オープンソースのクラウドインフラ可視化ツールを手がけるスタートアップ「CloudQuery」

開発者が複数のクラウドにコードをプッシュすると、どのインフラストラクチャを所有しているかを把握することが非常に困難になるため、通常はカスタムスクリプトを書くことが必要とされる。アーリーステージのスタートアップ起業であるCloudQuery(クラウドクエリ)は、これをもっと簡単にしたいと考え、その作業を代行するオープンソースのツールを開発した。同社は米国時間11月11日、350万ドル(約4億円)のシードラウンドを実施したと発表。このラウンドはBoldstart Ventures(ボールドスター・ベンチャーズ)が主導し、Work-Bench(ワークベンチ)、Mango Capital(マンゴ・キャピタル)、Haystack(ハイスタック)が支援した。

CloudQueryのCEO兼共同設立者であるYevgeny Pats(エフゲニー・パッツ)氏は、高いレベルでいうと「我々は、SQLで動くオープンソースのクラウドアセットインベントリー(ツール)である」と述べている。同氏は、以前起ち上げたスタートアップであるFuzzit(ファズィット)をGitLab(ギットラブ)に売却して、複数のクラウドプラットフォームで仕事をしていたとき、クラウド間のインフラをレイアウトしたり、すべてのピースがどのように組み合わされているのかを把握するのに苦労していたと語る。

さらに同氏が驚いたのは、そのために役立つオープンソースのツールが見当たらなかったことだ。HashiCorp(ハシコープ)のTerraform(テラフォーム)のように、インフラをコードとして書いている開発者が持っている種類の可視性を与えてくれるソリューションは存在しないように思われた。

そこでパッツ氏は、優れた起業家ならば当然やるべきことをやった。そのツールを作ることに着手したのだ。

「私が新たにCloudQueryを起ち上げて目指そうとしたのは、そのようなプラットフォームです。開発者がビジネスとセキュリティの目的を達成するために、新しいクエリエンジンを学ぶ必要がなく、知っているSQLを使って、ビジネスとセキュリティのロジックだけに集中できるようなエコシステムを構築したいのです」と、パッツ氏は説明する。

同社のツールは9カ月前に発表されたばかりだが、パッツ氏はこの問題を抱えているのが自分だけではないことを知った。すでに、Bloomberg(ブルームバーグ)、Salesforc(セールスフォース)、Zendesk(ゼンデスク)などの大手企業が導入し、スクリプトを書く多くの手作業に代わるツールとして使い始めている。

「(2021年の初めに)GitHub(ギットハブ)で公開してHacker News(ハッカー・ニュース)で発表したところ、3カ月も経たないうちに多くの開発者、DevOps(デブオプス)エンジニア、SRE(サイト・リライアビリティ・エンジニア)からかなりの支持と採用を得られたので、このオープンソース・プロジェクトの拡大と発展を続けるために、資金を調達してその機会を倍増させることに決めました」と、パッツ氏は述べている。

マネタイズの観点から、パッツ氏まず、コミュニティを構築したいと考えている。この製品が軌道に乗れば、オープンソースツールの使用にともなう複雑さを最小限に抑え、企業顧客向けにいくつかの特別な機能を提供するSaaSバージョンを構築する計画だ。

同社の従業員数は現在11名で、2022年の第1四半期までに14名に増やすことを計画している。オープンソースであるということは、コミュニティからの助けも得られるため、より無駄のない運営ができるということだ。また、パッツ氏によれば、完全なリモート企業であることは、より多様な人材を育成することに役立つが、雇用市場は厳しいため、よりチャレンジングであるという。

パッツ氏は、同社を完全なリモート企業として維持していく方針で、GitLabで働いていたときに学んだいくつかの教訓を、自分の会社で実践していくつもりだという。その1つが、適切なタイムゾーンでチームを構成することだ。世界中に人が散らばっていると、適切な時間にミーティングを行うことが難しくなるからだ。

画像クレジット:CasarsaGuru / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Cockroach Labsがサーバーレス版SQLデータベースを発表

米国時間10月19日、CockroachDB(コックローチDB)を開発しているCockroach Labs(コックローチ・ラボ)が、開発中のSQLデータベースの新しいサーバーレスバージョンのパブリックベータ版を発表した。これにより、開発者は明示的に定義することなく、スケールアップ / ダウンするデータベースリソースを簡単に使えるようになる。

共同創業者でCEOのSpencer Kimball(スペンサー・キンボール)氏は、その目標は開発者の複雑さを軽減すると同時に、きめ細かな価格体系を提供することだとしつつ、次のように述べている。「(サーバーレス製品は)開発者たちの事前の決定事項を減らします。これはとても重要なことです。しかし、もう1つの大きなメリットは、きめ細かな使用量に応じた課金が可能になり、使用した分だけ請求されるようになることです」。

データベースに対するサーバーレスのアプローチが重要な点は、開発者が行うキャパシティプランニングやそれに関連するすべての作業が不要になるところだ。つまり、アプリケーションを実行するために必要なノード数やマシンタイプを予測する必要がなくなるということだ。その代わりに、Cockroachのサーバーレスデータベースを指定するだけで、ワークロードを実行するために必要なだけの量のリソースを提供してもらえる。ワークロードが必要としないときには、1つのノードを完全に使うことさえしないかもしれない。

この動作にはリソースの共有も含まれているが、個別のデータはバックエンドで常に隔離されているとキンボール氏は指摘する。「実データが暗号化されていない重要な部分は、個別の開発者やユースケースから完全に隔離されています。このように隔離は行われつつも、バックエンドではデータの保存と検索のためのタスクが多数のマシンで共有されており、リソースを効率的に利用することができるようになっています」と彼はいう。

そして、このようにリソースを効率的に共有することで、開発者がアプリケーションを構築する際に、実際に軌道に乗るまではお金を払わなくてもよいような、寛大な無料プランを提供できるようになったという。さらに、ワークロードが急増した場合には、必要に応じてリソースを自動的に増減させることが可能だ。また、容量管理を自動化する際の重要なポイントだが、リソースの使用量が支払い能力を上回らないように制限をかけることができる。

キンボール氏によれば、無料プラン版から有料プラン版に移行するまではクレジットカードの提示は求めないので、アプリケーションが急激に成長を始めても請求書に驚くことはないという。彼は無料プランを「寛大」と表現しているが、価格プランの正確な詳細はまだ検討中だ。

このサーバーレス製品は、米国時間10月19日よりパブリックベータ版の提供が始まる。

Cockroach Labsは2015年に創業された。Crunchbaseのデータによると、これまでに3億5500万ドル(約405億5000万円)以上を調達している。直近の資金調達は、1月に20億ドルの評価額で行われた1億6000万ドル(約182億8000万円)のシリーズEだ。

画像クレジット:onurdongel/Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:sako)