映像解析システムの開発プラットフォーム「SCORER」などを提供するフューチャースタンダードは7月4日、スパイラルベンチャーズとテックアクセルベンチャーズ、および既存投資家を引受先とした第三者割当増資を実施し、総額2.1億円を調達したと発表した。
フューチャースタンダードが手がけるSCORERは、映像解析技術を使ったプロダクト/サービスの開発を簡易化する開発プラットフォーム。SCORERの特徴は、映像データの生成、クラウド上での映像データの保存、映像解析技術の利用、解析データの分析・保存などの機能群を一元的に管理できる点だ。
「すでにある機能を仕入れて、使い易くする」
実装済みの機能の例として、オムロンの年齢推定、NECの表情認識、SENSETIMEの人流解析などがある。SOCRERではこれらの機能がモジュールとして用意されていて、ユーザーはそれらの映像解析技術を利用したサービスをスピーディーに構築することができる。また、同社が提供しているRaspberry Pi 3用の「SCORER SDK」を利用すれば、ブラウザで完結する開発環境を整えることが可能だ。
SCORERで提供される基本機能は無料で利用できる。同社は今後、一部のオプション解析や一定期間以上のデータの保存に課金することでマネタイズしていく。
フューチャースタンダード代表の鳥海哲史氏は、「カメラで顔を検知するとLINEで通知するというようなアプリであれば、15分程度の時間で作ることができる」と話す。
「私たちがやらないことは、解析アルゴリズムを自分たちでつくること。人の検知などのアルゴリズムは世の中にたくさん存在していて、ある意味ではコモディティ化している。そのため、私たちが提供する価値は、すでに存在するものを仕入れて、それを使い易くするということだと思っている」(鳥海氏)
映像解析技術を自製せず、他社がすでにつくりあげたものを使う。だからこそ、ある技術が陳腐化したとしても、SCORERは新しく生まれた技術を”仕入れる”だけでいい。
しかし一方で、そのようなビジネスモデルの参入障壁は低くなってしまうことも事実だろう。それについて鳥海氏は、「私たちは2年かけて映像解析アルゴリズムを集めてきた。他社が同じことをやろうとしても、同程度の時間がかかるだろう」と語る。「どれだけ早くエコシステムを構築するかが鍵となるでしょう」(鳥海氏)
他社との共同開発
もう1つのマネタイズ手段、およびプラットフォームの認知度向上の手段として、フューチャースタンダードは他社と共同のプロダクト/サービス開発も行っている。
その例が、カメラ映像を利用した屋外広告の効果測定だ。表示回数やクリック回数で簡単に効果測定できるWeb広告とは違い、これまでの屋外広告の効果測定では、最寄り駅の乗降人数、広告を視認できる高速道路の流入量、広告周辺の交通量調査などのアナログなデータを利用するしかなかった。
そこで、フューチャースタンダードは看板・ディスプレイ施工大手のクレストと手を組み、カメラ映像を解析してデジタルサイネージや屋外広告の効果測定を行う「Esasy(エサシー)」を2016年2月に発表した。
たとえば、屋外広告の効果測定を行う場合、屋上に設置したカメラの映像を解析し、横断歩道で待っている人数、彼らの顔の向きなどを解析する。これにより、従来の方法よりも精度の高い効果測定を行うことが可能だという。
この他にも、フューチャースタンダードは以下のような共同プロダクト/サービス開発を行っている:
- TISとの協業で、工場向け導線解析ツールの開発・導入支援を実施
- スパリゾートハワイヤンズにおける、プール内安全確認映像解析システムの開発
- 東京大学との共同研究として、空家物件の各種情報(騒音レベルや日当たりなど)を可視化するデバイスを提供
フューチャースタンダードはこのような共同プロジェクトを通してSCORERの利便性や開発スピードの速さをアピールすることで、プラットフォームの認知度の向上を図るという。
2014年創業のフューチャースタンダードは、これまでにインキュベイトファンドなどから1.3億円を調達している。