ボーイングはNASAのStarlinerミッションの再実行に備えて約447億円を確保

ボーイングは米国時間の1月29日、第4四半期の業績を発表した。その中には、Commercial Crew(商業乗員輸送)ミッションを再度実行する場合の費用をまかなうための4億1000万ドル(約447億円)の留保が含まれていた。昨年の12月のミッションが計画通りに遂行できなかったことを受け、NASAがもう1度無人打ち上げが必要だと判断した場合に対応するためだ。

この税引前の費用は、その四半期の全体的な営業利益の0.5%の減少に相当するとされる。ボーイングは、この資金を実際に支出するかどうかは、NASAの決断しだいだとしている。つまり、実際に宇宙飛行士が搭乗して飛行する前に、Commercial Crewに関する契約条件を満たすため、ボーイングはやり直しの飛行を実施する必要があるとNASAが判断するかどうかにかかっているわけだ。

「NASA​​は、もう1回無人打ち上げが必要かどうかを判断するため、2019年12月のミッション中に受信したデータを評価している」と、ボーイングの四半期報告書には記されている。

前回の打ち上げでは、完全に自動でISS(国際宇宙ステーション)にドッキングする予定だったがが、搭載されたミッションタイマーの誤作動によって、Starliner(スターライナー)カプセルは予期せず過剰な燃料を燃焼させ、最終的にISSへ計画通り到着することができなかった。やむなく、NASAとボーイングはカプセルを早期に着陸させることにして、ドッキングのデモを除く他のテストを完了させた。

Ars Technicaの最近の記事によれば、NASAはそのミッション中に、スラスターの性能についても懸念を抱いていたという。しかし、NASAもボーイングも、これまでのところ、実際に乗員をStarlinerに乗せる前に、もう1回の無人飛行が必要かどうかを判断するのは時期尚早だと言い続けてきた。

Commercial Crewプログラムへの参加者でもあるSpaceXは、昨年3月に「Demo-1」と呼ばれる無人のISSドッキングミッションを遂行した。自動ドッキングも、宇宙船を地球に帰還させることも計画通りに成功した。SpaceXも、昨年の静止噴射テストの際に、Crew Dragonが破壊されるなど、それなりに失敗を経験してきたが、今月初めに飛行中の中止テストが成功したことで、重要な乗員飛行のデモの前に必要となるすべての材料を揃えることができたようだ。乗員飛行は、早ければこの春にも実現したいとしている。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

NASAが有人宇宙飛行再開に向け12月20日にテスト機を打ち上げへ

NASAとボーイング、ボーイングとロッキード・マーティンの合弁宇宙事業であるULAは12月20日に、米国の有人宇宙飛行再開に向けた重要な打ち上げを予定している。OFT(軌道飛行テスト、Orbital Flight Test)はボーイング製のCST-100 Starlinerと呼ばれる乗員カプセルをULAのAtlas Vロケットで打ち上げ、ISS(国際宇宙ステーション)にドッキングさせる。これは有人宇宙飛行に向けた最後のテストの1つだ。

今週のミッションの目的

気象条件その他が許せば、現地時間で12月20日にULAのAtlas VがボーイングのCST-100カプセルを打ち上げる。このテストは簡単にいえば、来るべき有人飛行テストCFT(Crew Flight Test)のためのドレスリハーサルだ。OFTはもちろん極めて重要な打ち上げだが、ボーイングのStarlinerカプセルが実際の有人飛行を行うにあたっては、パラシュートシステムの信頼性テストをクリアしなければならない。また今回の打ち上げで得られたデータがすべて予期どおりであることを確認する必要がある。

【略】

今回のミッションではStarlinerカプセルはAtlas Vロケットの先端に取り付けられて高度180kmまで上昇し、そこでロケットから切り離され、カプセル自身のエンジンでISSに向かう。ISSの宇宙飛行士がカプセルをモニターし、ロボットアームでドッキングの最後の段階を助ける。ミッションとしては二次的重要性だが、カプセルには270kgの補給物資、装置が搭載されている。ペイロードがISSに移された後、カプセルはドッキングを解かれ、地球に帰還する。

ローンチ・ウィンドウ

打ち上げは米国東部時間12月20日午前6時36分(日本時間12月20日午後8時36分)にケープカナベラル空軍基地のSLC-41から発射される。天気予報は「80%程度可能」ということだ。

ローンチ・ウィンドウと呼ばれる打ち上げ可能な時間は予定時刻のみに限られており、この時刻になんらかの支障が起きれば21日ないし23日の予備日に切り替えられる。予定どおりに打ち上げられた場合、カプセルは翌日朝にISSにドッキングする。切り離しは28日に予定されている。帰還も今回のミッションでは重要な部分だ。

