アップルの新しいiPad miniはやっぱりminiだった

iPad miniを使うのは非常に楽しい。伝統的なノートパソコン向けの仕事を除けば、サイズ的にベストなタブレットだろう。これはいい。Appleが今回アップデートしてくれたことに感謝したい。

小さなminiでも、Apple Pencilが使えるようになったのは最高だ。メモを書いたり、スケッチしたりする分には、画面の面積が足りないという心配はいらない。プロのアーティストにとっては、より大きなiPadに比べて不利だろうが、持ち運び可能な落書き帳としてなら、iPad ProやAirに比べて、まったくかさばらず、手軽に扱える。

唯一の欠点は?素晴らしい新しいPencilを使った後では、miniで使える古いタイプのPencilは、ツルツルしていて滑りやすい。それに平らな面がないので、シェーディングや曲線のスケッチといった作業の際に、指を置く位置で向きを確認できない。

とはいえ、実際に描いてみれば、その感触は素晴らしく、機敏に動作する。Pencilが利用可能な他のモデルと比べても、応答性は同等で、遅れを感じることもない。

古い方のPencilに対応した訳は、デザインとコストのバランスを考えた結果だろう。平らな面を諦めれば、iPad Proに採用したPencil充電用の磁石アレイを再設計する必要もない。それは、ある意味スマートキーボード用のコネクタと同じように、かなり値が張るものだと考えられる。というわけで、新しいAirにもminiにも、第2世代のPencilは採用されたなかった。

Touch IDは、iPad ProのFace IDと比べると、古臭くてまどろっこしく感じられるかもしれない。ただし、miniの使い方を考えれば、それほど悪くない。なぜならminiは、机の上に置いてキーボードでタイプ入力するのではなく、いつも手に持ったまま、指で触って使うものだからだ。とはいえ、iPadを使い始めるには、ぎこちなく、押し付けがましい余計な操作を強いられるのは確かだ。それによって、Face IDと新しいジェスチャーが、いかになめらかに動作するかということを思い知らされることになる。

筐体ののデザインはほとんど変わっていないので、旧モデル用のケースやキーボードを持っていれば、ある程度の互換性が期待できる。ただし、カメラの位置が変わり、ボタンの位置もわずかながらズレたので、実際に合わせてみると、使えるものと使えないものがあるかもしれない。

新しいminiのパフォーマンスは、間違いなく最高だ。もちろん、iPad Proと比べれば劣るものの、新しいiPad Air(まだテストできるものを入手していないが)とまったく同じだ。少なくとも、表面的な仕様は同じであり、あえてクロックを下げて性能を落としたりはしていないと信じている。それによってminiは、そのサイズにしては非常に強力なタブレットとなっている。同じくらいのサイズの他のタブレットを完全に凌駕する。

画面はなめらかで、発色も素晴らしい。表面から奥に引っ込んだ感じもまったくない。ただ、タップしてスリープ解除することができないのは残念だ。

パフォーマンスは、その比較的高価な399ドル(日本では4万5800円から)という価格に見合ったもの。ベストを求めれば、それなりの金額を払う必要がある。

昨年、私は12.9インチのiPad Proをブラジルへの出張に連れて行った。バックアップや、代役となるマシンなしでだ。その環境でTechCrunchを運営できるか試してみたかったのだ。それには、イベントの計画から論説の執筆、その他いろいろな分野にまたがるプロジェクトも含まれている。それがあまりにもうまくできたので、結局そのままとなり、それ以降、MacBookをまともに開いたことがない。その経験については、いつか記事にするつもりでいる。そこには話しておくべき興味深い事柄が、いろいろと含まれているから。

ここでは、その文脈を含めて考えてみよう。というのも、iPad Proは強力なコンピュータであり、性能も優れているものの、タブレットとして標準的ではない方法で使うのは、正直「楽しく」ない。その点では、これまでもiPad miniは常に輝いていた。その優位はこれからも変わらない。

ゆったりしたジャケットやコートのポケットならすっぽり入る。何しろminiは重くないので、手首をひねって支えても、大きなiPadほど負担にならない。片手で十分扱えるのだ。

このような話を続けてもよいのだが、それは詰まるところ、「小型のiPad」としてのiPad miniが、2012年に登場したときの最初のレビュー以来、ここ何年も嫌になるほど言われ続けてきたことと同じになってしまう。これは本当に、Appleの現在のiPadのラインナップの中で、真っ先に選ぶべきモデルだ。もし安いモデルがいいなら、安いもの(言い方が悪ければ「最も入手しやすいもの」)を選べばいい。小さいものがいいなら、iPad miniを選べばいい。

現行のラインナップの他のiPadは、選ぶのに複雑な条件を比較しなければならない。その点、miniの選択基準は明快だ。

小型のiPadが登場することが明らかになる以前に、私は、当時まだ非常に未熟だった小型タブレットの市場を、Appleならどのように定義するのか、といった記事を書いたことがある。それは確かに定義された。他のどんな小型タブレットも、これまでのところ市場に大きなインパクトを与えることはできていない。もちろん、ブリスターパックで売られているような、やがて希少価値は出るかもしれない、粗悪なAndroidタブレットの類はカウントしない。

以下は、2012年時点の私の見解だ。

はっきり言って、小型タブレットの市場などというものは存在しない。(中略)2年前、私たちはタブレット市場を連続する全体とみなしていた。iPadなんて買う人いるのか、という話もあり、他のメーカーがコンシューマー向けタブレットを作ろうとして失敗した、といったことも語られていた。今やiPadは、他のメーカーやプラットフォームでは真似のできない大成功を収めている。

しかし、タブレット市場は1つの大海ではない。それは、互いにつながってはいるが、いくつもに分かれた水域であり、われわれは、それが形作られるのを、今まさに目にしているのだ。そしてiPad miniは、すでに「小型タブレット」の池の中でうごめいているオタマジャクシと競合するものではない。その支配を拡大していく大きな魚を目指しているのだ。

そう、これはまだ言えているだろう。

1つの大きな違いは、当然ながら今のiPad miniには、それまでにiPad用に開発された膨大な種類のアプリが付いてくるというメリットがあることだ。それらのアプリは、タブレットの中身やサービスに対する、実体のともなった本物のアクセスを可能とする。それは2012年には、まだまったく保証されていなかったことだ。われわれは、あっという間に忘れてしまう。

コンシューマー向けセグメントばかりでなく、iPad miniは産業、商取引、そして医療といった分野の用途でも、高い人気を誇ってる。カルテや患者の病歴からPOS、現場での情報確認まで、miniのサイズは、こうしたプロのユーザーに最適だ。実はそうした用途が、Appleがminiをアップデートすることを決定した大きな要因なのだ。

他のモデルと比較すると、価格的にも初めて登場したときと同じくらい高価に感じられるが、iPad miniは際立ったデバイスであり続けている。小さく、スマートで、今では途方もなく速くなり、ストレージ容量も十分だ。小さいことは、大きなアドバンテージだと私は考える。それにより、miniは、自立した存在たり得る。「ノートパソコンの代わりとしてのiPad」の議論とは無縁だ。これまで以上に多用途で、便利になったと感じられるのは事実だが、それはまったく本質ではない。私はこのminiが、改めて、非常に気に入ってしまった。そしてPencilが使えるようになったことで、魅力はさらに増している。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

投稿者:

TechCrunch Japan

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