【レビュー】大型化し手書きメモもできる電子書籍リーダー「Kobo Elipsa」

Kobo ElipsaはAmazonのライバルである電子書籍リーダーの最新モデルで、大型の製品だ。iPadに匹敵する大きさの10.3インチ電子ペーパーディスプレイが採用され、reMarkableやBooxの直接の競合となる。Elipsaは読書がしやすく、メモをとったり絵を描いたりすることができるが、汎用性にはやや欠ける。

Koboはここ数年、高価格帯の市場に少しずつ進出してきた。筆者は低価格のClara HD(税込1万5180円、以下カッコ内は日本での販売価格)が今もおすすめだと考えているが、Forma(税込3万4980円)やLibra H2O(税込2万5080円)はKindleのラインナップのライバルと言える。400ドル(税込4万6990円)のElipsaはサイズ、機能、価格が大きくアップしていて、いずれも妥当だ。ただし気をつけなくてはならない点がいくつかある。

Elipsaはよくできているが派手さはない。FormaとLibraは筐体の1辺のベゼルだけ幅と厚みがあるが、Elipsaでは1辺だけ幅が広く厚みは変わらない。1辺だけが広いデザインは筆者はあまり気にならないし、競合製品の多くも非対称だ(ちなみに筆者のお気に入りはBooxの超小型デバイスでフロントライト付きのPoke 3だ)。

10.3インチディスプレイの解像度は1404×1872で、227dpiだ。300dpiのClaraやFormaよりは低く、注意深く見れば文字のギザギザがわかる。しかしそれがわかるほど近づいて見ることはないだろう。Elipsaはデバイスが大きいので目から離して見るし、おそらく文字サイズも大きくして読むと思われるからだ。筆者は申し分なく読みやすいと感じた。227dpiは最高ではないが、悪くない。

フロントライト内蔵で、画面左側で指先を上下にスライドして簡単に調整できる。しかしKoboの他のデバイスとは異なり、色温度を変えることはできない。筆者は色温度を変えられるデバイスにすっかり慣れて、以前に長年付き合ってきたデフォルトのクールグレイでは快適に感じられなくなってしまった。周囲が暖色系の照明のときは特にそうだ。重要なのは画面全体の明るさが一貫していることと暗く調整できることで、筆者の目はそれで大いに助かっている。

画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch

Elipsaにはアクセサリがいくつか付属していて、それがない状態はちょっと考えづらい。実際「スリープカバー」とスタイラスペンなしでElipsaだけを購入することはできない。カバーとペンが揃って完全なパッケージとなる。かなり重くてかさばるが。Elipsaだけなら標準的なiPadより軽く小さく感じるが、カバーを装着し、驚くほど重いスタイラスペンを収納すると、重くて大きなものになる。

画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch

カバーは、少し硬いかもしれないが良いデザインで、デバイスが壊れないように確実に保護されるだろう。カバーは本体下部に磁石で取り付け、ノートのページをめくるようにデバイスの背面にもっていくと反対側の端も磁石で固定される。カバーの途中の部分を2カ所折ると、折ったところも磁石で固定され、低くてしっかりとした使いやすいスタンドになる。カバーの外側は滑りにくいフェイクレザーで、内側は柔らかいマイクロファイバーになっている。

カバーを開けるとデバイスの電源がオンになり、閉じるとオフになるが、ここでちょっとした問題がある。電源ボタン、充電ポート、幅の広いベゼルがどうしても右側になってしまうのだ。Elipsaからカバーをはずせば、1辺が厚いタイプと同様に好きな向きで置くことができ、コンテンツはそれに応じて即座に回転する。しかしカバーを取り付けるとほぼ右利きモードに固定されてしまう。これが気になることかどうかはわからないが、念のためお伝えしておく。

左がForma、中央がElipsa、右がreMarkable 2(画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch)

上述の点以外は、読書の使い心地はKoboの他のデバイスとほぼ同じだ。最近利用したコンテンツが表示される比較的すっきりとしたインターフェイスでとまどうことはないが、広告は依然としてうんざりするほど多数表示される(「次に読むすばらしい本を見つけよう」のような)。無料や有料の電子書籍がよく表示されるが、そのようなものを大きな画面で読むのはまったく筆者の好みではない。筆者は、画面の大きい電子書籍リーダーは横向きに置いてページを見開き表示できるようにして欲しいと心から願っている。そのほうが本っぽいでしょう?

Pocket経由で同期したウェブの記事は見やすく、この形で読むのは楽しい。オンライン版で読むのに適した雑誌のページのようだ。シンプルで見やすく、よく統合されている。

Kobo初の手書きメモ機能

新機能は「ノート」だ。箇条書き、落書き、授業のメモなどのノートブックを作成し、スタイラスペンを使って書く。

書き心地は十分満足できる。筆者が使い慣れているreMarkable 2はタイムラグの短さと高い精度を誇り、表現力も豊かだ。KoboはreMarkable 2にはまだ届かず、機能は基本的なものでタイムラグが気になるが、精度は高い。

ペン先、線の幅、線の濃さがそれぞれ5種類ずつあり、どれも使いやすい。スタイラスペンは適度な重さがあるが、もっとグリップ感のある素材だと良いと思う。ペンにボタンが2つあり、現在のペンと、ハイライトまたは消しゴムをすばやく切り替えることができる。消しゴムはストロークを消すか、ブラシモードがある。通常のノートには方眼、点線、罫線、無地があり、ページ数は無制限だが、拡大や縮小はできない(絵を描く人には向いていないだろう)。

手書き文字認識などの機能を利用したい場合は「多機能ノート」を作成する。多機能ノートに引かれているガイドラインに従って書き、ダブルタップすると即座にテキストして認識される。多機能ノートの所定のエリアに図を描いたり数式を書いて計算したりすることもできる。

手書きのアップ(画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch)

手書き文字認識は高速でざっと書き留めるには十分だが、そのまま他の人に送れるほどではない。図形のツールも同様で、手書きの図形やラベルをフローチャートのような図に仕上げることができるが、ガタガタした図よりはましではあるもののラフな下書き程度のものだ。よく考えられたショートカットやジェスチャーで余白の追加や削除など頻繁に使う操作ができるようになっていて、Elipsaを使ううちにすぐに慣れることができるだろう。

「スマート」なノートブック上でのページの移動や上下の動きはきびきびとしていているが、iPadのデザインソフトやアート用ソフトの流れるような動きではない。しかしでしゃばった動作ではなく、パームブロッキングも効いていて、アクションは快適だ。書くときのタイムラグは確かに弱点だが、書いた結果が多少雑になっても気にしないのであれば慣れると思う。

画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch

電子書籍をマークアップすることもできる。ハイライトは便利だが、単にテキストを選択するよりもはるかに優れているというわけではない。またスタイラスペンの制限により、周囲の余白には書けない。

メモの書き出しには、DropboxのアカウントをリンクするかUSB接続を利用する。ここでもreMarkableのほうが優位だ。アプリに若干の制限はあるもののリアルタイムで同期されるので、reMarkableのシステム内にある限りはバージョンの違いを気にする必要がない。Koboのほうが方式が古い。

reMarkableとは異なりKoboは日々の読書が簡単にできるプラットフォームなので、読書がメインで落書きやメモをオプションとして考えている人にとっては良い選択だ。一方、スタイラスペンを重視するタブレットでもっと良いものをと考えているなら、他の製品を探した方がいい。文字や図を書くことについては、市場にある他の製品よりもreMarkableのほうが優れている。そしてBooxのタブレットなどと比べると、Elipsaのほうがシンプルで焦点が絞られているが、Androidのアプリやゲームを追加することはできない。

400ドル(税込4万6990円)という価格は、カバーとスタイラスペンがセットになった価格であるとはいえ結構な投資で、間違いなく汎用性が高いデバイスであるiPadとあまり変わらない。しかし筆者はiPadでは記事や書籍をあまり楽しめず、メモをとるときもシンプルな電子書籍リーダーの方が集中できる。電子書籍リーダーは違う目的を持つ違うデバイスであり、万人向けではない。

しかし複雑で高価なオプションもある「大型電子書籍リーダー」の沼に足を踏み入れるなら、現時点ではおそらくElipsaが最適だろう。

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カテゴリー:ハードウェア
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画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Kaori Koyama)

投稿者:

TechCrunch Japan

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