【コラム】プロダクトのアクセシビリティが不十分である可能性を示す4つの兆候

本稿の著者Michael Fouquet(マイケル・フーケ)氏は、製品設計と開発チームに統合されたアクセシビリティツールを提供するスタートアップであるStarkのCTO兼共同創業者。

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あまりにも多くの企業が、アクセシビリティ機能を最初から製品に組み込むことをしていなかった。その結果、企業は今になって既存製品にアクセシビリティ機能を埋め込む方法を考えようとしている。しかし、何十年も使っている従来のコードや設計を未来に向けて利用することは容易ではない(安くもない)。

企業は、アクセシビリティ対応に向けた改良方法、アクセシビリティ対応プロジェクトを立ち上げるための教育不足に対応する方法、本番環境に対する他の作業の維持とこうした作業のイテレーション範囲とのバランスを取る方法について、恐怖や不確実性を乗り越える必要がある。

米国では、成人人口の26%が何かしらの障がいを抱えて生活している。それで、アクセシビリティのニーズを理解していない企業やその対応が遅い企業は、デジタル製品を作り上げても対象ユーザーが限定されている。新しいユーザーは、使用時に大きな認知負荷がかかる製品を使用できない可能性がある。ローカライズされていない製品を使用しているユーザーは、他の国でリフィル処方箋を利用できないかもしれない。

アクセシビリティは、言わば製品というケーキの主要な材料だ。ケーキ用ミックスに最初に追加すると最もおいしくなる。

このことについて、最近「ネコの弁護士」が話題になった。顔が子ネコになるフィルターが有効化された弁護士が笑いを誘った話だ。しかしこれは同時に、最近の基本ツールに苦戦しているユーザーが大勢いることを気づかせる出来事でもあった。使いこなしているユーザーにとっては、このようなツールがプライベートや仕事で混乱を引き起こしていることを理解するのは難しいだろう。

ソフトウェア製品を扱う企業の創業者であれば、問題点に気づかされる方法として、ネコのフィルターの動画がバズることほど重大な警鐘が鳴らされることはないだろう。少なくとも現時点ではない。残念ながら、ソーシャルメディアがサポートに関する問題を拡散する役割を担うようになってきたため、こうした事態は発生するものだ。このような制御不能の最終警報が鳴ることは避けたい。自社製品が思ったほどアクセシビリティに対応できていないことを明確に警告する兆候が他にも4つある。対応方法と併せてそれを示そう。

1. プロジェクトの初期段階でアクセシビリティの原則を定義しなかった

アクセシビリティは、言わば製品というケーキの主要な材料だ。ケーキ用ミックスに最初に追加すると最もおいしくなる。また、最初から追加しておくやり方は時間効率とコスト効率の面でも優れている。製品リリース後にユーザビリティの問題を修正しようとすると、開発プロセスの初期段階で対応した場合に比べ、100倍もコストがかかることがある。

製品ロードマップは、アクセシビリティの4つの原則に沿って進む必要がある。この原則は頭文字を取ってPOURと呼ばれる。

  • 知覚可能(Perceivable):ユーザーが、ユーザーインターフェイスに表示されるすべての情報を知覚できるようにする必要がある。
  • 操作可能(Operable):ユーザーがインターフェイスの要素を操作し、移動できるようにする必要がある。
  • 理解可能(Understandable):ユーザーインターフェイスのコンテンツと機能は、ユーザーが明確に理解できるようにする必要がある。
  • 堅牢性(Robust):ユーザー補助機能などの技術が進歩しても、幅広いユーザーが引き続き利用できる堅牢性が必要である。

これらの原則に一貫して従うことが必要だ。そうしないと、あらゆるユーザーに製品のアクセシビリティを保証することはできない。

ロードマップ上で、設計、開発、品質保証のプロセスにアクセシビリティ対応を組み込み、製品のリリースやアップデートまで対応を継続する必要がある。そこからまたサイクルが開始される。

つまり、チームの全員がアクセシビリティに関する必要な情報を得て、対応に尽力することが極めて重要だ。各チームからアクセシビリティのプロセスを主導するメンバーを1人ずつ選出し、チームのコンプライアンスの責任者になってもらうこともできる。課題を把握するために、アクセシビリティの監査を含む新しいプロジェクトを始動しても良いだろう。また、セールスチームやサポートチームと情報を共有することで、ユーザーが不便に感じている部分を特定することもできる。

アクセシビリティ機能を組み込むためのこうしたプロセスは、コンプライアンス違反の結果として発生する法的問題を未然に回避するのに役立つ。2019年、視覚に障がいのある男性が、スクリーンリーダーソフトウェアを使用したにもかかわらず、Domino’s(ドミノ)のウェブサイトとモバイルアプリから注文ができず、ドミノを訴えて勝訴した。同じ年に、Beyoncé(ビヨンセ)の会社は視覚に障がいのある女性に訴えられた。製品の所有者は、ウェブコンテンツ・アクセシビリティ・ガイドラインの内容を実装していないと、さまざまな方面から訴えられる可能性がある。

IBMのCarbon Design Systemはアクセシビリティ対応に役立つ。これはデジタル製品向けに用意されたオープンソースの設計システムで、アクセシビリティ対応の製品を構築するための無料ガイドラインを提供している(身体的な障がいと認知的な障がいに対応)。また、製品の完成段階ではなく、完成前のアクセシビリティチェックを支援するソフトウェアツールも用意されている。

2. アクセシビリティを「一度設定すれば後は何もしなくて良い」もののように見なしている

テクノロジーの世界では、設計のトレンドが急速に進化している。チームでは最新のソフトウェアやモバイル機能に対応できているかもしれないが、アクセシビリティには注意を払っているだろうか。

アクセシビリティにはメンテナンスが必要だ。ウェブとモバイルのプラットフォームの要件は常に変化する。その変化についていくことが重要(かつ必要)だ。絶えず微調整とアップグレードを行わないと、時間が経つにつれてアクセシビリティの問題が発生していく可能性がある。

定期的な会議を計画し、製品のアクセシビリティと、アクセシビリティのコンプライアンスについて確認し、話し合おう。他の製品に見られるアクセシビリティ対応に向けた動向を確認したり、インクルーシブデザインのコースを受講したりしても良い(TechCrunchのセッションなど)。A11Y Projectなどのプラットフォームもチームが最新の情報を得るための非常に便利なリソースである。そこでは、書籍、チュートリアル、プロフェッショナルサポートやプロフェッショナルテスターが利用可能だ。

3. 自分もチームもアクセシビリティツールを試したことがない

最高のアクセシビリティツールはチーム自体だ。多様なメンバーで構成されるグループで製品を構築すれば、使用する際の問題点をすぐに見つけて、修正できるし、より成果の高いイノベーションを実現できる。世界的なイノベーターの中には障がいのある人もいるのだ。

チームでの対応とは別に、次のことを自問してみよう。スクリーンリーダーを使ったことはあるか。キーボードだけでウェブサイト内を移動しようとしたことはあるか。さまざまな視覚機能のシミュレーションを行って設計を確認しているか。

答えが「いいえ」なら、主要なアクセシビリティ機能が抜け落ちてしまう可能性がある。障がいのある人の立場に身を置いて、これらのツールを使用することでニーズをより適切に理解できる。

このようなツールをチームでできるだけ早く使ってみることだ。チームメンバーにアクセシビリティの重要性を伝えることに苦労している場合は特にそうすべきだ。視野が広がれば、能力の異なる人たちにとっての製品の操作感を理解しないことは考え難い。だからこそ、ユーザーとして再度製品を使ってみて、新しい観点から確認する必要がある。

4. ユーザーの話を聞いていない

最後に、実際にユーザーと話をせずに真のアクセシビリティを備えた製品を構築できることはほとんどない。大衆は多様性に富んだ批評家の集まりであり、背景や能力の異なる人たちへの配慮が欠けた製品があれば警告を発してくれる。製品に対するユーザー体験はそれぞれ異なるため、これまであらゆる努力をしてきたとしても、問題は発生するであろう。

製品のライフサイクルを通じて幅広いユーザーの話に耳を傾けることだ。そのためには、アップデートのたびにユーザーテストを行ったり、アプリ内の体験についてユーザーにアンケートを記入してもらったり、ニーズの異なるユーザーをあらかじめ選んだフォーカスグループを開催したりすることもできる。

アクセシビリティ対応は、設計として優れている。障がいのある人たちのユーザーエクスペリエンスだけが向上するというのは誤解であり、実際にはあらゆるユーザーにとってのエクスペリエンスが向上する。創業者は誰でも、できるだけ多くの人に自社製品を届けたいと考える。最初に努力してそれがうまくいけば、その後の対応はより簡単になる。同じキットに含まれる別のツールのようなものだ。最初から完璧になることはない。しかし、完璧であることよりも前進することが重要なのだ。

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タグ:Starkアクセシビリティコラム

画像クレジット:Sean Gladwell / Getty Images

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(文:Michael Fouquet、翻訳:Dragonfly)

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TechCrunch Japan

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