チームの目標達成や事業成長を支えるOKRサービス「Resily」が5億円調達

Resilyのメンバーと投資家陣。左から3人目が代表取締役の堀江真弘氏

SaaS型のクラウドOKRサービス「Resily」を展開するResilyは2月20日、DNX Venturesとセールスフォース・ドットコムを引受先とする第三者割当増資により総額約5億円を調達したことを明らかにした。

同社では2019年2月にDNX Venturesより5000万円を調達済みで今回はそれ以来の資金調達となる。今後はプロダクトの機能拡充や顧客拡大に向け、エンジニアやカスタマーサクセスを中心に人材採用を強化していくという。

OKRを軸にチーム状態を可視化し、目標達成をサポート

Resilyは2017年8月にSansan出身の堀江真弘氏(代表取締役)らが創業したスタートアップだ。

創業から半年ほどはOKRのコンサルティングなどを通じて、いろいろなチームが目標管理や目標達成において課題に感じていることを探ってきた。そこで行き着いたのが、組織としてボトルネックにもテコにもなりえるミドルマネジメント層が抱える「チームの状態がわからない」という課題だ。

「既存のツールだけでは『チームの状態がなぜ良いのか、なぜ悪いのか』の原因が正確に把握することは難しい。チーム全体で何が起こっていて、どこにズレが生じているのか。これをシンプルに可視化して、必要な情報を流通させる仕組みが必要だと感じた」(堀江氏)

その解決策として2018年8月にローンチしたResilyは、チーム内でのOKR管理とそれにまつわるコミュニケーションをスムーズにすることで、チームの目標達成や事業成長を後押しする。

OKRマップ

マップ型のUIでチームと個人それぞれの目標(Objectives)および成果指標(Key Results)を階層に分けて可視化。会社と各部署、各メンバーの目標がそれぞれきちんと結びついているか、個人個人がどんなどんな目標を掲げていて現在どのような進捗状況なのかが一目でわかる。成果指標は問題のある箇所や達成の自信がない箇所が“信号”のように色分けされていくため、早い段階で課題を特定し対策を打ちやすい。

全体を把握した上で1つ1つのOKRについて掘り下げたい場合には「ミーティングボード」を用いる。これは各OKRごとに用意された掲示板のようなもので、目標に対するアクションやそこから得られた考えなどを蓄積していくことができる。OKRを上手く運用していくためには定期的な振り返りとアップデートが不可欠であり、それを支えるための役割とも言えるだろう。

その他マネージャー向けの機能として、各メンバーのOKRや進捗率、成果指標の変更履歴などを確認するためのダッシュボード(以前はタイムラインと呼んでいたもの)も備える。

ミーティングボード機能

ダッシュボード

事業成長を支援する「経営管理ツール」へ

Resilyではこれらの機能を月額3万円からのSaaSとして、IT系の企業を中心に累計約100社へ提供してきた。堀江氏の話では、特に上場を控えたフェーズのスタートアップや上場後のベンチャー企業をメインターゲットになるそう。導入企業の約8割はOKR未経験であり、導入や運用の伴走支援にも力を入れている。

ORKに関連するプロダクト自体は日本国内でもいくつか存在するが、人事評価の文脈でOKRを取り入れているものが多い。たとえば過去に紹介した「HRBrain」や「カオナビ」といったサービスは目標管理手法の1つとしてOKRに対応している。

一方でResilyが狙っているのは事業成長を支援する「経営管理ツール」としてのポジションだ。先月米国ではWorkBoardというスタートアップが事業を大きく成長させ、3000万ドルの資金調達に成功した。同社が手がけるプロダクトはOKR管理を軸とした経営管理ツールであり、Resilyでもこの方向性にプロダクトをアップデートさせていく方針だという。

「(WorkBoardのようなプロダクトは)経営陣や事業責任者が経営のヘルスチェックに使うツールだと捉えている。事業KPIの予実ギャップを埋めるアクションをどの部門がどのように進めているかを確認したり、注力ポイントにきちんとリソースを注げているかをチェックしたり。これはHRというよりは経営管理側のプロダクトに近く、自分たちもResilyをその方向に尖らせていきたい」(堀江氏)

そのためにはさらなる進化が必要だ。昨年の調達以降Resilyではいくつか新機能などを試したものの、なかなか仮説通りにはいかない部分もあったそう。現在もリニューアルに向けて開発に取り組んでいる。

今検証を進めているのは、データを軸にチームの課題をプロダクト側で提示する機能。今までは各メンバーが入力したKRの状況を色を使って分類していたが、今後は入力されたデータの標準偏差や平均値を用いて「今のチーム状況を踏まえると、ここに課題がありそうです」というレベルまでResilyが教えてくれる状態を目指している。

