1月6日に東京先行でスタートした「LINE TAXI」がいよいよ全国展開する。2月25日に北海道や神奈川県、大阪府、福岡県など22都道府県に拡大し、順次対象エリアを増やす。都内は簡単に流しのタクシーを捕まえられるだけに、地方でどれだけ利用できるかが注目される。ただ、本格的に全国普及するには「手数料の壁」を乗り越える必要がありそうだ。
クレジットカードよりも「それなりに高い」手数料
LINE TAXIは、全国タクシー配車アプリを展開する日本交通と提携し、同社が保有する一部のタクシーをLINEで呼び出せるサービス。先行で開始した東京では、2回以上サービスを利用したユーザーは全体の34%、3回以上は15%超と、まずまずのリピート率だったそうだ。ユーザー数は非公表だが、日本交通の川鍋一朗社長は「我々の配車アプリではリーチできない若年層に届いている」と手応えを感じているようだ。
全国タクシー配車アプリは129社・約2万3000台のタクシーを配車しているが、全国展開を開始したLINE TAXIでは、これらがいきなり配車対象となるわけではない。理由は、タクシー会社がLINEに支払う「手数料」だ。
LINE TAXI経由でタクシーを呼び出した場合、タクシー会社がLINE Payの決済手数料を負担することになる。つまり、LINE TAXIで配車可能な台数を増やすには、全国のタクシー会社に手数料の条件をのんでもらう必要があるわけだ。手数料は非公表だが、川鍋氏は「クレジットカード手数料と比べると、それなりに高い金額」といい、「地方のタクシー会社が導入する一番のボトルネックになる」と続ける。
タクシー会社からすると、一番実入りがあるのは現金払い。地方都市でクレジットカード決済に対応していないタクシーが多いのは、「利益が減る」という企業論理のためだが、川鍋氏は「コスト削減でもなんでもなく、お客様の利便性を下げているだけ」と指摘。全国タクシー配車アプリを導入するタクシー会社には、「多少お金がかかっても本業で取り返せと啓蒙していく」と語る。LINEの出澤剛COOも「全国で開かれるタクシー会社の会合に出席して、LINE TAXIの導入を呼びかける」と意気込んでいる。
悲願のクーポンで利用に弾み
一筋縄ではいかなそうなLINE TAXIの全国展開だが、ユーザー獲得手段としては「飛び道具」を用意しているようだ。LINEの公式ブログでは、LINE TAXI用のクーポンを配信することをほのめかしている。
タクシー会社にとって、タクシー料金の割引クーポンを発行するのは禁じ手とされている。タクシー会社が従う道路運送法10条(運賃又は料金の割戻しの禁止)の違反行為に該当するためだ。
一方、頻繁に数千円オフのクーポンを発行しているUberは、タクシーを自前で保有せず、「旅行業者」としてタクシー会社とユーザーをマッチングしている。このため、国土交通省によれば道路運送法には抵触しないのだという。
日本交通単体では認可されなかった“悲願”の割引クーポン発行だが、国土交通省はLINEが主体となるサービスであれば問題がないとの見解を示している。LINEはクーポン配布を計画中とのことだが、実現すれば、タクシー会社単体で運営する配車アプリとの差別化につながるし、いまだに東京限定のUberよりも存在感を示せそうだ。