国際送金APIのCurrencycloudがSBI、Visa、世銀グループなどから約87億円調達

ある国から別の国にお金を送る。年間7000億ドル(約76兆円)の規模に上る巨大ビジネスだ。企業がサービスに対してお金を払ったり、海外で働く個人が家族にお金を送ったり、何かその中間の場合もある。ロンドンのスタートアップであるCurrencycloud(カレンシークラウド)は1月26日、8000万ドル(約87億円)の調達を発表した。同社が開発した送金APIによって金融機関は自身の送金サービスを同社のプラットフォームに統合できる。調達資金を活用して金融機関へサービスを売り込み、世界各国でWestern Union(米国の国際送金大手)のようなビジネスの立ち上げを支援する。

これまでに、Currencycloudの85のAPIを使用して約180カ国間で500億ドル(約5兆5000億円)以上が送金された。APIは、インバウンドマネーコレクション(クライアントの資金回収支援)、外国為替、支払い、複数通貨を管理するデジタルウォレットサービスなどの分野をカバーしている。

CurrencycloudのCEO兼創業者であるMike Laven(マイク・レイブン)氏はTechCrunchに、同社のAPIを利用する会社は2019年末で約350社に上り、また同社は230人を雇用していると語った。だが、同社のサービスを何らかのかたちで利用したことがある人でも、まず同社の存在には気づかないだろう。

「当社と同じビジネスモデルを採用している会社は他にない」とレイブン氏は述べ、同社の顧客プラットフォームとワークフローに送金がシームレスに組み込まれた「埋め込みモデル」に言及した。「当社は顧客と競合しない。当社のブランドは表に出ない。こうしたソリューションを持っているのはまだ当社だけだと思う」

今回のシリーズEラウンドに新しく参加したストラテジックインベスターにはVisa(ビザ)、世界銀行グループのInternational Finance Corporation(国際金融公社)、フランスの銀行BNP Paribas(BNPパリバ)、SBIグループ(かつてソフトバンクから独立した日本の大企業)、タイのSiam Commercial Bank(サイアム商業銀行)が名を連ねる。レイブン氏は、このラウンドに伴い今後1年はアジアがCurrencycloudの大きなターゲットとなるため、シンガポールに新設するオフィスを拠点にこの地域で企業に送金APIを提供していくと述べた。

今回ラウンドに新たに参加した投資家のうち少なくともVisaはCurrencycloudのサービスを自社サービスに統合している。既存の投資家からはSapphire Ventures、Notion Capital、GV(シリーズDをリードした旧Google Ventures)、Accomplice、Anthemisが参加した。

バリュエーションについて、レイヴン氏は開示しないと述べた。現時点ではこだわりはないということだが、プレマネーベースで前回資金調達時よりも高いという。信頼できる情報筋によると、実際には5億ドル(約550億円)前後だ。

これは同社にとって大きな飛躍だ。参考情報として、TechCrunchは当初、Currencycloudの2019年夏の資金調達について報じた。PitchBookは当時、約4000万ドル(約44億円)の資金調達終了時点のバリュエーションを、プレマネーで1億1400万ドル(約120億円)、ポストマネーで1億8400万ドル(約200億円)と推定した。これは、シリーズEでのバリュエーションが約2億2000万ドル(約240億円)だということだ(当初の計画よりもクロージングに多少時間がかかった)。これまでに、Currencycloudは1億4000万ドル(約150億円)を調達した。

Currencycloudは2012年から活動を開始し、早い時期に送金市場でチャンスを見つけた。

世界経済のグローバル化により送金のペースが急激に上昇し、インターネットとスマートフォンの使用が拡大したことで、後者を活用する企業が市場に参入する機会が生まれた。送金サービス提供企業にはWestern UnionやMoneyGramのようなよく知られた老舗が存在するが、全体としては多数の小粒なプレーヤーで構成される市場であり、新規参入にも希望が持てる。

その上、システムが大幅に高価で非効率的だ。そのため、送金サービスを構築したい企業に対して必要なAPIを提供し、いわばレールを敷くことができるプレーヤーにとっては魅力的な機会が広がっていた(AdyenやStripeのようなeコマース向け決済とは異なる)。

すべての道がうまくCurrencycloudに通じ、ビジネス拡大につながった。これまでにCurrencycloudは、いわゆるネオバンク(またはチャレンジャーバンク、オールデジタルかつモバイルファーストのプラットフォームによって預金と貸出業務を行い伝統的な金融機関に真っ向から挑む銀行)の急増に伴い、国境を越えた送金を500億ドル(約5兆5000億円)以上処理した。Monzo、Moneze、Starling、Revolut、Dwollaなどを顧客に抱える。Visaなどの大企業も利用している。

「このようなエキサイティングなテック企業の取締役会に参加できることをうれしく思う」とVisaのSVPトレジャラーであるColleen Ostrowski(コリーン・オストロースキー)氏は声明で付け加えた。「Currencycloudは、未来のプラットフォームによって世界中の資金移動の方法を変えようとしており、国際送金業界でさらなるイノベーションを推進する大きな可能性がある」

画像クレジット:jnhphoto / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

SBIが中国・平安グループと連携、地方銀行にAIやブロックチェーンの技術を注入

SBIホールディングスは12月19日、中国の民間金融機関である平安グループ(Ping An Insurance Group Company of China)との提携を発表した。平安グループの完全子会社であるAn Ke Technologyと子会社であるOneConnect Financial Technologyと共同で、SBI OneConnect Japanを設立する。出資比率は、SBIグループが60%、平安グループが40%。世界最大級の金融グループのテクノロジーがSBIグループの力を借りて日本進出を果たすことになる。

SBI OneConnect Japanでは、SBIグループが取り組んでいる地方創生、地方銀行の活性化事業に、OneConnectのフィンテックプラットフォームをカスタマイズして提供する。平安のOneConnectは、AIやブロックチェーンを活用して、銀行や保険、投資などのサービスやツールをモバイルやオンラインで提供している企業。リリースから3年程度で、銀行は618行、保険会社は84社、そのほかの金融機関を合計すると3700社を超える企業にソリューションを提供している、中国では国内の商業銀行をはじめとした銀行の99%、保険会社の46%をカバーする。

なお平安グループのOneConnectはソフトバンク・ビジョンファンドなどが株主となっており、12月4日は、ニューヨーク証券取引所に上場。ただし、IPO時に想定された株式公開価格は当初よりも大幅に下がっているなど、現在のところ、米国市場での評価はいまひとつだ。

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詳細は追って記載する。