あなたの1時間には30セント以上の価値があるか?

時間はとても貴重なものだと、大抵の人は思っている。少なくとも30セント以上の価値はあると。しかし、人間の意思決定に関する記事を読むと、人がどう考えているのかを疑わざるを得なくなる。

ここで紹介するのは、Jeffrey A. Trachtenbergがウォール・ストリート・ジャーナルに書いた、電子商取引の巨大(本を書く人にとっては)出版社であるアマゾン・パブリッシングの紹介記事だ。アマゾンは、2017年には1000タイトル以上の電子書籍を出版していて、オンライン、オフラインを問わず、アメリカで購入された全書籍の大部分を支配している。

しかし、私がこの記事で本当に驚かされたのは、次の段落だ。

同意のもとで、これらのタイトルはKindle Unlimitedに登録される。これは、電子書籍の読まれたページ数に応じて作者に代金が支払われるというものだ。支払額は、通常、1ページあたり0.004ドルから0.005ドル。価格が10ドルで300ページの電子書籍が読まれれば、作者には1.20ドルから1.30ドルが入る仕組みだ。途中までしか読まれなかった場合は、もっと安くなる。

読む速度が、平均して1時間に60ページ程度とすると、その娯楽の印税は1時間あたり30セントとなる。しかし、Kindle Unlimitedは購読形式なので、アマゾンはもっと儲かっているはずだ。Kindle Unlimitedの本は三文小説か、またはKindle Unlimitedの読者は低俗なのだと片付けてしまうこともできるだろう。

しかし本当のところは、人々(つまり一般読者)は、頭の中を文字で満たしたいと思ったときに、極端にケチになるという事実だ。ワイアードのライターAntonio Garcia Martinezは、先週、こんな疑問をツイートしている。

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ほとんどの本は、30ページの超長い雑誌記事に縮めることができる(ポッドキャストの音声版なら1時間だ)。しかし、そうした形式のためのチャンネルがない。どうしてだ? 昔からの伝統とか?

答えは明白だ。ハーバード・ビジネススクールのケーススタディー以外には、30ページの内容に10ドルから20ドルを支払う人たちの市場が存在していないということだ。私がこの問題について、作家や出版社の重役たちと話してみたところ、ふたつの結論が得られた。ひとつは、消費者は薄い本を買うよりも分厚い本に金を使う方が得だと思っていること。もうひとつは、本には膨大な固定費がかかっていて、その消費者市場を考えると、作品を縮めるのは現実的ではないということだ(たとえば、表紙デザインのための費用は、本のページ数とは関係なくかかる)。

そのため、出版社は実際の内容よりも分厚く見せるために、ゴテゴテと飾り立てるのだ。

今朝、私が読み終えたRichard Rothstein著の『The Color of Law』という本がある(とてもいい本だ)。アマゾンでは、ペーパーバック版で「368ページ」と書かれている。かなりのボリュームだが、実際にはそんなに長くない。エピローグも含めた正味は217ページで、26点の写真が散りばめられ、章ごとの空白もかなりたっぷり取ってある。したがって、実質的な内容は190ページほどだろう。さらに、よくある質問コーナー(22ページ)、謝辞コーナー(12ページ!)、注釈(40ページ)、参考文献目録(28ページ)、索引(18ページ)、それに読書会のためのガイド(3ページ)が追加されている。368ページの中の190ページは、たったの51.6パーセントだ。

このような政治的な論議を引き起こす本の場合、注釈や参考文献の情報まで削れとは言わない。しかしこれは、ペーパーバックに17.95ドルという値をつけた出版社が単に、写真やよくある質問を追加しなければ消費者はその価格に満足してくれないという危機感を抱いていた結果だ。

私は、『Brainjunk and the killing of the internet mind』(麻薬的なゴミコンテンツとインターネット的思考の停止)という記事で、メディア購読ではより少ない内容に多くの金を払うべきだと主張した。