近づく有人飛行再開

すべてが計画どおり順調に進めばStarliner CST-100カプセルは有人宇宙飛行に向けて大きく前進する。上で述べたようにパラシュート・システムは安全規定をクリアするためにさらにテストが必要だが、各種のシステムの安全性が確認されれば、最初の有人飛行であるCFTミッションは「2020年の早い時期」に行われる予定だ。

米国時間12月18日に、ULAは移動式発射台をロールアウトし、Atlas Vロケットを発射予定地点に運んだ。NASA、ボーイング、ULAのエンジニアは発射のための最終調整に入っている。発射準備は2週間前からスタートしており、実際の発射を除くすべての手順がリハーサルされた

TechCrunchでも発射のもようをライブで中継する予定だ。またその結果についても情報を得しだい記事を公開する。

【Japan編集部追記】CST-100カプセルの着陸はニューメキシコ州ホワイトサンズ空軍基地をはじめ、米国本土西部の5カ所が候補となっており、9月に着陸テストが実施されている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ボーイングのStarliner宇宙船とAtlas Vロケットがテスト飛行前リハーサルを完了

Boeing(ボーイング)と打ち上げパートナーのUnited Launch Alliance(ユナイテッド・ローンチ・アライアンス、ULA)は米国時間12月7日、商用宇宙船による米国の宇宙飛行士の打ち上げに向けた重要な一歩を踏み出した。フロリダ州のケープカナベラル空軍基地の第41発射施設では、ULAのAtlas Vロケットの上にBoeingのCST-100 Starliner宇宙船が搭載され、ロケットに燃料が補給され、乗組員全員が「integrated Day of Launch Test」と呼ばれるリハーサルに参加した。

このリハーサルは、NASAやULA、Boeingが12月20日(12月19日から変更された)に予定されている、宇宙飛行士が搭載しない状態での初の軌道上飛行試験(OFT)につながるものだ。本日のテストには、実際の打ち上げに至るまでのすべてのステップが含まれており、その中には打ち上げのカウントダウン、クルーカプセルへのアクセスハッチの準備、チェックなどもある。

この種の予行演習は、宇宙船の打ち上げでは標準的なもので、誰が何をいつすべきかを確認し、また実際の環境で想定どおり機能するかを実証する。特に、今回のリハーサルは重要だ。なぜなら、個別にテストを実施することはできるが、すべてを一緒に動かすまでは、どのように動作するのかは正確にはわからないからだ。

前述のように、来年初めに予定されている打ち上げ準備のために、次にOFTが実施される。現在の日程は12月20日なので、すべてが計画通りに進めば、年末までにはボーイングとそのパートナーの目標が達成される。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

ボーイングのStarliner宇宙船の発射台緊急脱出テストが成功

NASAの商業乗員輸送計画のパートナーであるBoeing(ボーイング)は、CST-100 Starlinerに実際に宇宙飛行士を搭乗させるための、重要なマイルストーンを達成した。発射台からの緊急脱出装置のテストは、宇宙飛行士をStarlinerに搭乗させる前に設置しておく必要がある、NASAが要求する重要な安全システムだ。

Starlinerのデモミッションでは、実際の有人打ち上げ時にULA(ユナイテッド・ローンチ・アライアンス)のAtlas Vロケットの上に、どのように設置するかをシミュレートすることから始まった。そして緊急脱出用のエンジンを点火すると、Starlinerとそのサービスモジュールはロケットから安全な距離まで飛行した。問題は3つあるパラシュートのうち2つしか展開されなかったことだが、NASAが定義する安全性設計はこのような可能性も範囲内として想定している。

このシステムの必要性は、ボーイングとNASAによって非常に「ありそうにもない」シナリオとして記述されているが、ボーイングとNASAは、ボーイングとSpaceX(スペースX)の新しい宇宙船における安全性を強調している。

宇宙船にはセンサーが設置されたテスト用のダミー人形が搭載されており、アクシデント時に緊急脱出装置によってStarlinerに搭乗した宇宙飛行士が、どのような衝撃を体験するのかについての、詳細なデータを両社に提供する。これは、第3のパラシュートが展開されなかった理由を調査することと同じく重要な情報である。

ボーイングは12月に、有人飛行の前段階として無人のStarlinerを初めてISS(国際宇宙ステーション)に打ち上げる予定だ。今後の予定は、テスト結果の調査にもとづいて決定される。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

NASAとボーイングがStarliner宇宙船の発射台からの緊急脱出システムテストをライブ配信

NASAの商業乗員輸送プログラムに参加するBoeing(ボーイング)社は、早ければ来年にも米国の宇宙飛行士を国際宇宙ステーション(ISS)へと輸送するために開発した新しい宇宙船「CST-100 Starliner」の重要なテストを、米国時間11月4日に実施する予定だ。

