「タッチ第一」に賭けたMicrosoftの誤算

今週のMicrosoftは散々だった。壊滅的な四半期決算のおかげで株価は翌日11%も下げた。業績 悪化の大きな原因は9億ドルにも上るSurface RTの在庫処理だった。

しかしこの損失処理を別にしても、今期の状況は十分に悪かった。この決算でビジネス向け、企業向け分野(これは比較的好成績だった)を別にすれば、Microsoftは消費者が欲しがる製品を何一つ持っていないという事実が明らかになってしまった。

さほど遠くない以前にこれまでで最高のOSと評されるWindows 7という優れた製品を出した会社がいったいどうしてしまったのか? Microsoftは数年前から消費者向けプロダクトを「タッチ第一」で設計し始めた。

このことが最初に現れたのは2年前にD9カンファレンスでWindows 8のプレビューが公開されたときだった。「Windows 8ベースのデバイスはタッチのみの小さいスクリーンから大型のデスクトップまで、キーボードやマウスなしに操作できるユニークな体系となっている」と当時Windows体験担当コーポレート副社長だった Julie Larson-Greenが強調した。

それ以来、Microsoftは消費者がこぞってタッチスクリーンのノートパソコンを買うだろう、それどころかLenovo Yogaのようなノートとタブレットのハイブリッドのデバイスにさえ飛びつくだろうと期待していた。ところが問題は消費者はそんな製品に興味がないという点だった。タッチ体験の直感性を最大限に生かした究極多機能デバイスだというLenovoの宣伝文句とは裏腹に、Yogaの実態は消費者の大多数が嫌うWindows8のタッチUIが邪魔をするノートパソコンに過ぎなかった。

iPhoneとAndroidの驚異的な成功を見て、 当時のMicrosoftの誰かが「近くすべてのデバイスはタッチ化する。時代に遅れないためにはわれわれも全力でタッチ化を進めることが必要だ」と主張したのだろう。ともあれMicrosoftはその方向に突進した。Microsoftは以前にもタッチ化をちょっと試してみたことがあったが、今回はOEMパートナーも巻き込んだ全力投球だ。

ユーザーを面食らわせたSurface RTはもとも設計思想が間違っていた。消費者がタッチスクリーンに殺到するだろうというMicrosoftの予想は誤っていた。タッチスクリーンのWindows 8ノート、やChromebook Pixelを使ったことがあれば分かるはずだが、誰もめったにスクリーンには触りはしない。もちろん大型タッチスクリーンが意味がある場面も存在する(昨年Microsoftは非常に大きなタッチスクリーンのテクノロジーを開発したPerceptive Pixelを買収した)。しかしノートのタッチスクリーンはたいていの場合無用の長物だ。

Microsoftという会社は動きが非常に遅い。Ballmerは最近の組織再編でこの点を改革しようとしている。しかしその成果が現れるのはだいぶ先のことだろう。Microsoftがいったんある方向に動き始めたらそれを変えるのは容易ではない。機敏に誤りを修正できるような会社ではないのだ。Windows 8とSurfaceで始まった「タッチ第一」という戦略は間違っている。しかし船はその方向に出帆してしまった。Microsoftが正しいコースに戻るまでどれくらいかかるのだろうか? 

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


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TechCrunch Japan

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