AppleのCEO、ティム・クックは Irish Independent紙のインタビューに答えて、Appleの人気商品、iPadとMacbookという両ハードウェアをハイブリッド化するつもりがないことを明言した。クパチーノではSurfaceシリーズのようなタブレットとノートを混合した製品を開発するつもりがないということだ。クックは「二つのデバイスのユーザー体験を混合することは双方の体験を損なう」と述べてライバルのMicrosoftのアプローチを批判した。
Microftはご承知のとおり、最近Surface Bookを発表している。これはまさにノート・パソコンとタブレットのハイブリッドで、iPadをエンタープライズ・デバイスの王座の地位から蹴落とすのが目的だ。一方、Appleは消費者人口も勘案して大型のiPad Proに賭けている。
クックはIndependent紙に対して次のように激しくミックス製品を否定した。「消費者はMacと iPadのミックスなど欲しがらないと確信している。双方ともに消費者が望み得る最高の体験を提供しているので、両者を混合することはユーザー体験を損なうばかりだろう。われわれは世界でベストのタブレットと世界でベストのMacを提供していく。両者を混合することは悪しき妥協にすぎない」
この発言は今月初めにiPad Proの発表を受けてそのPRのためにThe Telegraph紙に対して述べた内容に沿うものだ。前回、クックは、タブレットの強力化の進展にともなって、パソコンの役割は低下していくだろうという見通しを主張していた。
しかし今回のインタビューでクックは明らかにMacではなくWindowsパソコンについて述べている。「われわれはMacとパソコンを同じカテゴリーの製品とは考えていない。われわれのMacとiPadのチップセットは最近、類似点が増えてきたが、両者のデザイン思想とユースケースは全く異なる」とクックは語った。
「われわれはiOSとMacをユーザーがどのように使っているか正確に認識しなければならない。それによってAppleは両者があらゆる場面でシームレスに協調して作動するためにどんな機能を付け加えるべきか知ることができる。われわれのHandoffのような連携機能によって、ユーザーはある時点で作業を中断し、必要に応じて別のデバイスを開いて作業を続行することが今までになく簡単になった」とクックは付け加えた。
しかしTechCrunchのMicrosoft当番、Alex Wilhel記者はこうした主張に完全に納得していない。先日のSurfaceのレビュー記事でWilhelm記者は「Surface Pro 4はWindows 10を得て最良のタブレットになった」と書いている。
一方でTCのAppleウォッチャーでもあるMatthew Panzerino編集長は iPad Proのレビュー記事で、コンピューティングは単なるデバイスの優劣によるソリューションを超えた「微妙なグレーのニュアンス」を判別しなければならい領域へ進みつつあると書いている。Panzarinoは「『パソコンは死んだ』というような断言はもっと大胆な人々にまかせておく。しかし一部の、しかしコンピューティングの一つの標準を作るに足る数の人々にとって、iPad Proはいつも使っているスマートフォンの弱点を完全に補うデバイス、つまりこれこそ真のコンピューターに映るだろう」と予想している。
ハイブリッド・デバイスというコンセプト自体は決して新しいものではない。Androidデバイスにはスマートフォンとタブレットの中間ないし設定しだいでパソコンとタブレットの両方に使える製品が何年も前から市場に出ている。 しかしMicrosoftのアプローチが注目されるのは、全デバイスで OSを統一的に作動させようと努力を続け、Windows 10でついに成功したことだ。これはAppleがデータとアプリの互換性は保証されるものの、タブレットとコンピューターを峻別してきた方針と大きく異る。
言うまでもなく、コンピューティングのハードウェアを2種類にはっきり区分しておくことは、本質的にハードウェア・メーカーであるAppleの基本戦略に合致するものだ。逆にOSを統一化し、作動するハードウェアの統一化を図るのは、クパチーノへの有効な直接的攻撃になるとして、長年のライバルであるMicrosoftの基本戦略の重要な柱となっているのだろう。
しかしメーカーがOSを統一するということは必ずしも全ユーザーがそれを好むことを意味しない。「ソフトウェアが世界を飲み込む」というのは長い目で見たトレンドとして正しいかもしれないが、それがAppleのビジネスにどのような影響を与えるかはまだ不明だ。
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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)