通算9回目となる、スタートアップとテクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo」。今年は11月14日(木)、15日(金)に東京・渋谷ヒカリエで開催が予定されている。そのTC Tokyoで毎年最大の目玉となるのは、設立3年未満のスタートアップ企業が競うピッチイベント「スタートアップバトル」だ。
関連記事:TC Tokyo 2019スタートアップバトルの受付開始!仮登録は9月16日、本登録は9月末まで
連載「スタートアップバトルへの道」では、2016年、2017年のスタートアップバトル最優秀賞受賞者と昨年決勝に勝ち残ったスタートアップ、計8社に取材。バトル出場までの経緯や出場してからの変化について、登壇者に話を聞いている。
今回登場するのは、TC Tokyo 2018 スタートアップバトルファイナリスト、KURASERU代表取締役CEOの川原大樹氏。2回に分けてお送りするインタビューの後半では、出場後の社内外の変化や今後の展望などについて話を聞く。
(出場までの経緯や登壇時の感想などについて聞いたインタビュー前半はこちら〓リンク〓から)
エンジニア、投資家の知名度が一気に上がる
医療ソーシャルワーカーやケアマネジャーのために、病院から退院する要介護者が入所する介護施設のマッチングサービスを提供する、KURASERU(クラセル)。スタートアップバトルでは、ファイナルラウンドに進出し、優勝は惜しくも逃したが富士通賞を獲得した。
バトル出場と同時にKURASERUでは会場にブース出展も行い、イベント中ずっとスタッフが在席していたのだが、このとき「日常の業務とは違う体験ができた」と川原氏は述べている。「今までは自分が営業してきていたこともあり、スタッフが事業の説明をする機会はなかなかなかった。バトルを見て訪れた方に、その場でスタッフが事業内容を説明したことは、経験としてよかったのではないか」(川原氏)
神戸市発のスタートアップで、市が支援するアクセラレーションプログラムにも参加していたKURASERUには、神戸市からも応援があり、「ライブ配信で、決勝進出を見ていた市の担当の人から連絡が来た」という。
「東京発のスタートアップがやはり多いと思うが、地方から出場するとエリア全体で沸く。出場することで地元の人が応援してくれるというのは、地方発スタートアップにとってはいいことだ」(川原氏)
出場後、社外の変化で大きかったのは「やはり採用面」だと川原氏はいう。「地方のスタートアップはあまり知られていない。スタートアップバトルに入賞したことは、エンジニアにとっては分かりやすいインパクトがあった」(川原氏)
また当時、資金調達を計画していたKURASERUにとって、バトルへの出場・入賞で「投資家に一気に知ってもらえた」と川原氏はその効果について語っている。
「2019年3月にプレシリーズAラウンドで調達を行ったが、今まではこちらから投資家にノックして回っていた。それが『TC Tokyoで見た』と言ってきてくれるようになった。当日の会場でも投資家の紹介があり、そうした場としても効果は高かった」(川原氏)
医療・介護の情報格差をテクノロジーの力で無くす
プロダクトである介護施設マッチングサービスの「KURASERU」は、ネイティブアプリ化などの細かなアップデートを重ねつつ、神戸市を中心にサービスを展開してきた。現在の従業員数規模は10名ほど。今後、追加の資金調達により、一気に従業員を増やす方針だという。
川原氏は「誰でも暮らしたいところで“クラセル”社会を実現するのが我々のビジョン」と語る。現在、厚生労働省は高齢化が進む中、重い要介護状態になっても“住み慣れた地域で自分らしく暮らすために”と、住まいと医療、介護や予防・生活支援が一体として提供される『地域包括ケアシステム』の構築を推進している。
地域包括ケアシステムの思想は「さまざまな施設や自治体などの関係者がシームレスに連携して、適切な場所で適切なサービスが受けられることで実現される」と川原氏。今後「KURASERUではこれをプロダクトで実現する」と述べている。
「医療・介護の情報格差をテクノロジーの力で無くして、ビジョンを実現していく。そのために戦略を立てて、プロダクトの大幅なアップデートも進めようとしている。今後、神戸市以外の他都市へも展開を早めたい」(川原氏)
なお現在、スタートアップバトルの応募だけでなく、TechCrunch Tokyo 2019のチケットも販売中だ。「前売りチケット」(3.2万円)をはじめ、専用の観覧エリアや専用の打ち合わせスペースを利用できる「VIPチケット」(10万円)、設立3年未満のスタートアップ企業の関係者向けの「スタートアップチケット」(1.8万円)、同じく設立3年未満のスタートアップ企業向けのブース出展の権利と入場チケット2枚ぶんがセットになった「スタートアップデモブース券」(3.5万円)など。今年は会場の許容量の関係もあり、いずれも規定数量に達した際は販売終了となる。