今日の企業は、柔軟性のあるeコマース戦略を確立し、潜在顧客との接続性を確保することがこれまで以上に求められている。このような市場の推進力により、大企業を始めB2B市場をターゲットにする企業を支援し、より機敏で即応性のあるeコマースソリューションでデジタルセールスオペレーションを展開するスタートアップが大きな成長ラウンドを実現させた。
企業向けのeコマースツールのフルスイートを提供するSprykerが1億3000万ドル(約135億円)の資金調達ラウンドを完了した。同社は、企業の在庫をオンライン化するプラットフォームとその販売状況や場所を分析・測定するツールに至るアプローチで事業を開始し、ボイスコマース、サブスクリプション、クリック&コレクト、IoTコマースのような新たな機能やその構成を整備するチャネルなどでビジネスの幅を広げている。
調達した資金は、同社独自のテクノロジーツールの拡大とグローバル展開のために活用される予定だ。同社の収益は年間約5000万ドル(約52億円)で、現在の収益の約10%は米国から来ている。今後の計画としては、年間約70億ドル(約7200億円)の価値があると推定されるeコマースソフトウェア市場に挑み、より広範な拡大の一環として事業を成長させていくという。
シリーズCを主導したのはTCVだ。この著名な投資家はこれまでにFacebook、Airbnb、Netflix、Spotify、Splunkなどの大手に投資してきているが、SprykerやRelexのような新進気鋭のeコマース「配管系」スタートアップも支援していることは興味深い。以前の支援者であるOne PeakとProject A Venturesも参加した。
ベルリンを拠点とするSprykerは、今回の資金調達により5億ドル(約517億円)以上の評価額となったと言われている。
現在Sprykerは約150の顧客を有し、有名ファッションブランドを始めとする数々のグローバル企業を支えている。Alexander Graf(アレキサンダー・グラフ)氏と共に同社を立ち上げ、同氏と共同CEOの役割を共有するBoris Lokschin(ボリス・ロクシン)氏は自身の顧客層について「窓用のシリコンアイソレーションを販売しているようなあまり聞いたことのない影のチャンピオン、リーダー、ブランド」まで多岐にわたると表現している。Metro、Aldi Süd、Toyotaのほか多くの企業が同社の顧客リストに名を連ねている。
同社の主要な展望は、あらゆる種類の大企業に向けたeコマースツールを構築してその広範なビジネスの発展と成長を推進することにあるが、特にB2B領域の事業機会を強化し、よりアジャイルなeコマースストアフロントの実現やその周囲のマーケットプレイスの展開にこの資金の一部を活用する計画である。
eコマースの世界では、消費者向けの企業が最もダイナミックで即応性の高いものであるべきだという考えが一般的だろう。それは、巨大なマーケットに対峙し、消費者がショッピングカートを途中で放棄したり、他でより良い商品を探したり、TikTokの動画やダイレクトメッセージの最新通知に気を取られたりするようなあらゆる浮動性や競争力に直面しているからだ。
消費者向け企業にとって、ディスカバリーとコンバージョンを向上させる最新のアドテク、マーケティング技術、ツールを確保することが必須となる。
ところがビジネス向け企業もまた、注意散漫な顧客の流動性や課題に関してさほど無縁ではないということが判明した。とりわけ世界的なパンデミックとその経済的影響に翻弄されている現在の市場においてはなおさらだ。彼らもまた、新しいチャネルや技術を試して顧客を引きつけたり、ディスカバリーを支援することからメリットが得られるのだ。
「B2B企業のオンラインでの成功モデルに必要なことは、独自性でも資金でもないことを私たちは認識しました。ツールが必要なだけなのです」とグラフ氏は説明する。「俊敏に動き、想定事項すべてを試すことがより大きな成功を導くことは、すでに実証されています」 。
Sprykerは大規模な企業を支援する会社としての地位を築いてきた。この視点は小規模な小売業者がShopifyのようなソリューションを採用してきた様態と類似している。
ある意味「Walmart対Amazon」が複数の垂直市場にわたり展開されている様相だ。それがB2Bの分野で繰り広げられているというところだ。
「私たちの最大のDIY顧客[かつては主に商取引のみの得意先を有していたような]の1社は、実店舗の品揃えとアクセス方法に制限があったため、マーケットプレイスを構築する必要がありました」とロクシン氏は語る。「これ以上の品揃えが本当に必要なのか、と思うかもしれません。しかし、何百万もの製品を提供するMano ManoやAmazonのような新しいプロバイダーが存在します。古い企業は競争力を維持するために自らマーケットプレイスになる必要があるのです」。
Spryker自身でさえも、そうしたマーケットプレイスのトレンドと無縁ではないようだ。資金調達の一部はAppStoreに関する技術の開発に投じられる。そこではeコマースツールに関して同社が提供するものを補完するサードパーティツールを企業に提供することができる。
「私たちは30~40の支払いプロバイダーを含む何百ものテックプロバイダーと統合しています」とロクシン氏は続ける。
Sprykerは「ヘッドレスプロバイダー」として知られるeコマース企業のカテゴリーに属している。つまり、「PaaS」(サービスとしてのクラウドベースプラットフォーム)モデルによる、APIベースのアーキテクチャなど統合しやすいモジュールを利用したeコマースツールプロバイダーだ。
このカテゴリーでは同社以外にも、イタリアのCommerce Layer、ドイツの別のスタートアップCommercetools、米国のShogunなど、同様のコンセプトを掲げる多くの企業が欧州と米国の両方で事業を展開している。
Sprykerの主張は、新しい会社である(2018年に創設)ことでより最新のスタックを有しており、彼らより前に現れたスタートアップや、SAPやOracleのような既存プレイヤーよりも優位に立つというものだ。
これはTCVや他の企業を惹きつけた要因の一つであり、Sprykerは計画していた時期(来年の第2四半期を目指していた)よりも早くラウンドをクローズしたが、良い条件で完了した。
「商業インフラ市場は、長年にわたりTCVにとって最優先事項でした。eコマースの発展を背景に急成長している大きな市場です」とTCVで社長を務めるMuz Ashraf(マズ・アシュラフ)氏はTechCrunchに語った。「支払い(Mollie、Klarna)、基盤インフラ(Redis Labs)、エンゲージメントシステム(ExactTarget、Sitecore)など、コマーススタックの他の分野にも私たちは投資してきました。伝統的なオフラインベンダーはデジタルコマース戦略の見直しを進めており、その軌跡を踏まえると、eコマースはさらに市場を加速するでしょう」。
「Sprykerの動向を追跡してきた私たちは、彼らのソリューションが、最大の価値を生み出す環境を構築する最新ソリューションを求める企業のニーズを満たすと考えています。将来を見据えたコマースサービスを提供し、消費者に革新的な体験をもたらしてくれることでしょう」。
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カテゴリー:ネットサービス
タグ:eコマース 資金調達
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(翻訳:Dragonfly)