Rocket Internetの投資先で、フードデリバリー事業を営むFoodpandaが、海外事業のさらなる処分を進めている。本日同社は、ロシアにある子会社のRussian Delivery ClubをMail.Ru Groupに1億ドルで売却すると発表した。
売却益を他の事業に投じることで「コアとなる地域にさらにフォーカスできる」とFoodpandaは話す。今回の売却は、Mail.Ruがロシアの顧客に売れるような他のサービスがないか探しているタイミングで起きた。Mail.Ruによれば、mail.ruやFacebookのようなSNSのVK.com、ICQといったサービスを通じて、同社はロシア国内のインターネット人口の94%と繋がりをもっている。
Foodpandaのロシア事業は短期間で終わりを迎えることとなった。2012年に同社はロシア市場へ参入し、2014年には現地企業のDelivery Clubを買収してロシア事業を増強したばかりだった。
Develiry Club単独での評価額は不明だが、FoodpandaはDelivery Clubが全売上の10%を占めていたと話す。さらにFoodpandaは今回の売却を成功と捉えており、彼らの言葉を引用すれば「素晴らしいリターン」を得ることができた。
しかし、Foodpandaの株式の49%を保有する親会社で、今では上場企業となったRocket Internetは、広範囲に渡る投資先の中から赤字事業を切り続けている。対象となっているのは、芽が出はじめた、もしくは成長を続ける世界中のECスタートアップだが、なかなか上手く進んでいない。なお、Foodpandaは今回の売却によって、今後20の市場でビジネスを展開することになる。
今年に入ってから、Foodpandaは他にもスペイン、イタリア、ブラジル、メキシコの子会社をJust-Eatに1億4000ドルで売却し、インドネシアを含む東南アジア事業も売却した。
さらにDelivery Clubの売却は、Rocket Internetが(いつものようにカリスマ性のある名付け方で)Global Online Takeaway Groupと呼ぶ、事業統合計画の一部でもある。その一環としてRocket Internetは、以前は競合相手であったDelivery Heroに投資し、アセットスワップも実行している。
Foodpandaのロシア事業単体が黒字であったかどうかは分からないが、一般的に言って今回の売却は、オンラインテイクアウェイ・デリバリーサービス市場で利益を増やすことの難しさ、そしてギャップを埋めるために必要な外部資金を調達するのが最近難しくなってきていることを表している。
実際にFoodpandaも「今回の売却益は、アジア、中東、東欧といったFoodpandaのコアとなる地域で、引き続き事業を拡大するために投資される予定です」と発表しており、Delivery Clubの売却は確かに自分たちで資金を調達するための手段だったとも考えられる。
そして、Foodpandaはコア地域に注力せざるを得ない状況にある。というのも、FoodpandaとDelivery Heroの関係が良化したところで、Deliveroo、Uber Eats、そして新たに加わったAmazon Restaurantsといった競合の影が既に見え始めているのだ。
Uber Eatsは、シェアライド界の雄であるUberにとって重要な新規事業で、今年の夏には新たな幹部をアジアで採用していた。
なお、Foodpandaはこれまでに外部から3億1800万ドルの資金を調達したと発表している。”発表”としたのは、Rocket Internetがインキュベーターとなったスタートアップは、資金情報を進んで公開していないため、調達額がこれ以上である可能性があるためだ。3億1800万ドルというのは、これまで公にされている調達資金の合計額ということになる。
「Deliery Clubの売却はFoodpandaにとっての大きなマイルストーンであり、市場をリードするようなフードデリバリー事業を立ち上げてスケールさせる力をFoodpandaが持っている、ということの証明でもあります」とFoodpandaグループのファウンダー兼CEOのRalf Wenzelは声明の中で語った。「私たちの事業を現地のネット業界のリーダーであるMail.Ruに移管することで、Foodpandaはアジア、中東、東欧市場での事業拡大に集中でき、結果として私たちのマーケットリーダーとしての地位を確固たるものにすることができます」
Mail.Ruは、事業の多角化および、既存のビジネスに新たなサービスを付加しようとしている同社の動きの一環として、Delivery Clubを買収した。Mail.Ruの既存ビジネスには、ロシアで1番の人気を誇るメールクライアントのmail.ruや”ロシアのFacebook”として知られるVK.com、メッセージングプラットフォームのICQなどがある。
ゲームなどのサービス以外にも、Mail.RuはGoogleやYandexからヒントを得て、巨大なカスタマーベースを利用した決済サービスの開発を行っている。
「Mail.Ru Groupがロシアのモバイル界を牽引する中、Delivery Clubの買収によって、私たちのモバイルサービスの幅がさらに広がっていくことになるでしょう」とMail.Ru Groupの会長兼共同ファウンダーであるDmitry Grishinは話す。彼は先週CEOの座から退き、今後は同グループの戦略面にフォーカスした業務を行っていく予定だ。
「フードデリバリー市場は引き続き安定した成長を見せており、私たちのネットワークやリソース、専門性と、Delivery Clubのマーケットリーダーとしてのポジションが組み合わさることで、この市場でさらなる成功を掴むことができるでしょう」
さらに興味深いことに、FoodpandaによるDelivery Clubの売却から、フードデリバリー業界の別のトレンドが浮き彫りになった。それは、もともと保有していた食品関連事業を手放すEC企業がいる一方で、同業界へ真剣に参入しようとしている企業も同時に存在するということだ。
ちょうど昨日も、AmazonのクローンのようなLazada(以前はRocket Internetの傘下にあったが、現在はAlibabaの子会社)が、Instacartのクローンのようなシンガポール企業RedMartの買収を発表した。
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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter)