「デスクを持たない」製造現場の人員のためのSaaSを提供するCioplenu

ドイツのアウグスブルクを拠点とし、製造現場の「オペレーティングシステム」と彼らが呼ぶソフトウェアを開発するスタートアップであるCioplenu(シオプレヌー)は、このほど420万ユーロ(約5億円)のシード投資を獲得した。このラウンドを主導したのはベルリンに本社を置くCherry Venturesだ。そのほか、2018年にCioplenuのプレシードを主導したミュンヘンの42Capと、3つの非常に著名なエンジェルが参加している。

そのエンジェルとは、先日シリーズB投資で6000万ドル(約65億3600万円)の獲得を発表したScoutbeeの共同創設者Fabian Heinrich(ファビアン・ハインリッシュ)氏、クアドリガ大学デジタルトランスフォーメーション学部の創立者であり教授のChristian Heinrich(クリスティアン・ハインリッシュ)氏、2013年にSAPに15億ドル(約1634億円)でイグジットを果たしたHybrisの共同創設者Moritz Zimmermann(モーリッツ・ジマーマン)氏の3名。

「デスクを持たない」作業員のためのSaaSとも呼ばれるCioplenuは、メンテナンス、新人研修、組み立て、検査など、製造現場の一連の作業をデジタル化するこを目指している。このソフトウェアはあらゆるデバイスに対応し、製造業者が導入している既存のIT製造システムと連携できる。すでに、Bosch(ボッシュ)、Schwan-Stabilo(スワン・スタビロ)、Hirschvogel(ヒルシュフォーゲル)など、10カ国以上の大企業がこれを採用している。

「典型的な製造業の作業場に行くと、10mのキャビネットに紙の計画書や資料や指示書などのファイルがぎっしり詰まっている光景を目にします」とCioplenuの共同創設者でCEOのBenjamin Brockmann(ベンジャミン・ブロックマン)氏は話す。

「今はメンテナンスや検査のほとんどがデジタルで行われていますが、組み立ての指示書は紙に印刷されています。書類の検索や配布は悪夢のような作業で、そこにはリアルタイムのコミュニケーションもなく、分析も一切行われません。そこが企業の巨大な盲点になっているのです」。

「この問題を解決するため、Cioplenuは直感的に使える製造現場のための『オペレーティングシステム』、つまりメンテナンス、検査、組み立てなどの工程にオールインワンで対応できるプラットフォームを構築しているのだ」とブロックマン氏は言う。

「私たちは、マルチメディア書類、計画書、アンケートなどが簡単に作れるエディターと、さまざまなデバイスを使い、デスクを持たない作業員のための操作ソフトウェアを提供しています」と彼は説明する。「企業資源計画を簡単に統合できるため、(製造業者は)素早くデータを収集し整理できます。同時に私たちの分析プラットフォームは、その企業の製造工程の整理を手助けします。簡単なことのようですが、企業がすぐに導入できるようにするために、例えば複雑なアクセス権の管理など、その他多くの複雑も盛り込んでいます」

Cioplenuの顧客は、工業市場の中小企業からボッシュやスタビロなどの大企業とされているが、実際に利用する人は、企業内のさまざまな部門や階層に広がっている。例えば、タブレットを手に製造フロアを歩く品質管理責任者は、そのソフトウェアを使ってデジタル化された計画書のチェックリストを埋めながら書類を作成している。

「どこかが故障すれば、品質管理責任者はその写真を撮り、説明を書き添えて記録できます。外国人の同僚と計画書を共有したいときは、自動翻訳された書類をワンクリックで送ることができます」と同社は話している。

そしてチームリーダーは、整理統合され、異常箇所がハイライトされたすべての報告を受け取る。施設管理者は、概要と、すべて計画通りに進んでいるか否かの分析結果をリアルタイムで入手できる。

「モジュラー形式のため、検査は数ある機能のほんの一部に過ぎないというところが美点です」とCioplenuのCEOは語る。「(私たちのソフトウェアは)組み立て方、機械のトラブルシューティングのやり方などなど、さまざまな従業員教育にも使えます」。

また製品の需要が非常に高いCioplenuは、フランクフルトにふたつめの事業所を開くことになったという。「新しいフランクフルト・オフィスのために、大規模な求人を実施し、社員を3倍に増やす計画です。マーケティング部門と営業部門の拡大が鍵になります」と、このスタートアップのもうひとりの共同創設者Daniel Grobe(ダニエル・グローブ)氏は話していた。

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(翻訳:金井哲夫)

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TechCrunch Japan

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