「Win-Win-Winは業界への大切なメッセージ」 ― 日本の宿泊権利売買サービスCansellが4000万円を調達

newlogo

日頃たまった疲れを癒やすために、休暇を利用して旅行にでかけるという人も多いことだろう。

しかし時間をかけて計画した旅行でも、急な用事やアクシデントでキャンセルせざるを得ないこともある。せっかく楽しみにしていた旅行が無くなるだけでも悲しいことだが、それに追い打ちをかけるように、キャンセル料の支払いという悲しみもある。

日本のCansellは、そのキャンセル料の負担を軽減してくれるスタートアップだ。Cansellは本日、株式会社DGインキュベーション、株式会社カカクコム、大和企業投資株式会社、株式会社イノベンチャーを引受先とする第三者割当増資を実施し、総額4000万円を調達したと発表した。

Win-Win-Win

cansell_e382b5e383bce38392e38299e382b9e381aee6b581e3828c

「Cansell」では、キャンセルせざるを得なくなった宿泊予約の権利を売買することが可能だ。

ユーザーは宿泊予約の権利を第三者に販売することで、キャンセル料を支払う場合にくらべて費用を節約できる可能性がある。一方で、権利の購入者は通常より安い宿泊料でホテルに泊まることができ、ホテル側も通常の宿泊料金を受け取れるというメリットがある。転売目的の出品を防ぐため、ユーザーは購入価格以上で権利を出品することができない仕組みだ。2016年9月15日のプレビュー版公開はTechCrunch Japanでも紹介している。

このように、CansellのビジネスモデルはWin-Win-Winの構造をもつ。この点は代表の山下恭平氏が特に大事にしているサービスのメッセージだという。

cansell_e5b1b1e4b88be681ade5b9b3

Cansell代表の山下恭平氏

「業界からの反発が気になるところだったが、意外にも業界からつつかれることはなかった。逆に、宿泊施設や旅行業者などから何か一緒にやりたいという声もあった。やはり、ホテルとユーザーを含めたWin-Win-Winの関係を、サービスがもつ大切なメッセージとして出していたのが大きいと思う。このサービスはホテル側の理解も得られないと本格的な成長は難しいと考えているので、今後は積極的にコミュニケーションをとっていきたい」と山下氏は話す。

プレビュー版での出品頻度は2日に1回程度とのこと。この数字について山下氏は、「積極的なPR活動を行っていないのもあるが、出品数はまだまだ」とコメントしている。ただ、サービスの認知度は口コミベースで少しずつ広がりを見せているようだ。たとえば先日、フリーランスライターの塩谷舞(通称しおたん)氏がCansellについてつぶやいたツイートが4000回近くリツートされたという。

Cansellは今回の資金を利用して、エンジニアの確保とPR活動の強化をはかる。Cansellは去年10月からブロガー向けアフィリエイト・プログラムの提供を開始しており、人気ブロガーのイケダハヤト氏が記事を執筆するなど一定の効果はあったと山下氏は話す。

「旅行」をテーマにしたシナジーも

山下氏によれば、Cansellへの出品案件で多いのは沖縄などリゾート地の宿泊権利だそうだ。さらに、宿泊日が1ヶ月ほど先の案件が多い。つまり、都心部へのビジネス出張が急にキャンセルになってしまったという案件よりも、国内旅行や地方のライブイベントなどで予約した宿泊権利が出品されるケースが多いようだ。予約時の購入単価は5万円から6万円ほどで、その約3割引で出品される。

プレビュー版で分かった傾向を踏まえて、今後は「旅行」というテーマに沿った新機能なども期待できるかもしれない。

今回の調達ラウンドをリードしたのはデジタルガレージ(DG)グループのDGインキューベーションだ。今回の出資に参加したカカクコムもDGグループの一員である。デジタルガレージは2015年6月にシンガポールLCO社と資本業務提携を結び、海外旅行アプリ・プラットフォームの提供を開始している。そのため、今後はDGグループとCansellとのシナジーにも期待できそうだ。

同様に、株式会社イノベンチャーはメーカーの新商品や余剰在庫を利用したサンプリング業務を展開している。Cansellと同じく2次流通市場を領域とする企業だけあって、こちらでも何らかのシナジーが生まれる可能性がある。

Cansellは今年4月にも正式版の公開を目指す。正式版では宿泊施設ごとに紹介ページを設け、そこに出品案件をひも付けする機能や、お気に入りのホテルの宿泊権利が出品されたことを通知する機能、ホテルのレビューシステムなどの新機能を追加する予定だ。

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。