とても皮肉なことだ。今の時代の読者は、大抵が高い教育を受けているが、ニューヨークやサンフランシスコでは食事に30ドルという大金を使い、家賃には何千ドルも払っているため、本に割ける数ドルがない。10ドルなんて論外だ。ニューヨークタイムズの月間購読料は、今ではマンハッタンで飲むカクテル1杯分程度に過ぎない。

私の友人の中に、購読料を払っている人はほとんどいない。インターネット利用者も、大部分が購読料を払わない。人々は、1日のうちの何時間も費やして、愚にもつかないものを読んで喜んでいるため、読み物の質を高めるための最小限の出資さえ拒んでいるのだ。だから、名高い書籍も道端に投げ捨てられ、『メディアを使いこなすための7つのコツ』なんかがもてはやされる。

私たちが購入するすべてのコンテンツの形式にそうした考え方を広げようするのは、もう遅すぎる。

そこで私は、質を調整し、そこに割いてもよい自分の時間を知るために、持っている本のページあたりの価格を計算してみることにした。目の前の机の上には、以下の3冊の薄い本がある。

1.Networks of New York Ingrid Burrington著(112ページ、15.96ドル)
2.The Lessons of History Will & Ariel Durant著(128ページ、15.00ドル)
3.The Emissary Yoko Tawada著(128ページ、14.95ドル)

160ページの本に18ドル支払うのは、悪いことではない。ファーストフードが、安いけれど食べた気になれないのと同じだ。価格の安い本でも、それなりに私たちの脳に栄養を与えてくれる。

スタートアップ弁護士に関する意見の募集

私は、同僚のEric Eldonとスタートアップの創設者や役員に会って、弁護士に関する経験談を聞いている。私たちの目標は、この業界の指導者を見つけ出すことであり、何がいちばんかを考える議論を焚きつけることだ。スタートアップの創設者で、弁護士がいい仕事をしてくれたという経験のある方は、Google Formでのアンケートに協力願いたい。そして、この調査のことを他の人たちにも知らせて欲しい。数週間後に結果をお知らせする予定だ。

迷える思考(今何を読んでいるか)

重要なニュースの要約と簡単な分析だ。

メディアの投資は今でも難しい

Nieman Labは、メディアに投資する数少ないベンチャー投資会社のひとつMatter.vcの創設者Corey Fordをインタビューした。Fordは、数年間その会社を舵取りしてきたが、次のステップのために仕事を離れている。Fordは投資の機会についてこう話している。「ベンチャー投資の旅を続ける企業の組み合わせからひとつのモデルを考え出せればよかったと思うが、非営利とベンチャーキャピタルとの中間に機会あると私は感じている。私はそうした場所に向かうだろう。野球に例えれば、グランドスラムを目指すのではなく、二塁打で十分だということだ」

アメリカと中国は合意に向かっているようだ

貿易上の喧嘩を収めようとするプレシャーは、アメリカと中国の双方アメリカと中国の双方で高まっている。その間、ヨーロッパでは、貿易担当大臣や競争政策の責任者たちは、戦略的産業の市場を飲み込もうとしている中国の国営複合企業との競争を有利に進めるための、オープンな話し合いを進めている。そして、ファーウェイのニュースでは、オックスフォード大学が渦中のファーウェイとの協力関係を一時中断した。ドイツでは全面的に禁止することを考えている(2カ月前にベルリンを訪れたときはファーウェイの広告にあふれていたので、信じがたいが)。

次は何か、そして気になること

  • 読みたい薄い本が机の上にたくさん置かれている。
  • ArmanはBilly Kilday著の『Never Lost Away』を読んでいる。Googleのマップ作りと、その先の話だ。
  • Armanと私は社会を復活させるスタートアップに興味を持っている。飲料水の確保、住宅、インフラ、気候変動、災害対策などの分野に焦点を当てた企業だ。よいアイデアや企業をご存知の方は、私に教えていただきたい。<danny@techcrunch.com>

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(翻訳:金井哲夫)

投稿者:

TechCrunch Japan

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