アップルがインドのiPhone工場での暴動を受けサプライヤーWistronへの発注を一時停止

Apple(アップル)は、外注製造パートナーWistron(ウィストロン)のインド南部工場で12月初めには発生した暴動を受け、Wistronが「完全な是正措置」を取るまで同社を保護観察下に置き、新規事業は発注しないことを決定した。

Appleは12月19日、同社社員と同社が雇った独立監査人がナラサプルにあるWistronの工場で起きた問題を調査すると述べた。同工場では、Appleの「サプライヤー行動規範」が守られておらず、Wistronは適切な労働時間管理の手順を実行していなかったことが明らかになった。これが「10月と11月の給与支払い遅れ」につながったとAppleは予備調査結果をもとに述べた。

「常に我々のフォーカスは当社のサプライチェーンが保護され、尊厳と尊敬を持って扱われることに注がれています。当社は大変失望しており、この問題を解決すべく迅速に措置を講じます。Wistronは懲戒処分を取り、ナラサプルの採用と給与計算のチームを再編しています」とAppleは声明文で述べた。「独立監査人とともにApple従業員は対応を監視します」。

月約200ドル(約2万円)という給与の不払いをめぐって何千人もの労働者が12月12日にWistronのナラサプル工場で暴動を起こした。ナラサプル工場はテックハブであるバンガロールから40マイル(約64km)離れたところに位置する。労働者らは窓ガラスや他の設備、iPhone、工場の備品などを破壊した。インドにおけるAppleの主要製造パートナーであるWistronは今年、労働者を4倍以上に増やし、生産能力を拡大してきた。

カルナータカ州政府はレポートをまとめ、賃金不払い、不規則な労働時間、劣悪な労働条件など著しい労働法違反がWistronの工場で確認された、と結論づけた。レポートでは、700万ドル(約7億円)相当の資産が暴動で損壊され、Wistronは最近拡大していた労働力の管理に対処できていなかったと指摘した。

Wistronは12月19日の声明文で、同工場の一部の労働者が適切な給与を支払われていなかったことを認めた。同社はまた、インド事業を監督していた最高責任者を解雇することも発表した。「人材や支払いを管理するために取ってきたプロセスの一部は強化そしてアップグレードされる必要があります。当社はまた、こうしたも問題が二度と起こらないようにするために手順を改め、チームを再編しています。ナラサプル工場労働者のための従業員アシスタンスプログラムも確立しました。また、全労働者が懸念事項について匿名で声を上げることができるよう、カンナダ語、テルグ語、タミル語、ヒンディー語、英語での24時間苦情対応ホットラインも設けました」と述べた。

Wistronは古いiPhoneモデルをインドの工場で組み立てている。近年、Appleは世界第2位のスマートフォン市場であるインドでのiPhone生産能力を拡充しようと、Foxconn(フォックスコン)を含む他の企業との提携を拡大してきた。インドでのAppleのマーケットシェアは1%だ。今年初め、FoxconnはiPhone 11モデルの組み立てをインドの工場で開始した。インドでスマホを組み立てることで、スマホメーカーはインド政府が輸入電子製品に課している約20%の輸入税を回避できる。

「インドは民主主義国家です。労働組合は声を上げることができます。そして地域の政治家はすぐ対応できなければなりません。外国企業は巨大なインドマーケットにアクセスすることを熱望していて、巨大な労働力を使う企業は労働者が自分の利益のためにこれまでより迅速に立ち上がるかもしれないという現実に対応する必要があります。クック氏はAppleという社名が暴動や反乱といった言葉と並ぶことに慣れる必要があるでしょう。多くの点で、Wistronに対する不満などでAppleをいじめるのは公平ではありません。しかしAppleはWistronのクライアントであり、過去に中国で行ったように変革を起こすパワーを行使しています」とBloomberg(ブルームバーグ)のコラムニストTim Culpan(ティム・カルパン)氏は書いている。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:Apple、Wistron、インド

画像クレジット: Manjunath Kiran / AFP / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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