RDNAアーキテクチャのモバイル向けGPU「Radeon RX 5000M」でライバルを追撃するAMD

モバイル向けGPU「Radeon RX 5000M」でライバルを追撃するAMD

高いパフォーマンスで注目を集めるCPU「Ryzen Mobile 4000」シリーズ同様、AMDはモバイル向けGPUにも力を入れており、「Radeon RX 5000」シリーズを投入している。

Radeon RX 5000は、開発コードネーム「Navi」で呼ばれていたGPUで、製造プロセス7nmの「Radeon DNA」(RDNA)アーキテクチャを採用している。RDNAと聞いて気がつく人もいるはずだが、年末商戦期発売予定のPlayStation 5が採用しているGPUは、このRDNAの第2世代「RDNA 2」をカスタムしたGPUとなっている。第1世代とはいえ、同系統のRadeon RX 5000シリーズもそのパフォーマンスに関し十分期待できるというものだろう。

具体的な製品としては、2020年1月に開催された「CES2020」プレスカンファレンスにおいて「Radeon RX 5000M」シリーズが発表されており、「AMDづくし」といえるスペック(CPUとしてRyzen Mobile 4000シリーズを採用)のノートPCの発売が始まっている。

Ryzen Mobile 4000とRadeon RX 5000Mを搭載したノートPCが登場している

Ryzen Mobile 4000とRadeon RX 5000Mを搭載したノートPCが登場している

Radeon RX 5000MのSKUは、Radeon RX 5700M、RX 5600M、RX 5500M、RX 5300Mの4GPUとシンプルになっている。型番から察せられるように、現状最上位はRadeon RX 5700Mになるが、RX 5600MとはGPUコアクロックや、最大メモリー容量、帯域幅が異なるだけで、演算ユニット数とストリーミングプロセッサー数は同じとなっている。ただし、ピーク時の単精度浮動小数点演算性能はRX 5700Mが7.93TFLOPsのところ、RX 5600Mは5.83TFLOPsと差が開いている。

また、7.93TFLOPsという演算性能(FP32)は、デスクトップ向けミドルクラスGPUのRadeon RX 5700と同等(7.95TFLOPs)だ。

Radeon RX 5500Mのスペック(GPU-Z)

Radeon RX 5500Mのスペック(GPU-Z)

SKUで多少異なるが、Radeon RX 5000Mシリーズのスペックは、デスクトップ向けの同シリーズと同等または近くなっている。「フルHD解像度、60fps」というゲームプレイがターゲットとなる、エントリークラスのゲーミングノートPCに採用されているRadeon RX 5500Mでも、ピーク単精度浮動小数点演算性能はデスクトップ向けGPUのRadeon RX 5500 XTの5.2TFLOPsから、若干パワーダウンした4.63TFLOPsの性能が備わっている。

あくまでも数値上になるものの、NVIDIAのモバイル向けGPUのGeForce GTX 1660 Ti Max-Q Designの4.101TFLOPsを上回っている点もポイントだろう。

なお、モバイルCPU「Ryzen Mobile 4700U」が内蔵するiGPU「AMD Radeon Graphics(Vega 7)」では、演算ユニット7基、ストリーミングプロセッサー448基となっている。エントリーdGPUのRadeon RX 5500MやRX 5300Mでも、その3倍以上のスペックになっているため、そのぶんゲーミングパフォーマンスには期待できるというものだ。

Radoen RX 5000Mシリーズ スペック

デスクトップ向けおよびモバイル向けGPUの比較

CPUとGPUを手がけるAMDならではの技術に注目

モバイル向けのCPU・GPUを手がけるAMDならではとして注目したい技術が、「AMD Smart Shift」だ。クリエイティブ系ソフトウェアやゲームなどアプリケーションの負荷に状況に応じて、CPUのRyzen Mobile 4000と、GPUのRadeon RX 5000Mの間で動的に電力を割り振ることで、パフォーマンスが最大14%向上するとうたっている。

基本的な考え方は、NVIDIAが最新のMax-Q Designに盛り込んだ「Dynamic Boost」と同じで、CPUとGPUの両方を開発しているAMDだけに、そのパフォーマンスアップに期待が持てるだろう。

CPUとdGPUの消費電力をアプリケーションに合わせて最適化し、最大限の性能を引き出すAMD Smart Shift

CPUとdGPUの消費電力をアプリケーションに合わせて最適化し、最大限の性能を引き出すAMD Smart Shift

AMD RadeonとMacBook Pro

Appleは、自社開発のCPU「Apple Silicon」の発表により、長らく続いたIntelとの関係に終わりを告げた。GPUに関しては、(今のところ)AMDとの関係が続いており、MacBook Pro向けには「Radeon Pro 5000M」シリーズが投入されている。

Radeon Pro 5000MシリーズのGPUイメージ

Radeon Pro 5000Mは、製造プロセス7nmのRDNAアーキテクチャを採用する点はRadeon RX 5000Mシリーズと同じだが、演算ユニット数やストリーミングプロセッサ数などが増加。16インチモデルのMacBook Proで選択できるRadeon Pro 5600Mでは、帯域幅が高速なHBM2(High Bandwidth Memory 2)の8GBメモリーを搭載している。

Radoen Pro 5000Mシリーズ スペック