月に「ダークサイド」はないかも知れないが、ある場所が暗くなったときには、それは本当に暗くなる。そしてその状態が2週間は続くことになる。もし私たちがそこにコロニーを建設することになったら、長い月の夜に備えて、暖かさと何よりも照明を維持しなければならないだろう。このたび、月の砂から作られたレンガが、その解決の一部になることが判明した。
もちろん、月の昼間の間はすぐに利用可能な太陽光が使われることになるし、ご想像のように夜に利用するためのバッテリーを充電することもできるだろう。しかし、バッテリーは大きくて重い代物だ。月旅行の手荷物として携行したいものでは決してない。
では、月のコロニーがエネルギーを蓄える手段は、それ以外には何があるだろう?欧州宇宙機関(ESA、European Space Agency )はAzimut Spaceと提携して、月面に蓄熱されたエネルギーが手軽に利用可能かどうかを調査した。
月面上に豊富にあるものは砂、正確に言うなら月のレゴリス(堆積層)だ。そして、アポロ計画によって持ち帰られたサンプルのおかげで、私たちはそれらの性質をよく知っている。そこで研究チームが、地球上の材料を使いながら月のレゴリスで何ができるかをシミュレートしてみた。
「この研究では、月の岩石と同等の性質を持つ地球の岩石を、月面レゴリスの粒子のサイズと一致する大きさになるまで粉砕して利用しました」と述べるのはプロジェクトの総監督であるESAのAidan Cowley(エイダン・カウリー)氏だ。
この人造レゴリスはレンガとして圧縮されて、電線をつないだあと、月の表面で太陽電池から取り込める量の電流が流されて加熱された。そのあと、そのレンガは月面を模した環境(ほぼ真空で摂氏約マイナス150度)に置かれたが、その際同時にレンガから熱を取り出しそれを電気に変換できるシステムに接続された。
Azimut SpaceのLuca Celotti(ルカ・セロッティ)氏は「月面の熱を蓄熱するために月のレゴリスを使うことで、すぐに使える材料が豊富に手に入ることになります。つまり宇宙旅行者が材料を大量に地球から持っていく必要がないのです」と語った。
ESAの発表した記事によれば、このプロセスは「うまくいった」とだけ書かれているだけで、特に説明的なものは書かれていない。詳しい情報を求めて私はAzimutに連絡している最中だ。とはいえ、もしこの方法が動くには動くが箸にも棒にもかからない程度のものであったとしたら、おそらく私たちの耳に入ることもなかっただろうと思われる。
月の砂から、巨大で荒削りなバッテリーを作り出すためには、まだまだ沢山の基本的な挑戦を乗り越えなければならない。しかしもしそれが、たとえわずかばかりでも上手く行くようならば、すべての月面コロニーが採用すべきエネルギーと熱の貯蔵手段となるかもしれない。
画像クレジット: ESA / Azimut
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(翻訳:sako)