそれを持ち上げ、それは加速していると思います。半端ないペースです。そしてそれは人類の進歩ももたらします。従業員5人の会社が何十億ドルもの価値を上回るという事実が生まれます。理由はサーバーレスツールを活用するだけ、これらをまとめるだけだからです」。

PlanetScaleはMySQL(マイ・エスキューエル)やVitess(ヴィテス)などのオープンソースプロジェクトの頂点に立つが、ランバート氏もムーア氏も、大手クラウドプロバイダがコードを使って独自の競合を立ち上げることを恐れていない。

「クラウドがクローンできないことの1つはセンスです」。ランバート氏は述べた(そして、ランバート氏ほど多くの熱意と情熱を持つ人はほとんど会ったことがないと書いておくべきであろう。)。「それは間違いなく真実ですよね。みなさんはライセンシングの議論を目にしています。現在のライセンシング戦争です。多くの企業と多くのデータベース企業がBSLライセンシングの陰に隠れています。なぜならクラウドがそのツールを拾い上げるとの恐れからです。人々が私達のセンスを真似ることができても、私達は恐れません。私は大企業がGitHubの競合を作っては閉店させている間、GitHubに留まっていました。そしてそれは、美とデザインと驚くべきセンスを通して人々と感情的に共鳴する、私達の驚くべき能力のおかげです。【略】私達はクラウドの試行を恐れません。なぜなら真に、私達が話にもたらす魔法が非常にユニークだからです」。

同社の将来計画に関しては、ランバート氏は伝えた。これまで、PlanetScaleじゃそのロードマップのために基礎を築いただけだった。彼の見解によると、同社はヴィッテスができることの約10%のみを示したが、チームはログインシステムや監査ロギングのような基本のみを、同社が次のステップでそれらの作業を行えるようになる前に投入する必要があった(しかしデータベースの分岐によって、すでに複数の高度に革新的な機能も立ち上げた)。PlanetScaleチームの見解では、データベースの世界の多数の作業がデータベース自体から作業を取り上げ、データベース外のデータを扱っている。しかし、もしヴィッテスのように堅牢で高度にスケーリング可能なシステムがあれば、アーキテクチャを簡素化し、時間の経過とともに、多くのデータベースシステム外で構築されたプリミティブをそれに戻すことができる。

今日のGAの立ち上げにより、同社はすでに新しいデータベースのインポート機能を提供している。それによりユーザーはたった数クリックで既存のMySQLデータベースをPlanetScaleに移行させることができる。これは新しいユーザーが完全な移行を行う前に独自のデータを用いてサービスをテストすることが簡単になるはずである。サービスは現在新しいPrisma Data Platform(プリズマ・データ・プラットフォーム)にも統合され、開発者がPrisma(プリズマ)でPlanetScaleのデータベースを作ることができる。

画像クレジット:EDUARD MUZHEVSKYI / SCIENCE PHOTO LIBRARY / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Dragonfly)

データベースクラスタリングのPlanetScaleはシンプルで使いやすい開発者体験を実現

YouTubeで最初に開発されたMySQL用のオープンソースのデータベースクラスタリングシステムVitessを提供するPlanetScaleは米国時間6月23日、Insight Partnersが率いるシリーズBのラウンドで3000万ドル(約33億円)を調達したことを発表した。その他にもa16zとSignalFireが参加している。Crunchbaseによると、これで同社の調達総額は5500万ドル(約61億円)になる。

今回の発表のわずか数週間前には、PlanetScaleは同社自身がホストする新たなデータベースプラットフォームを立ち上げ、それを同じくPlanetScaleと呼んだ。これまでVitessはホストしていたが、同社はこの新サービスで一歩前進し、同社のいう「デベロッパーファーストのデータベース」を提供していく。それは、すべてのインフラストラクチャを抽象化して、デベロッパーがクラウドのゾーンとかクラスターのサイズなどインフラの細部を気にしなくても良いようにする。

PlanetScaleのCEOで共同創業者のJiten Vaidya(ジテン・ヴァイディヤ)氏は、初期のプロダクトの限界について極めて率直に語る。「実のところ、2020年私たちが開発したものは、ホストされるVitessと呼んでもいいものです。今では多くのクラウドプロバイダーが自分のところでデータベースをホストしていますが、それと変わりないものです。つまりこれまでの私たちのプロダクトには、今日のデベロッパーが求める使いやすさやエレガンス、最先端のUXなどがまったく組み込まれていませんでした」。

しかし数カ月前に同社は、元GitHubのエンジニアリング担当副社長Sam Lambert(サム・ランバート)氏を同社のCPO(チーフ・プロダクト・オフィサー)に迎えた。ヴァイディヤ氏によると、ランバート氏はPlanetScaleにデベロッパーの共感をどっさりと盛り込み、この新製品の立ち上げを助けた。

そのランバート氏は次のように語る。「多くの人ががここに来るのは、彼らがデータベースのエキスパートだからではありません。彼らはデータを抱え、そして問題を抱えているのです。しかし、あまりにも多くの企業、中でもデータベースの世界は、我々のような開発者ユーザーの日常について考えたことすらない。ユーザーが実際にやってることの一から十までを、データベースの人たちは考えないのです。大切なことは、顧客に価値を届けることです。しかしデータベースの人間が関心を持つのはデータの保存や取り出しであり、60年代からそればっかりやってきました。そろそろ違うことをやってもいいのでしょう」。

現在、同社のユーザーにはSlackやFigma、GitHub、Squareなどがいて、多くのユーザーに価値を提供していることは事実だ。ランバート氏によると、今のPlanetScaleは、ユーザーにシンプルで使いやすいプロダクトを提供しようとしている。「使いやすいとかシンプルとか美しいという評価は、それが劣っているという意味ではありません。何かが欠けていることを意味しているのでもありません。むしろ他のプロダクトの方が、インフラストラクチャプロダクトに加えられる詩や美という付加的要素を欠いているのです」とランバード氏はいう。

PlanetScaleは今回の新しい資金でチームをグローバルに大きくし、同プラットフォームの採用を加速させたいと考えている。Insight PartnersのマネージングディレクターであるNikhil Sachdev(ニキル・サチデブ)氏が同社の取締役会に加わり、同社のマネージングディレクターであるPraveen Akkiraju(プラビーン・アッキラジュ)氏も、取締役会のオブザーバーとして参加する。

「PlanetScaleは、サーバーレスの現代において、クラウドベースのデータベースの単純性とパフォーマンスとスケーラビリティのバーを高くしました。データベースのデベロッパー体験は、あまりにも長く苦痛を感じるものでした。PlanetScaleは、その鎖を切ろうとしています。スケーラビリティと信頼性における長年の問題を、同社は極めてエレガントで趣味が良く便利な方法で解決しています」とサチデブ氏はいう。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:VitessPlanetScale資金調達

画像クレジット:PM Images/Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)