「50分議論するだけ」リブセンスとクックパッドが始めた起業家支援の狙いとは

アルバイト求人サイト「ジョブセンス」を運営するリブセンスとクックパッドが、スタートアップを支援するプログラム「STARTUP50」を1月に始動する。米国のインキュベーター「500 Startups」を意識したような名称だが、代表を務めるリブセンスの村上太一社長によれば、その取り組みは意外にも「起業家と50分間ディスカッションするだけ」。村上氏に発足の経緯や狙いについて聞いた。

リブセンスの村上太一社長

STARTUP50では原則、村上氏とクックパッド代表執行役兼取締役の穐田誉輝氏らが起業家と50分間、無料のディスカッションを1回行うのみ。500 Startupsのように投資を前提とせず、起業家の事業プランについて「上から目線でなく」議論するという。「穐田さんは様々なウェブサービスを見てきているし、僕も人材サービス以外の領域も把握しているので、必要に応じて技術面や事業運営のノウハウをアドバイスします。起業家にとって最良の選択肢であれば投資や協業もするというイメージ。とにかく濃い50分間を共有したいです」。

支援の対象となるのは、起業準備中の学生や社会人などスタートアップ段階の起業家。国籍や年齢、性別、学歴は一切不問、事業の領域や規模も問わない。まずは1月8日から2月16日まで、専用サイトからエントリーを受け付け、書類選考や面談を経て3月中に5〜10人の起業家を絞り込む。選考基準は「やりたい度の高さ」。市場性や事業継続性だけでなく、「こんな世界を作りたいというモチベーションを持っていて、それを実現するために行動している起業家」を求める。今後は年2回のペースで起業家を公募していく。

ところでなぜ「50分」なのか。

掲載料0円の成功報酬と採用決定者にお祝い金を支払う求人サイトで業績を伸ばし、2012年10月に当時25歳という史上最年少の若さで東証一部上場を果たした村上氏。順風満帆な道のりを歩んできたようにみえるが、早稲田大学在学中の2006年2月に創業してから2009年頃までは「行き詰っていた」と振り返る。そんな状況の中、元カカクコム社長で当時クックパッド社外取締役だった穐田氏との出会いが人生を大きく変えたのだという。

「ジョブセンスで苦戦していた頃に穐田さんと出会い、50分間のアドバイスを受けたことが、その後の事業成長や史上最年少上場へつながる大きな転機になりました。ひとことで言うと『シンプルにユーザーのことだけを考えろ』というアドバイスなんですが、机上の空論ではなく、穐田さんの経験と実績を踏まえたシンプルな思想が心に刺さったんです。悩んでいる起業家や起業を志す人にもこんな体験をしてもらいたいと、穐田さんに声をかけたのが発足の経緯です。」

投資を前提としないフラットな空気感の「マネーの虎」のようにも思えるSTARTUP50。起業家支援を前提としているため収益目標は設定していない。「目標人数は決めていませんが、とにかく起業家を増やしたいですね。挑戦する人が増えれば日本が良くなりますし、友達も増えますし(笑)。僕がそうだったように、人生に影響を与えたベスト10に入るような出会いが生まれれば。将来的には、流行っているサービスにはことごとくSTARTUP50出身者が関わっているようになればうれしいですね」。


投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。