【レビュー】メルセデスAMGのオール電動EQSと2022年型SL Roadsterを徹底検証

まず濃霧が発生し、そして雪が降った。しかしそんな悪天候も、Mercedes(メルセデス)のフラッグシップEVや最新型SLのAMGモデルにとってはお構いなしだ。

AMGチームが手がけたMercedes EQSと最新のSL Roadsterは、性能、高級感、快適性、テクノロジーとどこをとっても完璧である。

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メルセデスAMGによる2022年型SL Roadsterには、1950年代後半に登場した初代300 SL Roadsterを包んでいた魂のようなものが、今もなおその根底に流れている。当時、ハリウッド黄金時代のエリートたちが選んだこのクルマだが、現代ならジョージ・クルーニーやヘレン・ミレン、ラン・ザ・ジュエルのキラー・マイクらがこの最新版オープンカーのハンドルを握ってイベントに繰り出す姿を容易に想像できる。

Mercedes-AMG SL 63 4Matic+(画像クレジット:Mercedes-Benz)

AMG SL Roadsterが前世紀にルーツを持つジェームズ・ボンド的存在なら、AMG EQSはアイアンマンといえるだろう。現代のあらゆるテクノロジーを駆使しているという点はRoadstarと同様だが、それをよりスタイリッシュに実現している。

AMG SL RoadsterとAMG EQSはともに新型車であり、その核となるテクノロジーには共通する部分が多いものの、そこには歴然とした違いがある。

SLの威圧的なごう音は、EQSでは構成された音に置き換えられている。EQSは瞬時にEVのトルクを活かせるため、SLのすばらしい排気量とターボもEVの発進力には敵わない。

メルセデスはAMGラインナップのために最後までハンドメイドのエンジンを作り続けることだろう。AMG EQSにハンドメイドの電気モーターはなく、技術者のサインがバッテリーパックに記されることもない。一方、EQSが大気中にまき散らす汚染量は、V8 Roadsterがその生涯で大気中にまき散らす量と比べたら雲泥の差である。

2022年メルセデスAMG EQS

Mercedes-AMG EQS 53 4MATIC+、充電スタンドにて(画像クレジット:Mercedes)

高級感を第一に考えて作られたクルマは、性能面の追求を受けると台無しになってしまうのではないかという懸念がある。セダンの主目的がドライバーや同乗者を甘やかすことだとしたら、乗り心地が悪く、アクセルを少し踏むだけで首がむち打ちにでもなるようなクルマでは目的を達成したことにはならない。

しっかりした走りを求めるEQSファンもご安心を。そんな問題はないようだ。米国に上陸した初の電動AMG EQSは、電動高級セダンの優れた点をAMGチームによるチューニングで巧みに融合しているのである。

最高出力751ps、最大トルク752lb-ft(EQS580より133ps、69lb-ftのジャンプ幅)のパワーを持つこの高級電気セダン。AMG以外のライバル車よりも明らかに速く感じられ、推定3.4秒で時速60マイル(時速96キロ)を達成することが可能だ。

アップグレードされたのは2つの電気モーターだけではない。AMG版に搭載された冷却システム、配線、容量107.8kWhのバッテリー管理システムにも改良が加えられ、SportモードとSport Plusモードでより長くピークパフォーマンスを維持できるようになっている。パームスプリングスからロサンゼルスまでのドライブでは何度も加速テストを行ったが、パワーが落ちていると感じることは一度もなかった。

AMGサウンドエクスペリエンスと呼ばれる加速度連動型の新たな車内サウンドも搭載されている。私はこのEVノイズが大好きだ。人工的ではあるものの、急に加速したときの音体験を見事に再現してくれている。

パワーアップにともない、アクティブダンパーを備えたAMGライドコントロールエアサスペンションも搭載されている。4MATIC+と全輪駆動システム、最大9度のリアステアリングの組み合わせにより、ヘアピンカーブでのスピードアタックはクルマのサイズと重量のわりにコントロールしやすく、すばらしい体験をもたらしてくれる。ボディロールは多少あるが、通常のEQSでの経験よりもはるかに少ない。

ハードウェアおよびソフトウェアに対するこのような性能調整と新Sport Plusモードに加えて、さらにもう1つ新しいモードがあるのだが、私は運良くそれを試すことができた。ドライブ中に山の高いところに登り、道路が黒からグレー、そして雪に覆われた白へと変化したとき、AMG Slipperyモードを試す機会を得たのである。氷上や雪上で見事に機能し、トラクションが多少低下することもあったが、それはMichelin Pilot Sport EVの夏用タイヤを履いていたためだろう。

雪道に遭遇したMercedes-AMG EQS(画像クレジット:Roberto Baldwin)

メルセデスがこのドライブプログラムのためにホイールを選んだ際は、晴天とまではいかなくても、少なくともドライな天候と路面を期待していたのだろうが、母なる自然は予想がつきにくい。AMG EQSが冬用、あるいはオールシーズン用のラバーを装着していれば、氷の上を走ることに神経質になっている人たちも、より安心することができたはずだ。

インテリアに関しては、あちこちにAMGの装飾が施されている以外はこれまでのEQSと変わらない。最新のMBUXインフォテインメントシステムの他、12.3インチのインストルメントクラスター、17.7インチのタッチスクリーンディスプレイ、12.3インチの助手席ディスプレイを含む56インチの巨大ハイパースクリーンを搭載。これはAMGのトリムレベルにはすべて標準装備されている。またこのディスプレイには、必要に応じてマップウィジェットを表示できるZero Layerインターフェースも搭載されている。

