マネーフォワードがクラウド会計に参入、専門知識不要の自動入力サービス

日本には2000万人超の確定申告者がいると言われているが、申告手続きはいまだ面倒な手書きが中心。法人の会計業務も手作業が多く、専門的な会計知識が求められる。マネーフォワードが29日に公開したクラウド会計サービス「マネーフォワード For BUSINESS」は、確定申告や会計業務の手作業を極力減らして自動的に入力することで、会計知識が不十分な人でも使えるというサービスである。(先日開催したTechCrunch Tokyo 2013のスタートアップバトルで初披露し、PR TIMES賞を獲得している。)

そもそもマネーフォワードは、銀行やクレジットカードなどの複数口座を一括で管理し、入出金情報を自動入力してくれる家計簿・資産管理サービス「マネーフォワード」を提供するスタートアップだ。同サービスは入出金情報を「食費」「日用品」「交通費」といった項目に自動分類、自分で入力する手間を大幅に省略してくれるのが特徴。家計簿に挫折したり、日ごろ忙しくて家計簿が付けられなかった人に多く使われているのだという(関連記事:“挫折しない”家計簿サービス「マネーフォワード」が5億円調達)。

マネーフォワード For BUSINESSは、既存サービスと同様に1300以上の金融機関から自動で明細を取得。専門的な会計知識が求められる仕訳は、入出金データの文言をもとに自動で実行してくれる。勘定科目が間違っている場合は、プルダウンメニューから正しいものを選べば修正できる。請求書作成や自動消し込みにも対応している。経営状況を把握するツールとしては、キャッシュフローや収益費用の内訳をグラフでレポートする機能がある。マネーフォワードで利用していた入出金データも引き継げる。

会計知識が不十分な人でも簡単に使えるように――。こうした考えのもとに開発したマネーフォワード For BUSINESSでは、難解な会計用語を平易な言葉に置き換えている。一例としては、「仕訳を切る」を「取り引きを登録する」と言い換えたり、「消費税の経理方式」といった取っ付きにくい用語はポップアップ画面で解説するとともに、「税込を選択すると会計業務がよりシンプルになります」といったアドバイスまでしている。

競合となるプロダクトとしては、パッケージソフトで大きなシェアを占めている弥生の「弥生会計」や「青色申告」、同じクラウド会計サービスとしては、2012年のTechCrunch Tokyoのスタートアップバトルでデビューした「freee」がある。

パッケージ型会計ソフトの多くはMacに非対応なので、会計ソフトのためだけにWindowsを購入する人もいるようだが、マネーフォワードはブラウザ経由で使うためOSや端末を問わずに利用できるのが強み。とはいえ、クラウド会計サービスは日本でも始まったばかりとあって、即座に会計ソフトのユーザーを取り込むのではなく、当面は新たに創業したり、既存のソフトに不満を持っていたり、青色申告をする個人をターゲットとするようだ。

サービス開始1年後の目標としては、1万5000ユーザー獲得を掲げている。2014年1月まではベータ版として無償提供し、正式版移行後は個人は月額980円、法人は月額1980円で提供する予定だ。正式版リリースに向けて、決算書類の作成機能や消費税変更への対応も進めていく。


投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。