たとえ倒産してもTeslaは偉大な会社だ

Teslaは会社としては皆に愛されている。しかしビジネスとしては? 数多くのトップクラスの投資家がTeslaの事業について不満を口にしている。たとえば「投資に対する利益という観点からはTeslaは破滅的だ」という主張がある。また「Teslaは毎分8000ドルの金を燃やしている(毎時48万ドル)」、あるいは 「Teslaはライバルがいないのに巨額の金を失いつつある―しかも近く巨大なライバルが登場する」などだ。

空売りで名高い投資家のJim Chanosはこうした問題をシビアにまとめて、「時価総額数百億ドルの上場企業が巨額の損失を出している。このビジネスは循環的だ。貸借対照表には目一杯レバレッジがかかっている。会計処理には疑問が多い。多くの幹部が会社を去っている。運営するCEOは事実に向き合いたがらない。これだけ悪材料が揃っていれば十分だ。ダニが詰まった箱のようなものだ」と述べている大勢の人間がTeslaには倒産が迫っていると考えている。もちろんこれは今に始まったことではなく、何年も前からTeslaの財務を疑問視する声は出ていた。しかしこれまでのところそうした意見はすべて間違いだった。しかし今後はどうだろうか?

今のところはっきりしたことは誰にも言えない。しかし(たとえば私のように)Teslaに何の財政的利害もない人間はTeslaが倒産しても困りはしない。

いや、冗談を言っているのではない。金がすべての成功の尺度である資本主義における企業の目的は投資家に利益をもたらすことにある―少なくとも倒産しないことにある、とわれわれは考えがちだ。もちろんほとんどの会社についてこれは正しい。しかしTeslaは別だと思う。経済学者のチャールズ・グッドハートは、ある指標が経済運営の目標になると、その指標は間もなく指標としての用をなさなくなると述べた。 これはまさしく金というもの性質を言い当てている。 Teslaという会社の目的は金を儲けることではない。電気自動車をマス市場に普及させ、そのインフラを形成するためのパイオニアだ。Teslaが先陣を切ったバッテリーのテクノロジーは自動車以外にもあらゆる場所に用いることができる。利潤を上げることは付随的な目的に過ぎない。

つまり、企業として儲けていようといまいと、Teslaは目的を達成することに成功している。Teslaは世界最大級の工場を作った。現に世界でもっとも大きい工場を建設中だ。まだ完成していないが、一部はすでに稼働を始めている。高級電気自動車市場を支配しているだけでなく、あらゆる電気自動車市場において大きな存在となりつつあり、バッテリー・パック市場でも重要な役割を果たしている。

イーロン・マスクはこうした事業から利益を上げることができればもちろん嬉しいだろう。細かいことを言えば、それが経営者としての信任義務だ。しかし利益を上げることに失敗したら失敗ではない。もちろこれは株主、投資家以外の話だが(またTeslaがどうなろうとイーロン・マスクが貧乏になる心配はない)。

儲けを出すことが不可能な事業であってとしても、マスクは要するに市場でだぶついていた資金をTeslaという優れた目的のために使ったというに過ぎない(興味深いのは、そこで得た技術的成果をオープンソースの特許としたことだ)。マスクは、会社としては膨大な損失を出しながら単に自動車だけでなく、われわれの明日の生活を一変させるようなテクノロジーを開発し広く社会に貢献したことになる。

Teslaの株式の価値がゼロになり、会社がデフォールトに陥って投資家は1ドルについて数セントの残余財産しか得られないことになっても、Teslaという資産、つまり工場、ソフトウェア、人材はそのまま残る。どんな破産裁判所であれ、Teslaは部分をバラ売りするより全体のほうがはるかに価値が高いことを認識するだろう。Teslaはドーバー海峡トンネルのような存在ではないだろうか。ドーバー海峡トンネルは民間資本で建設されたものの、投資家にとっては完全な失敗だった。「トンネルはわれわれ全員が恩恵を被るすばらしい施設となった。ただしその建設に資金を出した人々にとってはそうではなかった」と評される。

これはもしかするとTeslaにも当てはまるかもしれない。投資家、株主に対して不公平な意見だろうか? そうではない。これは資本主義の見本だ。誰も投資を強制されたわけではない。儲けが出ると期待して金を出したのだ。そこには当然リスクがある。しかし財政的利害関係者でないなら、Teslaのビジネスについて暗い予言を叫びたてるマスコミの意見は無視してもいいだろう。Teslaの財政がどうなろうと、われわれ一般人はすべて勝者なのだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

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TechCrunch Japan

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