Apple(アップル)は5月28日に新しいポッドキャストのシリーズ「The Zane Lowe Interview Series」をリリースして、オリジナルポッドキャストへの取り組みをひっそりと拡大した。このシリーズはApple MusicとApple Podcast、RSS経由で聞くことができる。
厳密にはアップルが初めてリリースするポッドキャストではないが、エンターテインメント系のコンテンツに限定したアップル初のコンシューマー向けシリーズだ。このシリーズでは、アップルのグローバルクリエイティブディレクターのZane Lowe(ゼイン・ロウ)氏がトップアーティストに話を聞いている。これまでにBillie Eilish(ビリー・アイリッシュ)、Justin Bieber(ジャスティン・ビーバー)、Kanye West(カニエ・ウェスト)、Hayley Williams(ヘイリー・ウィリアムス)などが登場し、最新のエピソードはLady Gaga(レディー・ガガ)だ。
Apple Musicは以前にポッドキャストを公開していたが、このようなタイプのものではなかった。
現在、アップルはポッドキャストのプラットフォームを使って「Apple Keynotes」、「Apple Quarterly Earnings Call」(四半期ごとの収支報告)、「Events at the Apple Store」と自社のニュースを配信している。「Events at the Apple Store」はコンシューマー向けだが、今回リリースされたものとはジャンルがまったく異なる。これは時として有名セレブが登場するなどApple Storeのイベントに関するポッドキャストだが、大きな目的は顧客をApple Storeに呼び込むことと、アップルのデバイスとソフトウェアがアート、音楽、写真、映画の創作に使われていると示すことだ。
2019年2月にはApple Musicチームがポッドキャストで「GRAMMYs Celebration on Beats 1」として初のライブストリーミングを試みた。
これに対し、The Zane Lowe Interview Seriesは1回限りのものではない。
アップルによれば、Apple Musicにこのシリーズの新しいエピソードが定期的に公開されるという。ただし多くのポッドキャストがそうであるように、新しいエピソードの公開スケジュールは決まっていない。ロウ氏が4組のアーティストにインタビューをする週もあれば、翌週にはまったくしないかもしれない。インタビューが必ずしもニューアルバムのリリースと関連するわけではないが、大きな効果はある。
このシリーズが5月28日にリリースされた後、NewYork Timesにはロウ氏が詳しく取り上げられた(NewYork Times記事)。
シリーズのリリース時には7本のエピソードが公開された。アルバム「Chromatica」のリリースに先立って録音されたレディー・ガガの新しいインタビュー、ロックバンド「Paramore」のヘイリー・ウィリアムスが初のソロアルバムリリースにあたって受けたインタビュー、アルバム「Changes」のリリースに関するジャスティン・ビーバーのインタビュー、カニエ・ウェストの9枚目のソロプロジェクト「Jesus is King」のリリース直前に録音されたインタビューの前編と後編、Selena Gomez(セレーナ・ゴメス)の3枚目のアルバム「Rare」についてのインタビュー、そしてビリー・アイリッシュがデビューアルバム「When We All Fall Asleep, Where Do We Go?」を詳しく語るインタビューだ。
アップルがオリジナルのポッドキャストシリーズを立ち上げるのは、ここ数年、ライバルのSpotifyがポッドキャストにかなりの投資をしているのに続く動きだ。Spotifyは、ポッドキャストのツールを開発していたAnchorなどのスタートアップや、GimletやThe Ringerなどポッドキャストネットワークを買収し、2019年の買収金額は4億ドル(約435億6000万円)に達した。その結果、Spotifyは現在、数百ものオリジナル限定ポッドキャストをサブスクリプション利用者に提供している。2020年5月時点で最も人気のあるポッドキャストのひとつは「The Joe Rogan Experience」だ。
一方、アップルの取り組みはこれまでは最小にとどまってきた。2019年のグラミー賞関連コンテンツの実験や自社の情報を発信するいくつかのシリーズ以外には、コンシューマー向けのポッドキャストをリリースしていなかった。ブルームバーグは2020年1月に、アップルはApple TV+の番組を宣伝するためにオリジナルポッドキャストの製作を検討していると報じたが、これに関してはまだ登場していない。
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(翻訳:Kaori Koyama)