「在留外国人の入居お断り」問題の解決を目指す「AtHearth」が正式リリース、4100万円の資金調達も

左から、ジェネシア・ベンチャーズ代表取締役の田島聡一氏、アットハース代表取締役の紀野知成氏、ジェネシア・ベンチャーズのインベストメント・マネージャー水谷 航己氏

外国人は日本での生活を始める際、様々な困難に直面する。その象徴の1つとも言えるのが物件探しだ。法務省が2017年に発表した調査結果によると、過去5年間に日本で住む家を探した経験のある人2044人のうち、「外国人であることを理由に入居を断られた」経験のある人は39.3%、「日本人の保証人がいないことを理由に入居を断られた」経験のある人は 41.2%、「『外国人お断り』と書かれた物件を見たので、あきらめた」経験のある人は 26.8%。

また、日本の英字新聞社、ジャパンタイムズが2017年に発表した独自の読者調査によると、回答を得られた63名のうち52名、82.5%が国籍を理由に入居を断らるなどを経験している。首都圏の賃貸物件空室率は約34%(アットハース)と年々増加傾向にあるのにも関わらず、だ。約260万人強まで増加している(アットハース)在留外国人の受け入れ体制は十分に整備されていない状況にあると言えるだろう。

このいわゆる「在留外国人の入居お断り」問題を解決するために立ち上がったのが、紀野知成氏が代表取締役を務めるアットハース。同社は賃貸物件契約手続きを多言語かつオンラインで完結できる、外国人向けのプラットフォーム「AtHearth」を提供している。

アットハース代表取締役の紀野氏は三菱商事での勤務を経て、2015年に同社を設立した。三菱商事在職中のフランス駐在から帰国した後、国際シェアハウスの「Tokyo Hearth」を立ち上げ4年間ほど運営する中、在留外国人と管理会社の双方における課題を痛感し、AtHearthの着想に至ったという。同社のミッションは「外国人という概念自体をなくし、誰もが世界に自由に暮らし、Hearth(暖炉)の前の様な居心地の良い暖かな場所を持てる世の中を作る」ことだ。紀野氏はフランス駐在の前にも、米国での留学を経験しており、「外国人」としての立場を経験し良く理解している。

日本において1000人ほどの外国人の住居探しに立ち会ったという紀野氏。前記のジャパンタイムズによる調査は有効回答数が63名と少ないものの「82.5%が国籍を理由に入居を断らるなどを経験している」という結果となったように、紀野氏も実感としては「8割ほど」の外国人が国籍を理由に入居を断られていると言う。大手企業に務めている外国人も例外ではないそうだ。

このように外国人が入居を断わられてしまうという問題を解決するため、AtHearthでは不動産オーナー、入居希望の外国人就労者留学生、そして外国人就労者を迎える企業人事部や学校法人学生課の担当者にサービスを提供している。

Athearthを利用し、不動産オーナーや管理会社は、多言語による集客、内覧、契約、支払い代行をアットハースに委託することで「入居者の幅を拡大し、空室率を大幅に下げることができる」(アットハース)。入居希望の外国人就労者や留学生は、物件の検索ならびに契約の手続きを母国語で行い、住居を確保した上で来日し、代理保証や保険のみならず、水道光熱費、WiFi契約、銀行口座開設などのサポートを受けることができる。最後に、外国人就労者、留学生を迎える企業人事部、学校法人学生課の担当者は、部屋探しをアットハースに一括委託することが可能だ。

アットハースはジェネシア・ベンチャーズ、そしてエンジェル投資家の芝山貴史氏から4100万円の資金調達を実施したと10月1日に発表。ジェネシア・ベンチャーズのインベストメント・マネージャー、水谷 航己氏は「経済活動のグローバル化によりますます国境がシームレスになっていく中、不動産業界は国や地域ごとに手続きや慣行が異なり、依然として言語障壁も高いことから、国際的な人材流動化を支える不動産インフラの構築は必須と考えていた」とコメントしている。アットハースは調達した資金をもとに人材採用、管理物件獲得を強化し、事業を推進していく。

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TechCrunch Japan

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