ソフトウェアエンジニア向けのコードレビュー支援サービス「Sider」を運営するSiderは2月13日、オプトベンチャーズを引受先とする第三者割当増資を実施したことを明らかにした。調達額は非公開だが、関係者の話を総合すると数億円規模の調達ではないかとみられる。
Siderでは資金調達と合わせて、GitHub Enterpriseに対応したオンプレミス版のSider Enterpriseを正式リリースしたことも発表。調達した資金も活用しながら大手企業への普及を目指していく。
同社は2012年にアクトキャットという社名でスタート。プロダクトも以前は「SideCI」という名称だったけれど、現在はどちらもSiderに変更している。今回の資金調達はSBIインベストメントなどから2.1億円を調達した2017年4月以来のもの。前回までの累計調達額は約2億8600万円だ。
「カスタムルール」を通じてチーム内の暗黙知を共有
Siderはコードレビューを自動化するサービス。コーディング規約違反がないか、セキュリティーやパフォーマンスの観点で問題のある書き方をしていないかなどをチェックする。標準的な規約やベストプラクティスだけでなく、「カスタムルール」機能を通じて“自分たち独自のルール”に基づいたレビューもできるのが特徴だ。
Siderによると、実にソフトウェア開発者の業務の15%以上をこの「コードレビュー」が占めているそう(Siderの利用企業に対するインタビュー結果の平均値)。このプロセスを自動化することで、業務時間の削減やソフトウェアの品質向上をサポートするのがSiderの役割だ。
現在はRubyやPHP、Java、Python、Swift、Goなどの言語に対応。Siderが開発したツールも含めて20以上の解析ツールをカバーする。現在数百社に導入されていて、企業規模はスタートアップから上場企業までさまざま。日本を中心にアメリカやイギリス、インドなど数十ヶ国にユーザーがいる。
Sider代表取締役の角幸一郎氏によると、以前までは「コードレビューの自動化」を特徴として打ち出していたが、今はそれに加えて「チーム内やプロジェクト内で暗黙知となっているナレッジを共有できるサービス」であることを訴求しているようだ。
「特定の誰かは知っているけれど、他のメンバーは知らない知識やルールをSiderに蓄積することで共有できる。それらの情報はソースコードを読めば全てがわかるようなものでもなく、社内のWikiにも書かれていなかったり、書かれていたとしても情報量が多くて埋もれてしまっていたりする」(角氏)
この“暗黙知の共有”をサポートするのが、独自のルールをSiderに取り込めるカスタムルール機能だ。
たとえば障害が起きてしまった時のコードをSiderに組み込んでおけば、次回以降は自動で検知され、再発を防ぐことができる。新しいメンバーが効率よくチーム内のルールを把握することにも役立つし、重大なミスを事前に防ぐためのチェックリスト的な役割にも使える。
角氏の話では、携わるメンバーが多い大規模なプロジェクトや、定期的にメンバーの入れ替わりがあるような組織では特に効果的ではないかとのこと。実際のところ、大手企業の担当者とも話をする機会が増えてくる中で、チーム内での情報共有に関する課題とその解決手段に対するニーズが見えてきたのだという。
エンタープライズ版もスタート、大手企業への導入加速へ
大手企業のニーズへの対応という観点では、オンプレ版のSider Enterpriseを正式にスタートする。これまでも正式にアナウンスはしていなかったものの取り組み自体は着手していたそうで、KDDIやDMM.comなどがすでに導入済みだ。
今回の資金調達を経て、プロダクトの改善や販売活動の拡大を進める計画。エンタープライズ版のリリースを機に、これまではリーチできなかったような大企業への展開にも力を入れる。
またチーム内でのナレッジの暗黙知化や属人化は「グローバルで共通する課題」(角氏)でもある。コードレビューを自動化できるツールとしては「Codacy」や「Code Climate」などがあるが、カスタムツールを軸にコードレビューの領域にフォーカスした支援ツールとして、引き続きグローバルでの普及を目指す方針だ。