「まずは経営者がデータを基にチームの状況や課題を正しく理解した上で、ミドルマネジメントを中心に素早くメンテナンスできるような基盤を作る。その1つのアプローチとして、プロダクト側から優先的にやるべきことを教えてあげることで、スムーズに対策が進められるような仕組みを用意していきたい」(堀江氏)

チームの目標達成を支援するOKR管理サービス「Resily」が5000万円を調達

クラウドOKR管理サービス「Resily」を運営するResilyは2月13日、DNX Ventures(旧 Draper Nexus Ventures)より5000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。

近年チーム内の目標管理手法のひとつとして、OKR(Objectives and Key Results)が注目を集めている。この手法は元インテルCEOのアンディ・グローブ氏が提唱したもの。グーグルやメルカリを始め、それこそTechCrunchで紹介しているようなテック系の企業を中心に国内外で広く採用されている(ちなみにGoogleが運営する「Google re:Work」ではOKRに関するナレッジがかなり具体的に公開されている)。

OKRではまずO(Objectives / 簡単には達成できない高いレベルの目標)とそれを達成するための鍵となるKR(Key Results / 定量的な成果指標)を設定。出来上がったOKRは組織全体に共有して、お互いの状況をいつでも把握できるようにしておくこと、そして月に1回など比較的短いスパンでレビューすることがポイントだ。

チーム内でOKRを活用する場合、通常はまずチーム(会社や部署など)のOKRを設定し、各メンバーはそれに基づく形で個々の目標と成果指標を決める。そうすることで組織全体で同じ方向を向いてプロジェクトを進めることにも繋がる。

今回紹介するResilyは「マップ」「コミュニケーションボード」「タイムライン」という3つの機能を軸に、チーム内でのOKRの管理とそれにまつわるコミュニケーションをスムーズにするサービスだ。

全体のOKRをマップビューで一覧できる「マップ機能」は、中期と短期の目標の整合性を確認したり、それぞれの進捗度をパッと把握したりする際に便利な機能。単にOKRが階層状に並んでいるだけでなく、問題のある箇所や達成の自信がない箇所については赤や黄色で色付けされるため、一目で気づくことができる。

マップが高いところからチーム内のOKRの全体像を捉えるための機能であるとすれば、反対に「ミーティングボード機能」は1つ1つのOKRに関する細かい粒度のコミュニケーションを集約するための機能だと言えるだろう。

上述した通りOKRは設定したら終わりではなく、頻繁に振り返ることで初めて効果が出る。そのためには定期的に各目標に関連するアクションや気づきなどの情報を蓄積しておくことが重要だ。ミーティングボードはまさに各OKRごとの“掲示板”の役割を担い、この場所に来れば各メンバーの最新の進捗や課題、考えなどを一通り把握できる。

もし部下を持つような立場であれば、自身の進捗だけでなく部下の進捗も頻繁に確認したくなるだろう。そんなマネージャー層向けの機能が自分の成果に関連するメンバーの動向をチェックできる「タイムライン機能」だ。

ここでは各メンバーの最新動向に加え、KRの変更履歴なども見ることができる。部下がどんな課題を抱えているのか、何に悩んでいるのかをスピーディーに把握する際にも活用できるだろう。

Resilyのアイデアは、創業者の堀江真弘氏が前職のSansanでプロダクトマネージャーとして働いていた際に感じた課題をきっかけに生まれたもの。チームを横断して一緒に仕事をする際に、それぞれのチームが「何を優先事項に掲げているのか」「どんな目標を設定しているのか」を把握するのに時間がかかって大変だった経験から、その状況を改善する事業を始めるべく2017年8月にResilyを創業している。

会社を立ち上げて半年ほどはOKRのコンサルティングなどを通じて、色々な企業が目標管理をする上でどのような課題を感じているのかを探った。結果的には「お互いの目標を一箇所で把握でき、適切な意思決定をするのに十分な量の情報が集約された情報基盤」の必要性を感じ、2018年の8月にResilyをローンチした。

OKRに対応した目標管理ツールとしては以前紹介している「HRBrain」などもあるが、堀江氏いわくResilyは「コミュニケーションツールに分類されるもの」であり、人事評価などに重きを置いた他のソリューションとは方向性が異なるという。

Resilyは現在Sansanやパソナの関連会社、大手新聞社や消費財メーカーなど約50社で導入済み。今後はセールスフォースなど外部ツールとの連携なども強化しながら、プロダクトの拡充を進める計画だ。