Mercedes-AMG EQS 53 4MATIC+のインテリアには広大なインフォテインメントシステムを搭載(画像クレジット:Mercedes)

MBUXの至宝である音声アシスタントは、今も進化を続けている。Zero Layerインターフェースとともに「ヘイ メルセデス」の呼びかけシステムは、他の自動車メーカーも達成すべきスタンダードとなっている。音声による強力なナビゲーション機能とよりフォーカスされたスクリーンは、最強のコンビなのである。

運転中、自分がしたいことの機能を探すのではなく、クルマにお願いするという場面が何度もあった。先代のメルセデスでは次の曲にスキップするために何度もタップする必要があったメディアコントロールなども、ナビゲーション上のZero Layerインターフェイスにすぐに表示されていた。

SL Roadsterと同様、音声アシスタントとZero Layerの組み合わせによりインフォテインメント体験はとても向上しているのだが、ただし一点、なぜハンドルに遮られるほど画面を広くしたのか私にはいまだに不可解である。確かに全ウィジェットは移動されているが、どれだけ大きなディスプレイが作れるかという自慢意識以外、良い理由が見つからない。

2022年メルセデスAMG SL

テストドライブ時に霧の中を走るMercedes-AMG SL(画像クレジット:Roberto Baldwin)

高級感と性能のバランスにおいて、最高出力577ps、最大トルク590lb-ftまで向上したAMG SL 63はスピードとハンドリングに注力しすぎている感覚もあるが、それでも前述のような霧の中での低速でもとても豊かな体験を提供してくれた。

メルセデスは、最高出力469ps、最大トルク516lb-ftのAMG SL 55 Roadsterと、よりパワフルな上記の63モデルの2種類を販売する予定だ。どちらも4.0リッターV8ツインターボエンジンを搭載した全輪駆動システム4Matic+を備えている。

この排気量とターボの組み合わせにより、停止状態からでも遅い車を追い越すときでも、パワフルな瞬発力を発揮してくれる。AMG SL 63のほうがパワフルなのは間違いないが、あれだけの馬力とトルクが使えるケースはほとんどないため、AMG SL 55に軍配が上がるだろう。

Mercedes-AMG SLのインテリアショット(画像クレジット:Roberto Baldwin)

また、現代のSL Roadsterとしては最もパワーのないモデルでもある。メルセデスには今後、Roadsterの非パフォーマンス版を発売する予定はない。同社はその代わりに他のメルセデスと同様、このクルマをできる限りスムーズでラグジュアリー感のあるものにしようと努めたのだ。私のテストドライブ結果としては、85%の出来だといえるだろう。

AMG SL Roadsterは、郊外や市街地などの日常的な道路ではとてもスムーズな乗り心地を提供してくれるものの、このクルマがSクラスではないことをそこここで思い出させてくれる。路面の凹凸や穴、わだちを確かに感じるのである。その一方で、雨に濡れた路面でもしっかりと車輪はアスファルトに固定され、スピードを出しすぎた場合には多少のオーバーステアリングを発生させるものの、ほとんどの体験を通してすばらしいハンドリングが期待できる。ステアリングはタイトで応答性が高くひっかかりを感じさせない。後輪操舵の採用により、バックロードでも街中でも、小さめのクルマを運転しているような印象だ。

Mercedes-AMG SL 63 4Matic+の11.9インチタッチスクリーンディスプレイは、前後に傾けることが可能だ(画像クレジット:Mercedes)

SLのインテリアにも、インフォテイメントシステムMBUXの最新版とZero Layerオプションが搭載されている。日差しが眩しい場合に備え、11.9インチのタッチスクリーン・ディスプレイは12度から32度まで前後に傾けることができる。12.3インチのインストルメント・クラスターが一体型のバイザーを備えているのも太陽の反射を配慮してのことだが、残念ながら曇り空と霧の中のドライブではどちらも必要なかった。

メルセデスはSL Roadsterで、最新のテクノロジーを満載した正しいオープンスポーツカーを作りあげた。性能と技術の両側面が矛盾することはなく、うまく共生している。本質的にこのクルマは、クルマ界のジェームズ・ボンドなのだ。タキシードに身を包み、ミッションを完遂するための最新の小道具を隠し持つ、ワイルドな側面も持ち合わせた過去の偉大なヒーローを彷彿とさせるのである。

2日間にわたってAMG EQSとSLを立て続けに運転し、AMG車の変遷の始まりを見ることができたのはとても有意義な体験だ。メルセデスのパフォーマンス部門は、メルセデス本体と同様に、2030年までに完全な電気自動車に移行する構えだ。

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ここから将来のことを考えると本当にワクワクしてしまう。初代SL 300 Roadsterに乗ったことがあるが、発売当時はまるで宇宙から来たものかのように感じられたのだろう。近い将来また別のAMG SLが登場するかもしれないし、もしメルセデスが今のペースでEV技術を磨いていけば、さらに画期的な電気自動車になっているだろう。

その頃には、雪の中、屋根を開けて走ってもきっと問題ないはずだ。

画像クレジット:Mercedes-Benz

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(文:Roberto Baldwin、翻訳:Dragonfly)

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TechCrunch Japan

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