われわれは大きく二極化した時代にいる。政治では、世界中の国々で左と極右が共に数を増やし、主流の支配層から年々大きく離れている。経済では、富裕層が貧困層から離れ続け、富が富を生んでいく。そしてテクノロジー界は、もちろん、益々「勝者総取り」の世界になりつつある。
昨年Quartzが調査したところによると、アメリカ人の48%が自らを「下層階級」と認識しており、2008年の35%から急増している。一方、New York Timesによると、「所得分布の上位20%は、収入だけでなく、地理的にも教育的にも自らを切り離し続けている」。
勝者総取り。経済的利益は、不均衡に、今や悪名高き1%へと渡り、残りは不均衡にトップ20%に渡っている。まるでわれわれは、(ブラック・スワンの)「月並みの国」(Mediocristan)から「果ての国」(Extremistan)へと一挙に移動しているかのようだ。「富の(いわゆる)正規分布」は、〈べき乗則〉に近づいている。
(画像出典:Hay Kranen / PD)
一方政治の世界では、人々は多くの時間を、FacebookやGoogleに介入されたフィルターバブルの中で過している。Politicoはこれを、「Googleは2016年大統領選を操作しかねない」と警告し、Freedom of the Press FoundationのTrevor Timmは、「あなたはドナルド・トランプが嫌いかもしれない。しかし、彼に反対する選挙操作をFacebookにしてほしいだろうか?」と問う。
常に聡明なBen Thompsonは次のように観察する:
Facebookの人たちが実際に見ているもの ― ニュースフィードであり、トレンディングニュースではない ― の中では、保守は保守の記事を読み、リベラルはリベラルの記事を読む…それは自分たちが正しいと言ってくれる心地よい意見であり、自らの前提に疑問を投げかける視点は入ってこない。
彼はEzra KleinがVoxに書いた、アメリカ人1万人を調査した結果を引用する。
増大する政治的二極化は単なる一時的現象であり、アメリカはすぐに平静で友好的な政治体制に戻る、と思いたい誘惑にかられる。そうだろうか。政治的二極化は、政治以外でも起きている。人々が生活する場所、見る物、見る人、すべてを変える ― そして、それはさらに政治的二極化を呼ぶように変わっていく。
…そしてもちろん、オンラインニュースもすべてべき乗則に従っている。
二極化は、過激な政治信念までも再形成 ― そして強化 ― している。それは、陰謀論が促進されるためだと、Fast Companyは言う。Facebookは、二極化は自分たちの責任ではないと主張しており、原則として正しい。それは、人間の差し迫った特性がたまたま生まれたものであり、何者かの悪意の決定の結果ではない。
この予想外の政治的再分配は、最近の評論家や世論調査会社があれほど間違う理由の一つなのではないかと考えずにいられない。2012年のヒーロー、FiveThirtyEight.comを見てみよう。最近の彼らは、透視する占い師のように思える。私は、トランプの躍進のことだけを言っているのではない。昨年、彼らの英国総選挙の予想は、ひどく違っていた。
これは、少なくともその一部はテクノロジーによるものだ。勝者総取りのソフトウェアの世界 ― 優れたソフトウェアが、他より早くすぐに世界を食いつくし、地理的制約も、流通の制約も、ハードウェアによる制限もない ― が経済的二極化を加速する。Facebookのフィルターブバルは、政治的二極化を加速している。
これは社会通念的には、ひどいことだ。私にはよくわからない。私は、〈富〉の極在化には反対だ。不平等の高まりは、「果ての国」が、貧困者に彼らが「月並みの国」で得る以上の富を分配できるようになるまで(ならない限り)続く。しかし少なくともそういう世界を想像することはできる(具体的には、ベーシックインカムを普遍的に実施できる世界)。
政治的二極化について ― たしかにそれはコミュニティーを分断し、隣人同志を戦わせるが、それでも、その基本的目標が自分自身とその利己的な視点を存続させることであるような、偏狭な支配層がコントロールするメディアよりは、ずっとよさそうに思える。
二極化した世界は、それまで思いもよらかった視点が、真剣に提案され、激しく議論され、驚くほどの速さで賛同を集められる世界でもある(かつて合法マリファナや、ゲイの結婚が、遠い、達成し得ないゴールだと思われていた頃を思いだしてほしい)。それは、対立の起きやすい世界だが、同時に多くの変化が速く起こり、ハイリスク、ハイリターンの世界でもある。これは、私がとりあえず、楽観的に、受け入れてもいと考えているトレードオフだ。
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(翻訳:Nob Takahashi / facebook)