モバイルが盛り上がりに欠ける中、地味なMWCが閉幕

先週、奇妙なMWC(Mobile World Congress、モバイルワールドコングレス)になりそうだとの記事を書いた。「奇妙」というのは、今までの常識を超えて、すべてが「奇妙」になるという意味だ。世界的なパンデミック時に開催される2度目のショーであることに加え、スマートフォン業界が大きな変化を遂げたからだ。

前回の記事の内容を、簡単に箇条書きで紹介する。

  • 人々のデバイスのアップグレードの頻度が減り、他の場所にお金を使うようになった
  • サプライチェーンの問題やチップ不足が足を引っ張っている
  • LGとHTCは携帯電話の製造を中止し、劇的に縮小した。しかし、後者は少なくとも、ある流行語(ブロックチェーン)から別の流行語(メタバース)へと 飛び移る準備ができている
  • Huawei(ファーウェイ)は制裁を受けて一歩退いた立場に
  • Samsung(サムスン)やApple(アップル)といった企業は、今や自身のイベントに依存している
  • その結果、中国市場はXiaomi(シャオミ)をはじめとする多数のBBK(歩歩高)傘下企業に開放された
  • Qualcomm(クアルコム)は大型のSnapdragon(スナップドラゴン)チップを発表し、この技術を搭載した最初のデバイスの開発を各社を競わせている。

これらは、事実上スマートフォンの展示会となっていた同イベントにとって、逆風となっているように感じられる。個人的にはMWCは本来の姿であったB2B / ネットワーク / キャリアの展示会に戻る運命にあるのではないかと考えていたが、今週のバルセロナでは、ほぼその通りの展開になったようだ。

消費者にとって間違いなく2大ニュースとなる製品がSamsungのGalaxy Book 2 Proと Lenovo(レノボ)のThinkPad X13sという、どちらもノートPCであることは、表向きはスマートフォンの展示会となっている雰囲気にとって刺激的なものとはいえない。Huaweiもまた、電子書籍リーダー / タブレットのMatePad PaperとMateBook X Pro(#notMacbook)という2種類の携帯電話ではないデバイス(#notphones)で、ちょっとした話題作りに成功した。

ショーの直後、私はHuaweiのCTOであるPaul Scanlan(ポール・スキャンラン)氏に、米国の制裁によって同社がGoogle(グーグル)やQualcomm(クアルコム)のような巨大企業へのアクセスが遮断され、消費者向けの努力が妨げられたことを受けて、舵取りを余儀なくされた同社の計画について質問した。彼の答は以下のようなものだ。

その他の、電源管理、バッテリー、HarmonyOS層のソフトウェアなどで差別化を図っています。また、コネクテッドトレッドミル、コネクテッドバイク、コネクテッドテレビ、コネクテッドスピーカー、コネクテッドエアコン、コネクテッド心拍計などの、あらゆる要素をつなぐHarmony(ハーモニー)を、AppleやGoogleなどのエコシステムから差別化しようとしています。

【略】中国国内ではまだ好調です。海外では、GMS(Google Mobile Services)やiOSのエコシステムといったものと差別化できる機能が必要な場合がありますが、これは当社にとっては難しいことです。そのため、コンシューマービジネスグループを拡張し、スマートフォンだけでなく、他のさまざまなデバイスを含めるようにしたのです。スマートフォンについては、1年間で300億ドル(約3兆5000億円)程度の打撃を受けました

同社は、今回のウクライナ侵攻を受けたロシア市場における位置づけについてはコメントを控えた。

その他、多くの主要中国メーカーが実機の発表をリードした。TCLは、その30シリーズに、5GをサポートしたTCL 30 5Gを含む、多数のモデルを追加した。また、まだコンセプト段階の新しい折りたたみ式スマートフォンも披露した。旧HuaweiブランドのHonor(オナー)は6.8インチのフラッグシップ機Magic4を、旧XiaomiブランドのPoco(ポコ)は6.7インチのX4 Pro 5Gを披露した。一方、OnePlus(ワンプラス)は、年頭のCESで発表した10 Proの詳細について、さらに情報を提供した。

この1週間は、こうしたニュースを見逃していたとしても、許されるだろう。

今週、最もエキサイティングだったスマートフォンのニュースは、ショーの外で起こったものだった。このカテゴリーには、確かな経歴を持つ2つの新しいプレイヤーが参入しようとしている。上に述べたような理由から、今この瞬間は、この領域に入ることは非常にチャレンジングであると同時に、やりがいのある時期であると言えるだろう。このカテゴリー十分に成熟しているが、もしかしたら人々は、状況を一変させる新しいプレイヤーを待っているのかもしれない。

まずはNothing(ナッシング)だ。このハードウェアスタートアップは、創業者Carl Pei(カール・ペイ)氏の最初の会社であるOnePlusに続いて、新しい携帯電話を発売する準備を進めている。ある情報筋がTechCrunchに語ったところによれば、Nothingは2022年4月までに最初の携帯電話を発表する予定だという。バルセロナの展示会場の奥で、このデバイスは披露された。同社の最初の製品であるEar(1)と同様に、透明な部分を持つことは分かっているが、それ以上はよくわかっていない。

一方、Essential(エッセンシャル)の華々しい崩壊の跡から立ち上がったOSOM(オソム)は、当初、MWCを最初のデバイスであるOV1の発表の場とする予定だった。しかし、最終的にQualcommが同社に断りきれないほどのオファーを出し、デバイスのリリースを第3四半期から第4四半期に延期した。

創業者でCEOのJason Keats(ジェイソン・キーツ)氏は、TechCrunchの取材に対し「地元に密着していることが評価されているのです。私たちはチームと直接仕事をする長い歴史を持っています」と語った。「私たちのパートナーの1つは、Qualcommに『なんてこった、彼らと一緒に仕事をしているのですか。あなたたちやっていることに、もっと関わりたいですね』』と言わせるほどの大企業です。彼らは、繰り返しOSOMには何か新しいこと、エキサイティングなことをできる機会があると言っています。すべての仕組みを変える機会です。また、私たちが巨大企業ではないという理由から、彼らの生産力が巨大ではなかったとしても、1ヵ月に500万個のチップを出荷する心配をする必要はないということもあると思います」。

同社はまた、いくつかの仕様を紹介し、データ転送と充電の切り替えが可能なスイッチ付きの賢いUSB-Cコネクタを披露した。正直言って、他の企業が挑戦していないのが不思議なくらいだ。

ほぼ予想通りの展開とはなったものの、スマートフォンの最高峰の展示会としてのMWCを私はまだあきらめたわけではない。2022年もまた、業界や世の中全体にとって、ユニークなチャレンジに満ちた奇妙な年だった。人々の注意は、今は当然ながら別のところに注がれている。

画像クレジット:Josep Lago / AFP/Getty Images

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(文:Brian Heater、翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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