現在アメリカではDoctor on Demand、HealthTap、MDLive、American Wellなど多数のオンライン診療サービスが利用可能だ。しかしスタートアップのRemedyはユニークな遠隔診断サービスで、 AIを利用して疾病の原因を低コストで突き止めるが可能だという。
多くの遠隔医療(telemedicine)はやや漠然とした用語だが「AI採用を採用」したとしている。HealthTapは最近Dr. AIという医療に特化したスマート検索アルゴリズムを発表した。 Remedyもこの範疇に入るだろう。ただしこうした「AI採用サービス」のうちどれくらいが本当の意味で人工知能を利用しているかを判断するのは難しい。しかしユーザーが訴える症状に基づいて大量の医療情報を検索し原因を突き止める役に立つスマート・アルゴリズムをAIと呼ぶなら、RemedyはAIを採用しているといっていい。
RemedyにはKhosla Ventures、Greylock Discovery、Alsop Louie Partnersに加えてGoogleのBrain AIチームの責任者Jeff Deanが投資しており、健康保険への加入の有無を問わず1回30ドルでAIを利用した専門医による診断を受け、処方箋を発行してもらうことができる。
Remedyはある意味でIBMのDr. Watsonに似ている。IBMの医療AIは長年医師を悩ませていたきわめて珍しいタイプの白血病を正しく診断することができた。
ただしRemedyは比較的新しいサービスで、ベータテストを終了したばかりだ。今のところ、医師が診断を下せなかった症例の診断には成功していないが、このサービスの大きな目的は、健康保険に加入していなくても低料金で診断を受けられるようにするところにある。
また他の遠隔医療サービスとは異なり、Remedyはその時点で対応可能なランダムな医師ではなく、特定の医師を「かかりつけ」として患者とペアにすることができる。
Remedyのユーザーは医師を選び、症状を入力した後、自分のビデオを撮影して医師に送る。Remedyはこれによって患者の実在を確認できる。医師はこうしたデータにもとづいて訴えがあった症状の原因を診断する。
ファウンダーのWilliam Jackは自身がてんかんの治療で当初誤った診断を受けたことがきっかけでこのサービスをの開発を思い立ったという。
TechCrunchの取材に対してJackは自分の体験を詳しく説明した。「最初にこの発作が起きたとき、病院に行って自分が体験したことを説明した。しかし、偏頭痛という全く誤った診断をされてしまった。私はそこで2つの重要な教訓を学んだ。医師は患者に何が起きたのか正確な情報を得られるよう十分な時間をかけない。第2に、医師がスマート・システムにアクセスできるなら、つまり患者の訴えをそのつど正確に記録し、関連する症状を検索できるなら、確実な証拠に基づいた診断が可能になるはずだということだ。そうしたシステムが利用できるなら、医師はもっと精度の高い診断を下せるようになる」。
医師がこうした検索システムを利用できたなら、自分は長年にわたって原因不明の発作に苦しめられずにすんだかもしれないと考えている。
Remedyのユーザーは10分間のオンデマンド・ビデオによる遠隔診療だけでなく、「かかりつけ」の医師に随時、電話で症状を報告することができる。
遠隔診療ではOne Medicalも同様のオプションを備えている。患者は専用アプリまたはブラウザを通じてオンラインの医療ポータルにログインし、担当の医師にメッセージで症状を報告することができる。さらに患者はメッセージ・システムを用いて医師の援助を受けることができ、必要があれば現実の病院で受診することができる。JackはRemedyも将来はこうした現実の病院での医療にサービスを拡張したいと考えている。
この部分、つまり現実の病院での診療は現在の遠隔医療の大部分が欠いている機能だ。American Medical Association〔米国医師〕によれば、現在の受診の70%はテキスト・メッセージないし通話によって処理可能だという。しかし患者が現実に病院を訪れる必要がある場合も30%ある。
Jackは将来Remedyのサービスが現実の病院における医療にまで拡張された場合、One Medicalその他と直接競合することになる可能性を認めた。
しかしRemedyはスタートしたばかりだ。開発チームも参加医師も小人数だが、Jackによると、医師の一人はNFLのプロフットボール選手を診察しているということだ。いずれにせよJackはAIを利用したスマート検索シテムにより小数の医師で多数の患者を診療できるようになり、運営コストを大幅に下げることができると期待している。Remedytが実際にどれほどの効果をもたらすのか今後の成果が注目される。
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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)