カリフォルニア大学アーバイン校(UCI)の研究グループが、画像診断等に有用な強力かつ極小のチップを開発した。この超小型ミリ波発放射機は、組織や臓器の撮影能力を改善するだけでなく、われわれが日常使用するワイヤレスデータ通信にも役立つ可能性を秘めている。
「この発信装置の設計に成功したことは大きなブレークスルーであり非常に喜んでいる」と同大学のプロジェクト責任者、Payam Heydariが大学のニュースリリースで言った。「これは全く新しい物理学を応用した真に新しい装置だ。出力と効率は他よりも1桁大きい」
ミリ波放射という言葉に聞き覚えがあるとすれば、それは不名誉な歴史のためだろう。おそらく最も悪名高い応用は、10年ほど前に提唱された“pain rays”[苦痛光線]だ。この波長の高エネルギー放射を当てられた皮膚は高熱になり、熱い電球に触れた時のような感覚を生み出す。結局はガチョウに放射された。
その後間もなく ― そして今でも ― ミリ波はボディースキャナー装置利用されており、多くの人々が空港で両手を上げて立たされている。
そういうわけでこのテクノロジーの称賛されるべき応用を見られることは実に喜ばしい。ミリ波放射の特長は、エネルギーと波長を変えることで体内に侵入する量を変えられることだ。反射を注意深く観測することによって、皮膚の下に潜んでいるものを鮮明に見ることができる。
同大学によると、この極めて小さなチップには最大のパワーと効率があり、かつ雑音レベルはこの種のデバイスで最低だという。信号を任意の周波数に変調したり、放射の偏光等、従来他のチップやデバイスに任せていた様々な機能も持っている。
サイズとパワーの改善によって、要求された深さまで自動的にミリ波が侵入するハンドヘルドスキャナーを作り、潰瘍を監視したり疑わしい部分を探すことも可能になる。
それだけではなく、近々普及するであろうモノのインターネット(自動運転車を含む)にも利用できるかもしれない。小型低電力で出力範囲の限定された高データスループットチップの需要は高く、ミリ波(ギガヘルツ帯を利用)は期待に答える可能性を持っている。
この研究は、Samsung Advanced Institute of Technology[サムスン総合技術院]が後援している。Heydariらは研究成果を今週のIEEEカンファレンスで発表する予定。
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(翻訳:Nob Takahashi / facebook)