ソーシャル旅行のtrippieceが英語版サイトを公開、アジア圏のインバウンド需要をねらう


口コミサイトの「Yelp」が日本参入を発表した際にも、2020年に開催される東京五輪について触れていたが、これからはインバウンド(訪日外国人旅行者)需要を見越したサービスが増えてくるはずだ。たとえば「Airbnb」なども自らがメディアへ露出することは少ないが、国内で数度ユーザーイベントを開催していると聞いている。

そんな中でtrippieceが提供するソーシャル旅行サービスの「trippiece」も、インバウンド需要を狙った英語版サイトの提供を開始した。まずはアジア圏を対象に、サービスの認知を図る。

英語版は「最初から考えていた」

「(英語版は)最初から考えていた」と語るtrippiece代表取締役の石田言行氏。同社では、2014年1月にシンガポール法人を設立。現地スタッフも採用し、英語版の本格的な展開を進めてきた。

英語版でも日本語版と同様に、ユーザーが旅行の企画を立案したり、ほかのユーザーの企画に参加し、trippieceが旅行代理店と交渉するなどして実際の旅行を催行するという仕組みは同じだ。ただし当初は、同社のスタッフやヘビーユーザーが中心となって旅行を企画する。ユーザーが旅行を企画する機能についても段階的に解放していくという。また、基本的に旅行の内容は日本国内に限定しており、「現地集合現地解散」となる。これは、ユーザーが複数の国と地域から日本に訪れることを考慮しているという。

日本政府観光局によると、2003年以降の10年間で訪日外国人旅行者数はほぼ倍増。2013年には1036万人と、1000万人の大台を突破したことで話題となった。前述の東京五輪の開催や「和食」のUNESCO無形文化遺産登録などによって訪日需要が高まることが見込まれる。

石田氏はこれに加えて「官公庁も2015年までに訪日旅行者2000万人を目標に掲げている。また2013年はタイ、マレーシアのビザ免除で旅行者が増えたが、今後はインドネシア、フィリピン、ベトナムもビザが免除される。今後市場が伸びていくのは間違いない」と語る。さらに「日本は治安自体はいい国。地方だと英語が通じないケースがあるが、ニッチな企画も主催できる。強みは代理店では作れないような企画にある」と続けた。

国内事業も好調

現在trippiece国内のユーザーは約8万人。「決して多くがないが、『ファン』にまでなってくれるユーザーが多い。1万人くらいのアクティブなファンがいるので、ベースは作れたと思っている」(石田氏)。絶景と言われるボリビアのウユニ塩湖などには、これまで合計700人のユーザーがtrippieceを通じて旅行をしているそうだ。

またユーザーが自分たちで「写真部」といったようにコミュニティを作り出して、みんなで海外旅行に行ったりしているのだという。「これは僕らとして嬉しいこと。オンラインとリアルの両方でコミュニケーションできるようになってきた。特に100〜200人のコアユーザーが旗振り役になってくれている」(石田氏)

ビジネス面でも好調だという。2月は過去最高となる売上高5000万円を記録。季節要因も相まって、3月にはさらに売上を伸ばしているという。「ユーザー数は少ないながら売上は出ている。マスを取らないと生き残れないサービスではない。またリピーターが7割と多いのも特徴」(石田氏)。ユーザーの中心となるのは25歳〜35歳の独身女性で、ある企画では7割が女性、平均年齢で27.7歳というものもあったという。

余談だがこの数字を聞いて、僕は「結果的にある種のマッチングサービスとしても機能しているのではないだろうか」という疑問を石田氏に尋ねてみた。するとやはり旅先でカップルになるユーザーもいるというのことだった。

話を戻すが英語版trippieceでは、10月までに訪日旅行者1000人を目指す。当面はテスト運用と考えており、ユーザーの動向を見て来期以降の目標を決めるとしている。


LIGが新会社を立ち上げて挑戦するのはアクティビティのCtoCプラットフォーム「TRIP」

Twitterで1万件以上シェアされた2012年の人材募集「伝説のウェブデザイナーをさがして…」をはじめとした自社メディアの運用や、数多くのウェブサイト制作やコンテンツマーケティングで知られるウェブ制作会社LIG。いつも世間を驚かせたり、笑わせたりしてくれる仕掛け作りを企んでいる同社だが、今度はCtoCのプラットフォーム作りに挑戦する。

LIGの100%出資子会社であるTRIPは4月8日、アクティビティの提供会社や個人と旅行者をマッチングするプラットフォーム「TRIP」を公開した。

TRIPでは、アクティビティ(観光地での遊び、観光商品)を販売したい事業者や個人向けにストアの立ち上げから商品の登録、決済までの機能をワンストップで提供する。事業者からは10%の手数料と3%の補償料を、購入者からは5%の利用料を徴収する。アクティビティ体験中の購入者の事故などには、最大1億円までの対人、対物補償をするという。今後は任意で入院や携行品の補償なども用意する。

アクティビティの予約サービスとしては、すでに最近資金調達を発表したばかりのカタリズムが提供する「あそびゅー!」などがある。そんな中でTRIPでは、「アクティビティの提供者がストーリーを伝えられる作り」にこだわったという。

商品登録や決済といったCtoCコマース(TRIPでは個人よりもまずは中小企業をターゲットにするとのことだが)に必要な基本機能だけでなく、写真とブログライクなテキストエディタで実際に商品を体験した様子などを手軽に公開できるようにした。TRIPの代表で、LIGの取締役副社長である吉原ゴウ氏は「旅行のパンフレットを見たところでワクワクしないこともある。金額や工程表だけでは伝えられなかった、作り手の熱意のある観光商品を紹介して欲しい」と語る。

また、総合旅行業や旅行関連のコンサルティングを手がける観光販売システムズ(KHS)と提携。リーガルチェックで協力するほか、KHSがネットワークする15県2府道計60以上の自治体に対してTRIPの活用を訴求するという。

吉原氏は、冒頭の人材募集をはじめとして、LIGの“おもしろ系”コンテンツの仕掛けを作ってきた人物。そんな同氏の実家は、長野県の野尻湖周辺でアクティビティを提供しているのだという。「僕らが生まれ育ったのは野尻湖。でもどんどん寂れてきている。田舎出身だからこそ、観光を軸にして地域活性ができないかと考えた」(吉原氏)。そこで同氏の幼なじみが勤めるKHSと連携。2014年3月にTRIPを設立し、サービスを提供するに至った。

KHSではこれまでも地方自治体の観光課と連携して「VISIT」というサイトを立ち上げ、アクティビティの商品企画や在庫管理を手がけてきている。今後はそのネットワークを使い、地方自治体を経由してTRIPへの商品登録を促していく。

5月をめどにTRIPと連携するメディアも公開する予定だ。TRIPに掲載されているアクティビティを体験したライターらが記事を掲載することで、商品購入を促す。「自社ブログや(FOXと共同運営の)エンタメウス温泉JAPANなど、自社で手がけてきたメディアのノウハウを投下していく」(吉原氏)
同社では、2014年度内に47都道府県をカバーし、登録商品1万件、登録者10万人までの拡大を目指す。