Starlinerは発射台からのアボート(緊急脱出)試験を実施予定で、打ち上げ前の万が一に備えて搭載したエンジンを使い、宇宙船をロケットから迅速に避難させるシステムを実証する。テストは米国東部標準時で午前9時(太平洋標準時で午前6時、日本時間午後11時)に開始され、テストのウィンドウ(実施予定時間)は3時間が設定されている。

予定では、ニューメキシコ州のホワイト・サンズ・ミサイル発射場の小型テスト発射台に設置されたStarlinerは、高度4500フィート(約1400m)に到達したのち、発射地点から約7000フィート(約2100m)離れた地点に着陸する。宇宙船のサービスモジュールとベース部分の熱シールドが宇宙船から分離し、カプセルはパラシュートで地上に降下し、エアバッグを展開して衝撃をさらに緩和する。下のアニメーションでは、テストの概要が確認できる。

このテストで重要なのは、完全に静止した状態から宇宙船がロケットを離れ、パラシュートを展開するのに十分な高度に到達する能力を実証することだ。NASAはBoeingとSpaceX(スペースX)に、宇宙飛行士が搭乗するミッションを開始する前に、発射台からの緊急脱出テストを成功させることを要求している。

民間乗員輸送計画のパートナーであるBoeingとSpaceXは、早ければ来年前半にも宇宙飛行士を搭乗させた宇宙船の打ち上げを予定している。NASAは2011年にスペースシャトル計画が終了して以来、宇宙飛行士の輸送をロシアのソユーズロケットに頼ってきたため、アメリカから打ち上げられるロケットで宇宙飛行士をISSに打ち上げる能力を再び得るために、両社と協力している。

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(翻訳:塚本直樹Twitter

ボーイングの商用有人宇宙船Starlinerの初テストは8月に延期

一般人を対象とした商用宇宙旅行計画の進展は我々と宇宙の関係を一変させる可能性があるが、その一番乗りの栄誉はSpaceXが今年中に手にするかもしれない。最大のライバルであるボーイングがStarlinerシステムのテスト飛行を延期したからだ。無人飛行テストの第1回目はこの5月に予定されていたが、8月に延期されたことを米国時間4月2日、ボーイングが確認した。

Starlinerのテスト飛行延期の情報が浮上したのは先月だった。この時点ではボーイングは「Starlinerが利用する打ち上げ施設の日程が立て込んでいる」ことを確認するにとどまった。実際、Starlinerの打ち上げに適する「ウィンドウ」は5月には2日しかない。Starlinerを割り込ませれば国家安全保障上重要なAEHF5軍事通信衛星の打ち上げに支障をきたすおそれがあった。

宇宙事業でのスケジュールの遅れはいやというほど繰り返されてきた。世界の宇宙事業各社が独自の宇宙基地や発射施設を保有ないし建設しようとしているのはこれが理由だ。衛星発射の回数が増えれば発射施設の能力も拡大される必要があるというのは当然だろう。しかし独自基地の建設には莫大なりソースを必要とする。多くの事業者にとって、(米国東部にあるロケットセンター)ケープ・カナベラルの発射施設を利用する以外選択肢がない。

ただし、ボーイングが本当に5月に打ち上げを実施するつもりだったら、打ち上げロケットとStarlinerカプセルは現在よりはるか前にケープ・カナベラルに到着していければならなかったとNASAの宇宙飛行部門が指摘している。テストに必要な機材がケープ・カナベラルに来ていなかったということは打ち上げ延期が決定されたのがかなり以前であることを示唆する。ボーイングとロッキード・マーティンの共同宇宙事業であるUnited Launch Allianceは、すでにテスト発射準備を中止していた。つまり昨日の延期発表は誰もが知っていたことを再確認したにすぎない。

8月の無人テスト飛行が成功すれば、11月には有人テストが可能になるだろう。しかしStarliner計画はすでに何年も遅れており、今回もまた遅れが加算されることとなった。しかもボーイングに比べればはるかに若いライバルがすでに無人宇宙飛行テストに成功していることはさらなる屈辱だ。

SpaceXは有人飛行を7月に予定しているのでボーイングは悔しいかもしれない。しかし実情は、こうした事業は慎重さの上にも慎重さを重ねる必要があり、必要なだけの時間をかけるべきだ。この点、ボーイングの決断は正しい。なるほど一番乗りを逃がせば、会社の評価にとって追い風にはならないかもしれない。しかしそれは今後明らかになるStarlinerの能力、信頼性によって十分取り返せる。

別のプレスリリースでNASAとボーイングはStarlinerには研究、メンテナンスのためのミッションが追加されることを発表した。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook