【コラム】私たちのポートフォリオの50%が女性CEOの会社である理由

2022年を迎え、1つ確かなことがある。それは女性リーダーをともなう投資で数十億ドル(数千億円)の機会が熟していることだ。

私の会社、Astia(アスティア)だけで2021年に1103社、30億2400万ドル(約3490億円)を投資し、前年と比べて119%増加して「パイプライン問題」を巡る不満を解消している。しかし、過小評価されているファウンダー、中でも黒人女性ファウンダーに対するベンチャーキャピタル投資の憂鬱なデータは変わっていない。

2020年に女性が率いるスタートアップでベンチャー資金を受け取ったのはわずか2.3%で、その数字は黒人およびラテンアメリカ女性では0.64%に下がる。ベンチャーキャピタルにおけるこの不均衡は、起業家精神が生み出す富、雇用創出、そして技術革新の影響力から、根本的に有色人種女性を排除するものであり、構造的偏見を持続させている。

3年前、我々はそれを変えることを決意した。黒人女性率いる会社は当社のパイプラインに数多く存在し、投資を受けられない問題が彼らにとって唯一の問題であることに気づいたからだ。

ベンチャーキャピタルにとってのチャンスは、隠れた宝石を見つけることだ。クラスで最高のベンチャーキャピタルは、投資不足だが業績に優れ世界を変える可能性のある会社を探し求める。我々はそんな隠れた宝石を探す取り組みの中、1年前に同じことをしたつもりだったが、そんな宝石がすべて、我々の目の前にあることを発見した。

人種のことがなければ投資していたであろう会社がいくつもあったことを知って我々は深く失望したが、自分たちが完全な制御と力を持っているものを修正する機会を得たことを喜んだ。それは我々自身の投資判断だ。

このことは、当社が持っているデータを深く研究し、修正すべき行動を特定する取り組みにつながった。我々の投資活動における性別と人種の差別に関係することだからだ。それから3年、我々は投資パイロットプログラム、Astia Edge(アスティア・エッジ)を通じて見つかった重要課題の解決方法を実行してきた。結果は見てのとおりだ。

こうした自己反省と軌道修正の結果、現在、Astia Fundのポートフォリオの50%が黒人女性CEOであり、修正後にAstia Angel(アスティア・エンジェル)が拠出した資金の17%が黒人女性CEOのいる会社に投資されている。

ここに至る道のりには、多くの厳しい瞬間と内省があった。

当社の最新レポートでは、現在のベンチャーキャピタルモデルにおける人種平等に関わる重大な欠陥について、驚くべき考察がなされている。要約すれば、パイロット企業の契約は締結まで245日間を要したのに対し、Astiaの女性重視ポートフォリオでは161日だった。また、パイロットでは共同出資者を集めるために60件以上の外部紹介(Astiaのポートフォリオでは5件以下)と、擁護者として投資バイアスに直接対抗するために100時間以上の現場作業が必要だった。

より穏やかなデータも同じく失望させるものだった。このパイロットテストを通じて、黒人ファウンダー率いる企業が不均衡にAstiaを訪れ、シードラウンドや「友人と家族」ラウンドで投資された金額は少なかったが、限られた資金で大きな実績を上げている会社が少なくなかったことがわかった。この資金格差が、この国における貧富格差による系統的圧力によるものであると考えるのは普通だ。追い打ちをかけるように、投資家は起業家を「他に誰が投資したか」に基づいて評価し、本人の実績や気概や可能性を評価しない傾向がある。富へのアクセスもネットワークもない人々に対する偏見に根づく問題だ。

実際、我々投資コミュニティはこうした資金提供における人種格差の責任を負い、モデルと現状維持体質を再考しなければならない立場にある。データによると、黒人女性の17%が新しいビジネスを立ち上げようとしているのに対し、白人女性は10%、白人男性は15%だ。黒人女性ファウンダーは膨大な数が存在している。必要なのは彼女らを見つけ、公平に評価して投資することだけだ。

我々はこの現実認識する不快感を直に目撃してきたが、今は悪循環を断ち切る力を認識している。私たちはあらゆるベンチャーキャピタルに対して同じことをするよう求める。新しい年を迎え、今こそ新しいVC、ごく一部ではなく、すべての人々の利益のために働くVCが生まれる時だ。

編集部注:本稿の執筆者Sharon Vosmek(シャロン・ヴォスメク)氏はAstiaのCEOでAstia Fundのマネージングパートナー。

画像クレジット:Belitas / Getty Images

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(文:Sharon Vosmek、翻訳:Nob Takahashi / facebook

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TechCrunch Japan

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