あるスタートアップが、QRコードで米国版「マネーの虎」を「ハック」した方法

「Shark Tank」をご存じない方のために書いておくと、これはABCのテレビ番組で、1組の起業家が自分の会社や製品について、投資家たちの前でプレゼンを行う。目的は、ビリオネアのMark Cubanやファッション界の巨人Daymond Jon、インターネットの大御所、Robert Herjavecを始めとする数々の出演者から、事業拡大なり何なりのための資金を引き出すことだ。

番組は、日本の番組「マネーの虎」のアメリカ版で、フォーマットはかなり似かよっている。希望に満ちた起業家が登場し、シャークたちを相手に自社の製品やサービスを売り込み議論をする。シャーク一人一人がそれぞれ投資するか否かを決める。

数ヵ月前、Scanのファウンダー、Garrett Geeは、Shark Tankへの出演依頼を受け、彼のスタートアップを投資家らに売り込んだ。Geeは自社株5%と引き換えに100万ドルの調達を見込んでいた ― 結論から言えば ― シャークたちがこの会社の将来を見つけることはなかった。結果的にはOKで、ScanはEntreeをはじめとする既存投資家による700万ドルの調達ラウンドを完了したことを、番組放映の前日に発表した。

しかし、私がGeeから彼のShark Tankでの体験を聞いたところ、それは実に興味深いものだった。

出演にあたっての規則の1つに、収録中URLを見せてはいけないというものがある。Geeと彼のチームは、Scan.me から “.me” の部分を消したスペシャル版ロゴマークをデザインしなけれはならなかった。そして彼はプレゼン(下のビデオで見られる)の中で、同社サービスのデモに必要な大きなQRコードが書かれたパネルを使った。

TechCrunchの読者であれば、URLは禁止だが、設定可能なQRコードなら許されることの意味がおわかりだろう。

「あらゆる資料からウェブアドレスを削除させられましたが、私がQRコードを持つことは全面的に容認されていました。永久に変更可能なURLを」

Scanが番組用にQRコードを作った時、当初はどこへも飛ばないダミーURLを使い、デモがうまくいくかどうかを試した。実際Geeの端末は収録中「機内モード」になっていたので、そもそもどこへも行くはずがなかった。

しかし、数ヵ月後の放映直前になって、Geeは突如ひらめいた。Scanはつい最近、企業が簡単に購読受付できるために、自社のInstagramアカウントに転送する機能を追加したところだった。そこで、彼はQRコードの飛び先を自分のInstagramフィードへ向け、更新ボタンを押した。そして、すぐにそのことを忘れた。

「私の目的は、番組のシステムを〈ハック〉することでも、規則を破ることでもありませんでした」とGeeは言う。「でも、私がそして誰もが驚いたことに、人々は実際にスキャンしたのです」。

翌朝、Geeはダッシュボードで3100件のスキャンが彼を待っていることと、大量のInstagramフォロワーが増えていることに気付いた。ユーザーは彼の写真にコメントを付け始め、番組の最中にコードをスキャンしてアプリをダウンロードし(リンクは表示されていなかったが)、彼のInstagramにジャンプしたことを書いた。

その後数日間、Geeは大量の人々がビデオやストリーミングやABC.comで番組を見たことを知った。

「当社の最新機能を、誤って非常にうまく使ってしまいました」とGeeは言う。

番組の効用は他にもあった。Scanのアプリはカテゴリー内の有料アプリ第1位に返り咲いた。再放送の後にさえダウンロードやレビューの嵐が起きた。そして、Geeによると、すべてが素晴しい体験だった ― 資金調達とは全く異なるものではあったが。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook


投稿者:

TechCrunch Japan

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